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06 白昼夢再び
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黒と白いや。
巨漢の男とマリエルの戦いを見ているだけの僕。
マリエルが間合いを取る。
「一つ聞いていいかな」
もちろん僕にではなく、大男に話しかけている。
「その力、ハグレと思って構わないかな」
「ほう、その質問に答えると思うか?。
聖騎士よ」
ハグレ……。
二人には通じる言葉であるが、僕にはわからない。
マリエルがちらっと、いまだ逃げていない僕をみる。
「まだ居たのっ!。
ハグレとは聖騎士崩れ、その力を悪用する奴等の呼称」
「聖騎士という名の腐った集団には言われたくないな」
大男が短く言い返す。
マリエルの顔が、巨漢の男の挑発に赤くなった。
先ほど地面に差した剣を引き抜くと構え直し突進する。
巨漢の男はその動きを見切ると、マリエルの腹に重い一撃を食らわした。
くの字になるマリエルの手から剣が落ち、巨漢の男はマリエルの腕を無理やりに持ち上げる。
「さて、捕まえたわけだ」
「女の子に乱暴すると嫌われるわよ」
「そうだったか?」
大男は、マリエルの腹へ二度目の重い一撃を放った。
マリエルの顔が苦痛にゆがむ。
「も、ものは相談なんだけど。
あの少年を見逃してくれないかしら」
マリエルが腕を捕まれたまま、大男へと取引をする。
大男はマリエルと僕、そして僕の手元にある篭手を見て言い放つ。
「この状況でよくもまぁ。
しかし、オレは勇敢な奴は敵味方であろうと好きだ。
聖騎士の首と、魔道具であるらしいそこの篭手、この二つがあれば部隊の全滅ぐらいは釣りが来るだろうしな。
小僧、俺の気が変わらんうちに去れ」
去れ。
どこに去れというのだろう。
住む場所も奪われ、恩を返す人も居ない。
こんな僕に行く場所はあるのだろうか。
タチアナに行く話しだって、フローレンスお嬢様や村長夫妻の事を思っての行動だ。
そもそもこの篭手はなんだ。
それほどまでに、村の、いやフローレンスお嬢様の命より重いものなのだろうか。
マリエルの腕を見る。
銀色で赤い模様が入った篭手だ。
あの男はなんて言った?。
魔道具。
この黒い篭手が魔道具として、嵌めれば強くなるのだろうか……。
「小僧、さっさと篭手を置いて消えろ」
僕がここで逃げても、マリエルという女性は死ぬ。
どうせ拾った命だ。
逃げだ、自分が満足するだけの逃げと知っている。
僕は体を丸めた、隠すようにして腕に篭手を付けた。
声が響く。
いや、部屋が見えた。
両側に本棚などがある部屋だ、椅子に背中を預け、足はテーブルに乗せている女性が見えた。
読んでいた本を閉じると、その内容に感動してるのか深いため息を付く。
その読んでいた本を手に取ろうとするも、手が動かない。
いや、手が無いんだ。
そもそも僕は誰だ……。
「やぁやぁ、ヴェル君。
そんな天井付近にいないで、お茶でも飲むのじゃ」
眼鏡を掛けた女性が一言放つと、僕は上空から床に落とされた。
頭を振りかぶると左右に手が見える。
下を向くと尻餅をついた自分の下半身が見えた。
そう名前を呼ばれると僕がヴェルというのを思い出す。
「こんな時は、珈琲がいいじゃろ」
女性は手をパンと叩くと、湯気が立ち黒い水が入ったカップが二つテーブルに並んでいる。
何も無い所から現れ僕は驚いて声を上げた。
「なっ」
「最初は苦いが、なれると中々美味しいものじゃよ」
鼻に近づけると苦味のあるような匂いを感じられる。
すすめられるままに、一口飲むと口の中に野草を詰め込まれた感じだ。
「ふむ。苦いかの?」
もう一度女性は手を叩く。
持っていたカップの中に白い色が追加されていく。
ミルクだ。
驚いて女性をみると、一人頷いていた。
「ミルクと砂糖と足しておいた、これなら美味しいだろう、さぁ飲むのじゃ」
別に飲まなくても良いのだろうか、僕はそのカップへと口を寄せ一口飲む。
