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147 放火された裏事情

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 昔ドラマかなにかで家を燃えるシーンを見たかもしれない。
 そのドラマでは、その家の人間が中に大事な物が入っているのに! と必死に戻ろうとして止められているみたいな? 

 実際にはそうはならなく、ただ呆然と眺めていた。
 木造と石を使った大きな建物は、いまだ煙を上げている、幸い火は消されたけど周りに燃え広がらないように撒いた水の処理や、黒くなった物を洗う人などが目立つ。

 鎮火した建物からブルックスが出てきた。顔は黒くまさに熊のよう。


「よう」
「ようって……明るい声をだして顔真っ黒よってか、火事って」
「まぁ……その話は店でな」


 手をシッシとして早くいけと合図をしてくる。
 今来たのにもう帰れとな? 文句の一つも言いたいけど――――。


「――――か弱い女の子だもん火事の現場に居てもやる事がないので素直に従う」
「エルンちゃん、口に出てるわよ」
「おっとっ!」
「現場はこっちに任せてお店に戻ってもらっていいかな? 呼びつけてごめんね」
「いやいやいや、なんでソフィーネさんが謝るのよ、ええっと本当に足手まといになるから戻ってる」


 ソフィーネさんは現場に残るというので、私だけ……いやリオも来るらしいので二人で店へと戻った。
 テーブルに座ってワインを流し込む。
 ちょっと煙を吸っていたみたいでワインの味とコゲの味が混ざり合っているような感じだ。

「火事かー…………」
「ふむ、付け火だな」
「ふぁっ」


 リオは断言するので私は顔をまじまじとみた。


「なんでっ!?」
「町の中、それもこれだけ人が住んでいる真ん中で自然火はまずないだろう、誰も住んでなさそうな建物だったしな」
「そりゃまぁ……まだ事務所すら開いてないし」


 でもなんで?

 カランカランとベルの音が聞こえると、ブルックスが帰ってきた。
 その背後には、にんにんでござると、見知った豚が入ってくる。


「ぶひひ、そんな豚を見るような目が懐かしいでござる。おや、そちらの綺麗な女性は」
「ほう、人間界に溶け込むオークは珍しいな……オークといえば性欲が凄い、処理は大変だろう」
「こっちもキツイし、ぶっとんだ女性でござる! とりあえず、自己紹介をコタロウでござるよ」
「リオだ」
「ちょ、リオ変な事言わないでよ。これでも人間らしいわよ」


 コタロウが開いている椅子に座ると、ブルックスも追加の酒とコップを持ってくる。
 私達三人を見た後に、店主のブルックスだ。と席に着いた。


「その……」
「ああ、いいわよ。かまわず喋って、付け火……放火だったんでしょ?」
「そこまでわかっているのか……」
「いや、そう言ったのはリオなんだけど」


 リオはドヤ顔をして鼻をフフンとならしている。
 ブルックスはリオの前で話していいか迷ったんだろうけど、私としては別に隠すつもりも無い。
 もちろん、犯人がここにいるならともかく、全員白だ。
 一人を除いて。


「ぶひ、拙者の見る目だけが白いでござる」
「べつにー。コタロウが私に嫌がらせをするのに火つけたとか思ってないしー」
「酷いでござるよ! エルン殿がサミダレをシンシア姫に着けるから拙者城で用無しになったでござるよ!」
「それはいい事じゃない。はっまさか、その腹いせに」
「話続けていいか?」


 ブルックスがやや疲れた顔で割ってきた。

「「どうぞ」」でござる」

 咳払いをすると話し出す。


「一応建物の管理は俺やコタロウがやっているからな、それがどういうわけか火が出た」


 なるほどなるほど…………まったくわからない。
 たんに空き家だから、世の中に不満が持つ人間が、えーい放火しちゃえって火つけたんじゃないの?


 リオが簡単だな。と言い出した。


「簡単とは?」
「恨みだろ、その建物はよくしらないが作られたら困る、もしくはエルンお前が恨み持っているかだ」
「恨みなんて…………」


 恨みかぁ、過去の記憶ある分無いとはいえないわね。
 自分で言うのもなんだけど理不尽に解雇した使用人は沢山、理不尽に買収して罪を着せた人間も居ない事はない。
 まぁ、そんな人間が偉くなりましたって言ったら気に食わない奴もいるでしょ。


「昔の事は置いておいて、最近は無いわ!」
「…………すげえ自信だな」
「この一年近く、お上品に自分で言うのもなんだけど善意の固まりみたいな生活送ってるのに恨まれても、それより前となるとちょっとわからないわね」
「…………すげえ自信だな」


 おい。なんで二回言ったし。


「とりあえず、身の回りは気をつけろ。念入りに油撒かれていたしギルド設立か、お前さん個人の恨みだろ」
「ギルド?」


 リオが不思議そうな顔をしていたので、亜人を含む冒険者ギルドの設立だというと、面白いなと言ってきた。


「こっちにも、魔……おっとノリスから上でいう時は隠せって言われていたな、人間に近い魔……亜人が何名もいる、そのギルドが出来たら雇ってくれ」
「俺に言われてもな、どっちにしろ問題を解決し無い事には創設もむりだろ」
「問題を解決しろってもどうするのよ?」


 ◇◇◇


 私は酒場熊の手を出て家へと帰る。
 おかえりなさいおじょうさま。とノエが出迎えてくれて、着ているコートをガルドに渡す。
 リオはまぁがんばれと、他人事のようにいって帰った。
 他人だし仕方が無い。

 それでも、いよいよ面倒だったら魔界に来い。と心配してくれた。


「何か困った事でもあったか?」


 紅茶をだしながらガルドが聞いてきた。

「は! 中々に目ざといわね、こうやって女性を落としていくのね」
「馬鹿いうな……さっきから放火や犯人見つけとかグチグチ言っていたら誰でも気づく」
「い、いつのまに」


 仕方が無いから、起きた事をガルドに話す。
 ノエも来たので、ノエにも同じ事を話した。

「ゆるせないです。おじょうさまの家を!」
「家じゃないんだけどね」
「恨みか……犯人のめぼしはついているんだろ?」
「それねー…………コタロウとブルックスの話ではやっぱりガール補佐官の一派が怪しいって。ほらこないだの学園祭でもアレの息子を捕まえたじゃない……」
「あの盗撮の男が」
「そうそう、何か私のせいで実家に帰る羽目になったとか」


 紅茶を飲んで考える。
 目星といっても予想だし…………困ったわね。


「そうか、俺はソイツの親を殺せばいいのか」
「そうそう、犯人の元締めに死んでもらえばって……なんでそうなるのよ!」
「違うのか?」
「わ、わたし何も聞かなかった事にします」


 ノエは両耳を押さえてるし、ガルドは命令さえあれば行って来るぞ。と言い出した。

「平和的に解決したいんだって!」


 私の叫びに、ガルドが今まで平和的に解決した事あったか? と言い出すけど無視よ無視!
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