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二章
51 擬似一家だんらん
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夕暮れになり、僕は母屋と呼ばれる場所で食器を並べていた。
台所では、フランが包丁をリズムカルに動かしている。
「ただいまー」
「ママただいまー」
「おなか減ったー」
玄関から三人の声が重なる。
三人というのは、オーフェン、トモ、ミアだ。
「三人とももうすぐさかえ」
「フラン姐の手料理が食べえるとはっ!」
「よくいうわえ、今までも散々食べたやろ」
僕としては、直ぐに話を聞きたかったけど、ボロボロの小屋で話す事でもないえと、フランが呟く。
壊れた小屋は、オーフェンとトモミア兄妹が直す事になった。
その間に僕らは食事の用意をしていたのだ。
「さて、たべようかえ」
フランは、大きい鉄鍋をテーブルへと置く。
鍋である、乾燥した昆布で出しを取り、肉や野菜を入れたやつである。
いただきますと、四人が言う。
僕だけ言わないのも変なので、一つ遅れてからいただきますを、言う。
「トモ、肉ばかりじゃなくて野菜をたべえ。
ミアは食べれるだけでいいですえ。
オーフェン、あんたは食べたら鍋に具をいれなしい。
ヴェルえ、あんさんははやく食べえし」
「そうだぞ、フランの手料理なんて金を払っても言いぐあいだ」
「そなえ? じゃ、オーフェンだけ金貨三十枚置いていってなえ」
「なっ、高級店の日替わりでさえ金貨二枚……」
「さっきの慰謝料込みやで、イヤなら――」
「わかりました」
別に僕は食べてないわけじゃなく、勢いにまけてる感じである。
「で、ヴェルといったっけ。
知りたいのはいいだけどよ、なんていうか仕事の話で……」
「かまいまへんえ、しゃべりーさえ」
「ふーん……、まぁフラン姐が言うなら。
神具ってわかるか? 村にあったらしくてな。
帝国の上の奴が欲しがっていてなぁ……。
とはいえ、王国だろ? 一応協定もあるしな……村にいったのは強硬派だ」
やはり帝国が発端だったのか……。
でも、なぜ。
いや、わかりきっている、この篭手の力だろう。
「作戦は失敗したんですよね、だって……」
僕が【偶然に】フェイシモ村周辺で怪しい集団を見つけた。
突然に襲われ撃退したものの、村の人間に捕まった。
そして、聖騎士に疑われ討伐されそうになった所、川へと落ちたと、説明した。
力に関しては、数日前から突然目覚めたと言っておいた。
これは王国内でもたまにあるらしいのを聞いた事がある。
僕が祭具をつけているなどは言わない。
「はああああああああ、よく生きていたな。
お前の戦った奴は不動のジンと言って、帝国でもトップクラスだぞ」
「どうも……。
で、過程はどうあれ撤退したはずです」
「いやな、別な命令を受けたらしく箱と箱をあける娘をさらって行った」
「ごめん、もう一度」
「いやだからな……」
箱を開けると娘というとフローレンスお嬢様しかありえない。
たしかに、最初の時も封印をあけるのは血筋の者と知っていた。
「なんだ、知り合いか」
「そうですね……、おそらく家族同様に接してくれた人と思います」
「そうか……、悪かったな変な話を聞かせて。
でもまぁ、王国の事は忘れるんだな。
帝国はいいぞう、そりゃ悪い所もあるが自由がある」
「そのさらわれた少女はどうなるでしょうか」
「どうって……」
「殺されるとかは」
色々知ってはいそうなオーフェンだけど、その眼はフランを見ている。
喋っていいのか判断しているのだろう。
「フラン、教えてくれないかな」
「そうやねえ、殺される事はないんやないえ。
顔無しが褒美で貰うとかとおもうんやけど」
「顔無し……?」
かおなしー、かおなしーと、ミアとトモが口をそろえて言う。
オーフェンが、トモの頭を撫でると教えてくれた。
「顔無しってのは、最近現れた新参者よ。
口元以外をマスクで隠した男だな。
名前は無しで、顔を隠しているから顔無しでも呼べばいいと、言う変な男の事だ。
顔隠しているくせに人気なんだよ」
「直ぐに助けないとっ!」