先ほどとは違い珈琲の苦味がミルクで緩和されゆっくりと胃の中へ入っていく。
さっきから疑問に思っていた事を質問する。
「あの――、僕は死んだのでしょうか」
それしか考えられない。
篭手を嵌めた、そこまでは思えている。
なのに、今はこーひーと言うのを飲んでいる説明が付かない。
きょとんとした女性は、小さくクックックと、笑いだす。
「そうか死んだとおもうたのか。
いや、笑ってすまぬ。
ある意味死んだほうが、良かったのかもしれんのう」
急に真面目な顔で僕の顔をみる女性、丸眼鏡の奥にある瞳はキラリとしている。
「安心しろ、ここは記憶の中じゃ」
「記憶ですか、夢とは言え僕の記憶ではこのような飲み物を飲んだ事は無いです」
「記憶と言っても、わがはい、いや想像主のじゃ。
時間は合ってない様な物、お主は死んでも居ないし現実では一秒も立っておらんだろう。
ほれ、お主の腕にはちゃんと篭手を嵌めてある」
先ほどまで何も付いていなかった右腕に黒い篭手が唐突に現れる。
「ほれ認識をする事で篭手が出てきたのじゃ」
「この篭手を嵌めたって事は。
僕は、あの大男と戦えるぐらいの力が出せるんですかっ」
「無理じゃろ」
僕の質問をあっさりと否定する。
じゃぁ意味がないじゃないか……。
「そんな落ち込んだ顔をするな。
機関銃にライフルで抵抗するようなもんだ」
「あの、例えが良くわからないのですが」
「ふむ世界が違ったのじゃ、きにするでない。
一撃ぐらいはいけるだろうに」
何でも良い。
せめて勝てなくてもいいんだ。
「この篭手は――」
なんなんですか? と。聞こうとすると視界が上がっていく。
体が浮いた感じになっている。
「時間が関係ないとはいえ、ここは異界じゃ。
異物であるお主を排除しようと動き始めたんじゃの」
女性との距離が離れていくのに、声がしっかりと聞こえる。
僕は、聞こえないかもしれないが大声で叫ぶ。
「あのっ! あなたはなんなんですかっ!」
既に城全体が見え、僕の目線は雲の中だ。
それでも、女性の声が聞こえた。
「そもそも、わがはいは最高の成功作であり失敗作でもあるのだ。
お主がこの空間に入った事により、魔力の消費が激しい。
暫くは、この世界に来る事はなかろう、決して命を粗末にするではないのじゃぞ」
「粗末にするなってっ!」
これから僕は戦いを……。
うっ。
体が一気に重くなった。
目の前が暗い、顔を上げるとマリエルが苦しそうにしている。
最悪な現実へと戻ってきたのだ。
大男と目線が合う。
「ほう、小僧。
その篭手をつけるか、そしてどうするつもりだ?」
何故か嬉しそうな声で僕を見る。
捕まえていたマリオンを無造作に投げ飛ばす。
「話が本当であれば、その篭手に選ばれた者は……。
ふ、戦えばわかるな、小僧直ぐに死ぬなよ」
「ま、まてっ。や――――」
地面に叩き付けられたマリオンは、数回咳をして僕と大男を見る。
大男へと、僕を逃がす約束だろうと伝えたいのだろう。
咳のせいで声があまり出ないみたいだ。
「オレはぁ、約束をまもったぜ」
確かに、大男は約束を守っている。
でもそれはさっきのだけで、アルマ村長へ約束を破り斬ったのは、この大男だ。
不思議と先ほどまでの震えは止まっている。
「その目、その勇気、益々気に入った。
部下になれ、命令だ」
体がビクっと跳ねた。
こんな男が僕に命令。
答えはもう決まっている。
「断ります」
解かりきっていた答えを聞き、満足そうに頷く大男。
近くの剣を抜き、僕の目の前に投げとばす。
はっきりと解かった。
この大男にとって殺人や任務なと関係ないのだ。
ただ強い奴と戦いたい、それだけなのだと。
だからこそ、簡単に人を殺すし、マリエルや僕の戦いに付き合う。
任務最優先であれば、この篭手を持ってさっさと逃げればいいだろうに。
僕は投げ込まれた剣を、両手で引きずるように構えた。
大男は何時でも来いと、でも言うのか構える気配は無い。
体全体が熱い。巨漢の男が腕を引き腰を引いたのが見えた。右型を振り上げ此方に向かい拳を放つのが予想出来た。
