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171 悪意には悪意で返すわよ
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宿で一晩寝たら気持ちも落ち着いた。
ダブルで取った宿なのに隣のベッドが空でちょっとだけ寂しい。
「さてとっと」
別にディーオと私は関係ないんだしー、ディーオはディーオで幸せになる権利はあるわよね。ただ、人の名前使われるのは嫌だから、そこだけは訂正してもらおう。
ついでに、どんな恋人が見てみたい。
身支度をして外にでる。
大きな町でもないので町馬車も見当たらない。
仕方が無いので、その辺に歩いている人を探す……あの青年でいいか。
「ギブソン家ねぇ……おっと、そこの彼方。キブソン家ってどこ?」
「か、簡便してください!」
「何を?」
疑問を口に出した時には青年通行人Aは逃げていった。
解せぬ。
五人目でやっとギブソン家の場所を聞き出せた。
教えてくれた子供に手をふり私は再び歩き出す。
しっかし、地方貴族ってのはなんで郊外の高い所に家を建てるのかしら。
教えてくれ家も例外なく遠い場所にある。
あとは緩やかな坂道を上がるだけって所で、前方から馬車が豪快に走って来た。
私が思わず道の端に退けると、馬車は私の横を乱暴に通り過ぎていく。
頭の悪そうな御者が私を見ると唾を吐いて通り過ぎていった。
「汚っ!」
もちろん、私に届くわけもなく唾は別な所に飛んでいく。
おのれ…………このエルンさんに唾をかけるとは、私が悪役令嬢のままだったら死刑よ死刑!
ギブソン家ってどういう教育をしてるのかしら。
私の家の御者がこんな事していたら…………そういえば、私が乗っている時は平民なんてひき殺してもいいわよって葉っぱかけていた気がする。
「とりあえず、行きましょうか」
さらに歩く事数十分。
ちょっと広めの門が見えてきた。普通は門番とかいるんだろうけど見当たらない。
ぱっとみ、部屋数は十以上。
建物としては二階建てで両側に三角屋根のついた平均的貴族の家だ。
玄関まで行って大きなドアノッカーを鳴らす。
ドアノッカーを鳴らす。
ドアノッカーを……おかしい。鳴っているのに誰も出てこないし壊れてるわけじゃないのよね。居留守? そっと押すと鍵のかかっていない扉は少し開いた。
「あのー…………」
返事が無い。
もう少し扉を押すと中が見えた。
縛られた老人やメイドさんが芋虫のようにうにうに動いているのが見え、私はその人と目が合った。
そっと扉を閉める。
「居ないんじゃショウガナイカエロウ」
直ぐに扉の向こうから、唸った声が重なって聞こえてきた。
あーもう、明らかに面倒な事は避けたいのに、もうしょうがないわね。
見てないふり作戦はだめらしい。
もう一度扉を開けると、やっぱり手足や口を縛られた人達が私を見ている。
「はいはいはいはい、助けますわよ」
一人の老人の手かせを取ると、その老人は自分の口の布も取りはじめた。
「これは、当ギブソン家の窮地を救っていただきありがとうございます。当主のヴェルター・ギブソンであります」
「それはどうも、私はエ……」
まって、エルン・カミュラーヌって喋ったら、ここに居るはずのディーオと私の名前を使ってる子に悪いわよね。
「エ……? ですか」
「ディーオの妹のディーエよ! ディーオはどこ? ここに居るって町で聞いたんだけど」
「それはそれは…………その、ディーオ様とエルン様は賊に連れ去られまして」
「はぁ? どういう事よ」
縛られていた人が段々と解放されていく。
その中でヴェルターさんの周りに、アレが無い、コレも無いですとメイドや執事達が耳打ちをしていく。
「先ほど、突然の賊の襲来で……ディーオ様にエルン様、そして当家の財宝の一部を持っていかれました」
「どういう事よ。けいさ……じゃない。追っては?」
こういう時の貴族って自分の所の私兵を使うのよね。もしくは町で用心棒をしてるような人を探すとか。
あまりにも、殺人とか絡んでくるともっと上になる。
まぁ領地内の揉め事は基本領地内でしろってやつね。
「追撃部隊は?」
「残念ながらこちらの家族を人質にとられ、その間に縛られてごらんの有様です」
うわ、あちこちから血を流した人がいる。
直ぐに追って来れないように怪我させたのね、ってかディーオは何してるのよ!