僕は立ち上がろうとすると、フランに止められた。
「ジンにすらかてへえんのに?」
「うっ……」
「その顔無しは、ジンにすら勝った事あるっていわれてるねえ。
ま、帝都までは安全や、ここにいる誰かと違ってジンは女には興味ないし、部下も徹底してるさかいえ」
「ちょ、フラン姐。
それじゃ俺が安全じゃないみたいな」
「何時だったが、護衛しにいった少女が、もう離れたくありません! ってオーフェンにしがみ付いた事なかったかえ?」
「いや、あれは……あの子が夜寂しいって言うから」
「ほうほう、その前の子は」
「ええっと、夜が怖いって言うから、寂しくないように」
やっぱり最低な男である。
「おい、ヴェルっていったな。
わかるだろ? 震えている子が居たらそっと肩を、後は自然な流れで」
「すみません、わかりません」
「ま、馬鹿はほうっておいてなえ。
万が一助けに行くなら帝都に着く時がええやろうね」
だったら早いほうがいいだろう。
本当は直ぐにでも駆け出したいけど、まだ走る事もままならない。
「さてあらかた食べ終わったし今日はもうお開きにしよかー」
気づくと鍋の中は殆ど空でトモとミアもごちそうさまをしていた。
外は既に暗くなっている。
「ママ、トイレ行ってくる」
「ミアもー」
「はいはい、きーつけてえ。
オーフェン町まで行って、この手紙出してきい。
ついでに手紙受け取ってきいえ」
「ういー。
おいヴェルっ! 直ぐに戻るからフラン姐に手を出すんじゃないぞっ!」
「だしません」
「ウチが出していたらどうするんえ?」
「それはそれで、覗こうかなって、最近ネトラレってのに興味が……。
ちょフラン姐鍋を振りますのは怖い、行って来ますっ!」
母屋には二人きりになった。
フランは後姿だけで食べ終わった食器を手早く片付けていた。
ここ数日疑問に思っていた事を口に出して聞いてみる。
「なぜ僕にこんなに親切なんですか……」
「いやかえ」
「普通は放置しますよね」
「あんさんの意識が戻る前に、何人かの名前を言っていてねえ。
今度は助けるってさかえ。
自分が死にかけてるのに、変った人やえとおもってなあ。
気まぐれさかい」
う、変なのを聞かれたか。
少し恥ずかしい。
台所では、フランが包丁をリズムカルに動かしている。
「ただいまー」
「ママただいまー」
「おなか減ったー」
玄関から三人の声が重なる。
三人というのは、オーフェン、トモ、ミアだ。
「三人とももうすぐさかえ」
「フラン姐の手料理が食べえるとはっ!」
「よくいうわえ、今までも散々食べたやろ」
僕としては、直ぐに話を聞きたかったけど、ボロボロの小屋で話す事でもないえと、フランが呟く。
壊れた小屋は、オーフェンとトモミア兄妹が直す事になった。
その間に僕らは食事の用意をしていたのだ。
「さて、たべようかえ」
フランは、大きい鉄鍋をテーブルへと置く。
鍋である、乾燥した昆布で出しを取り、肉や野菜を入れたやつである。
いただきますと、四人が言う。
僕だけ言わないのも変なので、一つ遅れてからいただきますを、言う。
「トモ、肉ばかりじゃなくて野菜をたべえ。
ミアは食べれるだけでいいですえ。
オーフェン、あんたは食べたら鍋に具をいれなしい。
ヴェルえ、あんさんははやく食べえし」
「そうだぞ、フランの手料理なんて金を払っても言いぐあいだ」
「そなえ? じゃ、オーフェンだけ金貨三十枚置いていってなえ」
「なっ、高級店の日替わりでさえ金貨二枚……」
「さっきの慰謝料込みやで、イヤなら――」
「わかりました」
別に僕は食べてないわけじゃなく、勢いにまけてる感じである。
「で、ヴェルといったっけ。
知りたいのはいいだけどよ、なんていうか仕事の話で……」
「かまいまへんえ、しゃべりーさえ」
「ふーん……、まぁフラン姐が言うなら。
神具ってわかるか? 村にあったらしくてな。
帝国の上の奴が欲しがっていてなぁ……。
とはいえ、王国だろ? 一応協定もあるしな……村にいったのは強硬派だ」
やはり帝国が発端だったのか……。
でも、なぜ。
いや、わかりきっている、この篭手の力だろう。
「作戦は失敗したんですよね、だって……」
僕が【偶然に】フェイシモ村周辺で怪しい集団を見つけた。