僕は、一気に走る。
巨漢の男とマリエルの戦いを見ているだけの僕。
マリエルが間合いを取る。
「一つ聞いていいかな」
もちろん僕にではなく、大男に話しかけている。
「その力、ハグレと思って構わないかな」
「ほう、その質問に答えると思うか?。
聖騎士よ」
ハグレ……。
二人には通じる言葉であるが、僕にはわからない。
マリエルがちらっと、いまだ逃げていない僕をみる。
「まだ居たのっ!。
ハグレとは聖騎士崩れ、その力を悪用する奴等の呼称」
「聖騎士という名の腐った集団には言われたくないな」
大男が短く言い返す。
マリエルの顔が、巨漢の男の挑発に赤くなった。
先ほど地面に差した剣を引き抜くと構え直し突進する。
巨漢の男はその動きを見切ると、マリエルの腹に重い一撃を食らわした。
くの字になるマリエルの手から剣が落ち、巨漢の男はマリエルの腕を無理やりに持ち上げる。
「さて、捕まえたわけだ」
「女の子に乱暴すると嫌われるわよ」
「そうだったか?」
大男は、マリエルの腹へ二度目の重い一撃を放った。
マリエルの顔が苦痛にゆがむ。
「も、ものは相談なんだけど。
あの少年を見逃してくれないかしら」
マリエルが腕を捕まれたまま、大男へと取引をする。
大男はマリエルと僕、そして僕の手元にある篭手を見て言い放つ。
「この状況でよくもまぁ。
しかし、オレは勇敢な奴は敵味方であろうと好きだ。
聖騎士の首と、魔道具であるらしいそこの篭手、この二つがあれば部隊の全滅ぐらいは釣りが来るだろうしな。
小僧、俺の気が変わらんうちに去れ」
去れ。
どこに去れというのだろう。
住む場所も奪われ、恩を返す人も居ない。
こんな僕に行く場所はあるのだろうか。
タチアナに行く話しだって、フローレンスお嬢様や村長夫妻の事を思っての行動だ。
そもそもこの篭手はなんだ。
それほどまでに、村の、いやフローレンスお嬢様の命より重いものなのだろうか。
マリエルの腕を見る。
銀色で赤い模様が入った篭手だ。
あの男はなんて言った?。
魔道具。
この黒い篭手が魔道具として、嵌めれば強くなるのだろうか……。
「小僧、さっさと篭手を置いて消えろ」
僕がここで逃げても、マリエルという女性は死ぬ。
どうせ拾った命だ。
逃げだ、自分が満足するだけの逃げと知っている。
僕は体を丸めた、隠すようにして腕に篭手を付けた。
声が響く。
いや、部屋が見えた。
両側に本棚などがある部屋だ、椅子に背中を預け、足はテーブルに乗せている女性が見えた。
読んでいた本を閉じると、その内容に感動してるのか深いため息を付く。
その読んでいた本を手に取ろうとするも、手が動かない。
いや、手が無いんだ。
そもそも僕は誰だ……。
「やぁやぁ、ヴェル君。
そんな天井付近にいないで、お茶でも飲むのじゃ」
眼鏡を掛けた女性が一言放つと、僕は上空から床に落とされた。
頭を振りかぶると左右に手が見える。
下を向くと尻餅をついた自分の下半身が見えた。
そう名前を呼ばれると僕がヴェルというのを思い出す。
「こんな時は、珈琲がいいじゃろ」
女性は手をパンと叩くと、湯気が立ち黒い水が入ったカップが二つテーブルに並んでいる。
何も無い所から現れ僕は驚いて声を上げた。
「なっ」
「最初は苦いが、なれると中々美味しいものじゃよ」
鼻に近づけると苦味のあるような匂いを感じられる。
すすめられるままに、一口飲むと口の中に野草を詰め込まれた感じだ。
「ふむ。苦いかの?」
もう一度女性は手を叩く。
持っていたカップの中に白い色が追加されていく。
ミルクだ。
驚いて女性をみると、一人頷いていた。
「ミルクと砂糖と足しておいた、これなら美味しいだろう、さぁ飲むのじゃ」
別に飲まなくても良いのだろうか、僕はそのカップへと口を寄せ一口飲む。
先ほどとは違い珈琲の苦味がミルクで緩和されゆっくりと胃の中へ入っていく。
さっきから疑問に思っていた事を質問する。
「あの――、僕は死んだのでしょうか」
