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三章

86 今までのおさらい!

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 場所は相変わらず取調室だ。
 さすがに四人となると少し狭い。

「隊長せめて場所を移しませんか?」
「ここのほうがいいわよ、周りに聞かれる事もないし」

 ファーはちらっとフローレンスお嬢様を見ている。
 一般人に聞かせる話なのかを心配してるのだ。

「平気平気、責任はもつから」
「でも、お辞めになったら責任もとりませんよね」
「そうね」

 明るく言うマリエルにファーはため息を付く。
 僕の隣にいるフローレンスお嬢様が、何? 何なの? と僕に聞いているが僕が聞きたい。

「信じる信じない、お好きにどうぞ」
「何がです?」
「ヴェル、黒篭手を机にだして」

 言われるままに机の上へと奥。
 マリエルは黒篭手を大事そうに手に取った。

「繰り返されている時間は違うけど、私もヴェルも未来から、この時に戻ってきた」

 場が静かになる。
 いや、ありえない。
 篭手は僕が持っているし、戻るにしてもなぜこのタイミングで。
 ファーは直ぐにマリエルのおでこに手を当てた。

「熱は無いようですね」
「正直、昨日まではあったわよ。
 まず、ヴェルの疑問に答えようかしら。
 この黒篭手は最初に付けた時に時間軸が固定されるらしいの、私はヴェルから取り調べした時に、最初に黒篭手を付けた」

 あ……、確かに黒篭手をつけてから表情や空気が変わった。
 少年から、ヴェルと呼ばれたのもその時だ。

「だから、この時間、この場所へ戻ってこれた」

 確かに、その理論なら辻褄が会う。
 僕もなぜ洞窟前で記憶が戻ったのか謎に思っていた。

「次にファーへの疑問よね。
 別に無理に信じなくてもいいんだけどお……。
 ちょっと、外いこうか」
「何故です?」

 いいからいいからと、マリエルはファーを外に連れて行った。
 残された僕達は顔を見合わせる。

「ヴェル、本当なの?」
「そうですね、本当です。
 でも信じるんですか?」
「わかんない……、わたしにはその記憶がないから」

 外で、ななんでその事を知っているんですかっ!! と叫び声が聞こえた。
 ファーの声だ。
 話し声が小さくなり、取調室へと戻ってきた。

「たっだいまー」

 ファーの顔は憔悴しきった顔になっている。

「だ、大丈夫ですか?」
「ヴェルさん……ですよね。
 なんとか、信じたくなくても信じないといけないみたいです。
 マリエルは私しか知らない事を知っていました、恥ずかしくて死にたいです……。
 いくら過去の私に信じさせるとはいえ、なぜこの秘密を喋ったのか……、もう一人の私へと問い詰めたい気分です」

 隣にいるマリエルはにやにやしながら椅子へと先に戻った。
 椅子に座ると、ぐったりとしながらも僕へ質問をしてきた。

「所で、そうなるとヴェルさんの事も信じないといけません。
 聖騎士部隊の第三隊長って誰かわかります?」
「え? マキシム……聖騎士第三隊長ですよね」

 あやうく呼び捨てにする所だった。
 僕みたいな一般市民が聖騎士をそれも隊長クラスを許可もないのに呼び捨てにするのはまずいだろう。
 マリエルが僕に突っ込む。

「あんなやつ呼び捨てでいいわよ」
「そうもいかないかと……」

 ファーを見ると、青い顔をしながら頷く。

「現隊長は先日殉職して今はいません」
「え?」

 僕の記憶と違っている。

「ですが、明日付けでマキシムが、第三部隊の隊長として認可されるはずです。
 どうやら嘘は言っていないようですね」

 ファーが僕へと微笑む。
 先ほどまであった妙なピリっとした空気はなくなって来た。
 なるほど、この時はまだちがったのか……。

「はいはいはーい。全部本当として、何がどうなるわけ?
 わたしも関係あるみたいなんですけどー、ヴェルと私はどうなったのよ」

 フローレンスお嬢様が手を上げて周りをみる。

「ヴェルからどうぞ」

 マリエルに先に話せといわれて戸惑うも、僕は仕方が無く喋る。

「村が襲われ、僕以外は死にました。
 その時はこの黒篭手をつけていたので偶然に助かり、第七部隊と一緒に王都へ目指しました。
 でも、途中で第七部隊と別れ王都では、クーデーターというのでしょうか、色々と起こり。
 第七部隊も全滅したと、そこで僕は偶然しった黒篭手の力を使い戻りやり直す事にしたんです」

 こんな話、誰が信じるのだろうか。
 マリエルはウンウンと頷いている。

「じゃ、私の番ね。
 推測も入るからそこは簡便して、ヴェルはここから先どうにかフローレンスちゃんと私達を助けようとした。
 たとえ自分が犯罪者になってもね。
 未来を知っているのはヴェル一人。
 ヴェルは私達に疑われも真実を話さなかった、結果ハグレとして討伐対象になったのよ。
 で……」

 マリエルはそこから、フローレンスお嬢様がさらわれた事を話した。
 僕は帝国でその話を聞き、マリエルは王国内でアルマ村長から娘の捜索を依頼された。
 結果、マリエル、アデーレ、コーネリアが帝国に潜入し様子を見る任務に付いたと話してくれた。
 
 でも、実際はさらわれたのではなくて、帝国がこの村にある箱と箱を開ける女性を手伝って欲しいと頼み込んでいただけだった。
 フローレンスお嬢様も移動式牢へ入れられていたけど優遇待遇で、さらに顔無しという長身の仮面をつけた男に求婚までされていたと。

 マリエル達は僕やフローレンスお嬢様と合流し隣国の王子と知り合いにもなったと。
 そこで行われる交流試合へと参加した僕達は順調に勝ち残っていた居たらしい。
 
「――――……でね、フローレンスちゃんも顔無しの求婚を承諾して。
 私とヴェルもぞっこん愛し合いされラブラブ中で全て丸く収まるはずだったんだけど……フローレンスちゃんは、マキシムに殺されたのよ」
「え?」
「は?」
「はいはい、まだ話は続きますからねー」

 僕とフローレンスお嬢様は驚く声を出す。
 しかし、マリエルの話が本当として、僕とマリエルがラブラブになっているとは考えにくい。
 未来の僕に何かがあったのか、正直マキシム程度にまけるとはおもわないけど……、考えられるとしたら毒の存在だ。

「あら、ヴェルはわかったみたいね。
 聖騎士や能力者を殺す毒ね、多分剣にでも塗られてたんじゃないかな……。
 で、私はヴェルの遺品を受け取ってそれをつけた。
 オオ……じゃないっ、ある人から過去に戻れる事をしって悩んだ末に戻ってきたのよ」

 ある人……、オオヒナの事だろう。
 僕は今まで一度もオオヒナの事は伝えた事がない、無いのに知っているという事は本当の事なのを、より信じないといけない。
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