突然に襲われ撃退したものの、村の人間に捕まった。
そして、聖騎士に疑われ討伐されそうになった所、川へと落ちたと、説明した。
力に関しては、数日前から突然目覚めたと言っておいた。
これは王国内でもたまにあるらしいのを聞いた事がある。
僕が祭具をつけているなどは言わない。
「はああああああああ、よく生きていたな。
お前の戦った奴は不動のジンと言って、帝国でもトップクラスだぞ」
「どうも……。
で、過程はどうあれ撤退したはずです」
「いやな、別な命令を受けたらしく箱と箱をあける娘をさらって行った」
「ごめん、もう一度」
「いやだからな……」
箱を開けると娘というとフローレンスお嬢様しかありえない。
たしかに、最初の時も封印をあけるのは血筋の者と知っていた。
「なんだ、知り合いか」
「そうですね……、おそらく家族同様に接してくれた人と思います」
「そうか……、悪かったな変な話を聞かせて。
でもまぁ、王国の事は忘れるんだな。
帝国はいいぞう、そりゃ悪い所もあるが自由がある」
「そのさらわれた少女はどうなるでしょうか」
「どうって……」
「殺されるとかは」
色々知ってはいそうなオーフェンだけど、その眼はフランを見ている。
喋っていいのか判断しているのだろう。
「フラン、教えてくれないかな」
「そうやねえ、殺される事はないんやないえ。
顔無しが褒美で貰うとかとおもうんやけど」
「顔無し……?」
かおなしー、かおなしーと、ミアとトモが口をそろえて言う。
オーフェンが、トモの頭を撫でると教えてくれた。
「顔無しってのは、最近現れた新参者よ。
口元以外をマスクで隠した男だな。
名前は無しで、顔を隠しているから顔無しでも呼べばいいと、言う変な男の事だ。
顔隠しているくせに人気なんだよ」
「直ぐに助けないとっ!」
僕は立ち上がろうとすると、フランに止められた。
「ジンにすらかてへえんのに?」
「うっ……」
「その顔無しは、ジンにすら勝った事あるっていわれてるねえ。
ま、帝都までは安全や、ここにいる誰かと違ってジンは女には興味ないし、部下も徹底してるさかいえ」
「ちょ、フラン姐。
それじゃ俺が安全じゃないみたいな」
「何時だったが、護衛しにいった少女が、もう離れたくありません! ってオーフェンにしがみ付いた事なかったかえ?」
「いや、あれは……あの子が夜寂しいって言うから」
「ほうほう、その前の子は」
「ええっと、夜が怖いって言うから、寂しくないように」
やっぱり最低な男である。
「おい、ヴェルっていったな。
わかるだろ? 震えている子が居たらそっと肩を、後は自然な流れで」
「すみません、わかりません」
「ま、馬鹿はほうっておいてなえ。
万が一助けに行くなら帝都に着く時がええやろうね」
だったら早いほうがいいだろう。
本当は直ぐにでも駆け出したいけど、まだ走る事もままならない。
「さてあらかた食べ終わったし今日はもうお開きにしよかー」
気づくと鍋の中は殆ど空でトモとミアもごちそうさまをしていた。
外は既に暗くなっている。
「ママ、トイレ行ってくる」
「ミアもー」
「はいはい、きーつけてえ。
オーフェン町まで行って、この手紙出してきい。
ついでに手紙受け取ってきいえ」
「ういー。
おいヴェルっ! 直ぐに戻るからフラン姐に手を出すんじゃないぞっ!」
「だしません」
「ウチが出していたらどうするんえ?」
「それはそれで、覗こうかなって、最近ネトラレってのに興味が……。
ちょフラン姐鍋を振りますのは怖い、行って来ますっ!」
母屋には二人きりになった。
フランは後姿だけで食べ終わった食器を手早く片付けていた。
ここ数日疑問に思っていた事を口に出して聞いてみる。
「なぜ僕にこんなに親切なんですか……」
「いやかえ」
「普通は放置しますよね」
「あんさんの意識が戻る前に、何人かの名前を言っていてねえ。
今度は助けるってさかえ。
自分が死にかけてるのに、変った人やえとおもってなあ。
気まぐれさかい」
う、変なのを聞かれたか。
少し恥ずかしい。
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