それしか考えられない。
篭手を嵌めた、そこまでは思えている。
なのに、今はこーひーと言うのを飲んでいる説明が付かない。
きょとんとした女性は、小さくクックックと、笑いだす。
「そうか死んだとおもうたのか。
いや、笑ってすまぬ。
ある意味死んだほうが、良かったのかもしれんのう」
急に真面目な顔で僕の顔をみる女性、丸眼鏡の奥にある瞳はキラリとしている。
「安心しろ、ここは記憶の中じゃ」
「記憶ですか、夢とは言え僕の記憶ではこのような飲み物を飲んだ事は無いです」
「記憶と言っても、わがはい、いや想像主のじゃ。
時間は合ってない様な物、お主は死んでも居ないし現実では一秒も立っておらんだろう。
ほれ、お主の腕にはちゃんと篭手を嵌めてある」
先ほどまで何も付いていなかった右腕に黒い篭手が唐突に現れる。
「ほれ認識をする事で篭手が出てきたのじゃ」
「この篭手を嵌めたって事は。
僕は、あの大男と戦えるぐらいの力が出せるんですかっ」
「無理じゃろ」
僕の質問をあっさりと否定する。
じゃぁ意味がないじゃないか……。
「そんな落ち込んだ顔をするな。
機関銃にライフルで抵抗するようなもんだ」
「あの、例えが良くわからないのですが」
「ふむ世界が違ったのじゃ、きにするでない。
一撃ぐらいはいけるだろうに」
何でも良い。
せめて勝てなくてもいいんだ。
「この篭手は――」
なんなんですか? と。聞こうとすると視界が上がっていく。
体が浮いた感じになっている。
「時間が関係ないとはいえ、ここは異界じゃ。
異物であるお主を排除しようと動き始めたんじゃの」
女性との距離が離れていくのに、声がしっかりと聞こえる。
僕は、聞こえないかもしれないが大声で叫ぶ。
「あのっ! あなたはなんなんですかっ!」
既に城全体が見え、僕の目線は雲の中だ。
それでも、女性の声が聞こえた。
「そもそも、わがはいは最高の成功作であり失敗作でもあるのだ。
お主がこの空間に入った事により、魔力の消費が激しい。
暫くは、この世界に来る事はなかろう、決して命を粗末にするではないのじゃぞ」
「粗末にするなってっ!」
これから僕は戦いを……。
うっ。
体が一気に重くなった。
目の前が暗い、顔を上げるとマリエルが苦しそうにしている。
最悪な現実へと戻ってきたのだ。
大男と目線が合う。
「ほう、小僧。
その篭手をつけるか、そしてどうするつもりだ?」
何故か嬉しそうな声で僕を見る。
捕まえていたマリオンを無造作に投げ飛ばす。
「話が本当であれば、その篭手に選ばれた者は……。
ふ、戦えばわかるな、小僧直ぐに死ぬなよ」
「ま、まてっ。や――――」
地面に叩き付けられたマリオンは、数回咳をして僕と大男を見る。
大男へと、僕を逃がす約束だろうと伝えたいのだろう。
咳のせいで声があまり出ないみたいだ。
「オレはぁ、約束をまもったぜ」
確かに、大男は約束を守っている。
でもそれはさっきのだけで、アルマ村長へ約束を破り斬ったのは、この大男だ。
不思議と先ほどまでの震えは止まっている。
「その目、その勇気、益々気に入った。
部下になれ、命令だ」
体がビクっと跳ねた。
こんな男が僕に命令。
答えはもう決まっている。
「断ります」
解かりきっていた答えを聞き、満足そうに頷く大男。
近くの剣を抜き、僕の目の前に投げとばす。
はっきりと解かった。
この大男にとって殺人や任務なと関係ないのだ。
ただ強い奴と戦いたい、それだけなのだと。
だからこそ、簡単に人を殺すし、マリエルや僕の戦いに付き合う。
任務最優先であれば、この篭手を持ってさっさと逃げればいいだろうに。
僕は投げ込まれた剣を、両手で引きずるように構えた。
大男は何時でも来いと、でも言うのか構える気配は無い。
体全体が熱い。巨漢の男が腕を引き腰を引いたのが見えた。右型を振り上げ此方に向かい拳を放つのが予想出来た。
僕は、一気に走る。
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