剣だって使えるんだし賊ぐらい一網打尽にしなさいよね。
ちょっと年配の人達が申し訳なさそうに頭を下げている。
「ええ……ですが、一応場所だけは知っております。直ぐに向かいたいのですが、怪我の治療もしなければ、とりあえず町へいって新しいなんでも屋をですな」
「そんな事してる間に逃げられるのがオチよ。ディーオとエルンが一緒に連れ去られたのよね?」
「ええ。ディーエ様の兄上とそのツレの女性は我々の身を案じて人質に……」
よし! 考えは決まった。
「じゃぁ、そのアジトの場所教えてよ。先にいって監視するから」
「ええええええ。それは危険じゃ……」
「でも、ディーオが連れ去られたんでしょ? アレで居てディーオも頭いいし考えもあるだろうし大丈夫大丈夫。町までいって助けよんでアジト行っても遅いでしょ」
「それはそうですが……」
あと、さっき唾をかけてきた奴が賊よね。
見つけたら殺す! っと、さすがに殺すのはまずいし言葉のあやね。
首だけだして生き埋めにする。
そう、賊だったら何しても大丈夫。
フッフッフッフッフ…………。
ダブルで取った宿なのに隣のベッドが空でちょっとだけ寂しい。
「さてとっと」
別にディーオと私は関係ないんだしー、ディーオはディーオで幸せになる権利はあるわよね。ただ、人の名前使われるのは嫌だから、そこだけは訂正してもらおう。
ついでに、どんな恋人が見てみたい。
身支度をして外にでる。
大きな町でもないので町馬車も見当たらない。
仕方が無いので、その辺に歩いている人を探す……あの青年でいいか。
「ギブソン家ねぇ……おっと、そこの彼方。キブソン家ってどこ?」
「か、簡便してください!」
「何を?」
疑問を口に出した時には青年通行人Aは逃げていった。
解せぬ。
五人目でやっとギブソン家の場所を聞き出せた。
教えてくれた子供に手をふり私は再び歩き出す。
しっかし、地方貴族ってのはなんで郊外の高い所に家を建てるのかしら。
教えてくれ家も例外なく遠い場所にある。
あとは緩やかな坂道を上がるだけって所で、前方から馬車が豪快に走って来た。
私が思わず道の端に退けると、馬車は私の横を乱暴に通り過ぎていく。
頭の悪そうな御者が私を見ると唾を吐いて通り過ぎていった。
「汚っ!」
もちろん、私に届くわけもなく唾は別な所に飛んでいく。
おのれ…………このエルンさんに唾をかけるとは、私が悪役令嬢のままだったら死刑よ死刑!
ギブソン家ってどういう教育をしてるのかしら。
私の家の御者がこんな事していたら…………そういえば、私が乗っている時は平民なんてひき殺してもいいわよって葉っぱかけていた気がする。
「とりあえず、行きましょうか」
さらに歩く事数十分。
ちょっと広めの門が見えてきた。普通は門番とかいるんだろうけど見当たらない。
ぱっとみ、部屋数は十以上。
建物としては二階建てで両側に三角屋根のついた平均的貴族の家だ。
玄関まで行って大きなドアノッカーを鳴らす。
ドアノッカーを鳴らす。
ドアノッカーを……おかしい。鳴っているのに誰も出てこないし壊れてるわけじゃないのよね。居留守? そっと押すと鍵のかかっていない扉は少し開いた。
「あのー…………」
返事が無い。
もう少し扉を押すと中が見えた。
縛られた老人やメイドさんが芋虫のようにうにうに動いているのが見え、私はその人と目が合った。
そっと扉を閉める。
「居ないんじゃショウガナイカエロウ」
直ぐに扉の向こうから、唸った声が重なって聞こえてきた。
あーもう、明らかに面倒な事は避けたいのに、もうしょうがないわね。
見てないふり作戦はだめらしい。
もう一度扉を開けると、やっぱり手足や口を縛られた人達が私を見ている。
「はいはいはいはい、助けますわよ」
一人の老人の手かせを取ると、その老人は自分の口の布も取りはじめた。
「これは、当ギブソン家の窮地を救っていただきありがとうございます。当主のヴェルター・ギブソンであります」
「それはどうも、私はエ……」
まって、エルン・カミュラーヌって喋ったら、ここに居るはずのディーオと私の名前を使ってる子に悪いわよね。
「エ……? ですか」
「ディーオの妹のディーエよ! ディーオはどこ? ここに居るって町で聞いたんだけど」
「それはそれは…………その、ディーオ様とエルン様は賊に連れ去られまして」
「はぁ? どういう事よ」
縛られていた人が段々と解放されていく。
その中でヴェルターさんの周りに、アレが無い、コレも無いですとメイドや執事達が耳打ちをしていく。
「先ほど、突然の賊の襲来で……ディーオ様にエルン様、そして当家の財宝の一部を持っていかれました」
「どういう事よ。けいさ……じゃない。追っては?」
こういう時の貴族って自分の所の私兵を使うのよね。もしくは町で用心棒をしてるような人を探すとか。
あまりにも、殺人とか絡んでくるともっと上になる。
まぁ領地内の揉め事は基本領地内でしろってやつね。
「追撃部隊は?」
「残念ながらこちらの家族を人質にとられ、その間に縛られてごらんの有様です」
うわ、あちこちから血を流した人がいる。
直ぐに追って来れないように怪我させたのね、ってかディーオは何してるのよ!
剣だって使えるんだし賊ぐらい一網打尽にしなさいよね。
ちょっと年配の人達が申し訳なさそうに頭を下げている。
「ええ……ですが、一応場所だけは知っております。直ぐに向かいたいのですが、怪我の治療もしなければ、とりあえず町へいって新しいなんでも屋をですな」
「そんな事してる間に逃げられるのがオチよ。ディーオとエルンが一緒に連れ去られたのよね?」
「ええ。ディーエ様の兄上とそのツレの女性は我々の身を案じて人質に……」
よし! 考えは決まった。
「じゃぁ、そのアジトの場所教えてよ。先にいって監視するから」
「ええええええ。それは危険じゃ……」
「でも、ディーオが連れ去られたんでしょ? アレで居てディーオも頭いいし考えもあるだろうし大丈夫大丈夫。町までいって助けよんでアジト行っても遅いでしょ」
「それはそうですが……」
あと、さっき唾をかけてきた奴が賊よね。
見つけたら殺す! っと、さすがに殺すのはまずいし言葉のあやね。
首だけだして生き埋めにする。
そう、賊だったら何しても大丈夫。
フッフッフッフッフ…………。
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