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64 銀水晶の乙女

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 私は今頭を下げて片方の膝を立て、目線は下にある赤い絨毯じゅうたんを見ている。
 もし私が突然変な動きをすれば、直ぐに捕らえられるだろう。

「面をあげよ」

 校長、いや今の立場は王が命令をする。

 私は顔をあげ、王の顔を見つめた。
 隣に居るナナも恐らくは同じだろう。

「見習い錬金術師ナナ、及びエルンよ。今回の働き誠に――――」

 
 ようは前回の、寄生イベに対して私とナナに褒美をやるという話だ。
 話が長いのよね、淡々と喋るし眠くなる。
 褒美っても、金貨十枚でしょ。
 私が胸につけてるネックレスなんて、金貨十五枚よ。それにすら負けるなんて。

「――――で、よろしいかエルン・カミュラーヌ」
「はい、謹んでおうけします」


 何言ってるか聞いてなかったけど、こういう時は適当に返事しとけば直ぐ終わるのよ。
 帰ったら寝よう。
 そうよ、昨日までパパが態々家に来て様子見に来てたし、それで寝不足なのよ。
 でも、元気そうで良かった。
 あんなに喜ぶなら、ちゃんと帰っておけばよかった…………っと、何か呼ばれてるわね。


「謹んでお受けします」


 とりあえず、三時ぐらいには起きて夕方は……最近あの商人ええっと名前は、ミー……そうミーティアだ! あの子の店にも行ってないわね。
 ついでだから、足の不自由なマリアちゃんが喜びそうな物でも……あーはいはい。


「謹んでお受けします」


 ――――……突然に肩を叩かれた!
 驚きのあまり背後を向くと、ナナが王の話の途中というのに立っている。


「ちょ、ナナ早く頭を下げて。王の話中よ、適当に返事しておけば直ぐにおわ……あれ?」


 前を向くと玉座には誰も居ない。
 横にいた兵士達も見張りを除いて居なくなっている。


「あのーもう終わりましたけど……」
「え、そうなの?」
「はいっ」
「じゃぁ、帰りましょうか。いたたた…………同じ姿勢でいたから体が固まって固まって」
「あの…………エルンさんは帰れないかと、思うんですけど。やっぱり上の空だったんですよね」


 んんんんん? 帰れないってなんで? ナナは私が悪い事でもしたような悲しい顔をしてるし。

「おい、娘! 何をまごまごしている! 早く用意をせんかっ!」

 怒鳴られたので、怒鳴ったほうを見ると廊下で茹でタコ、いいえ顔の赤いはげの男性がいる。

「あ、ギャル大臣」
「ガールだ! それと大臣ではなく補佐官だっ。これだから物覚えの悪い女など……まぁいい」

 ガール補佐官は言葉をとめて嫌な笑いを浮かべる。

「喜べ国外追放だ」
「ええええええええっ!?」
「ち、違います! エルンさんは戻ってこれます!」
「ふんっ、まぁいいさっさと行くんだな! おっと、それとくれぐれも失礼のないようにな。それと、わたしの名前を絶対に伝えて来い! それとああええっと…………とにかく、控え室でまってろ、今運んでくるっ!」


 文句を言うとガール補佐官はさっさと見えなくなった。
 一生見えなくなって欲しいわ……じゃ無くて、追放? なんで?? 悪い事したっけ?
 ギロチンよりは良いんだけどさ……そ、そうだお金って持っていけるのかしら。
 はっ! もしかして文無しで?

「エルンさん、とりあえず控え室へいきましょう。顔真っ青ですし」
「ナナ、何か知っていたらお願い……」


 ◇◇◇

 私は控え室でナナの説明を聞いて頷く。
 納得はしてないが、納得するしかないというような。

 先ほどの褒美の受賞式で褒美を貰った後、あのクソみたいな…………おっと、口が悪いわね。あのお口が少し悪いガール補佐官様が王子の結婚の話をしだした。

 国内にある銀水晶を贈ったらどうでしょう? と王に提案したのだ。

 銀水晶。昔は人気があった嗜好品しこうひんでまぁまぁお値段が高い。
 どこぞの美少女戦士がそれを巡って戦っていたアニメがあったのを同時に思い出す。
 実際は花のような形で花びら一枚一枚も水晶になっている、その珍しさと発掘場所が地下奥深くにある天然洞窟でしか取れなく価値が高い。
 買うとしたら小さい物でも金貨三十枚はするんじゃないかしら。

「エルンさん、続きを話して大丈夫でしょうか?」
「あ、ごめん。違う事考えてたわ」
「大丈夫です、ごめんなさい説明が下手で……」


 しょんぼりするナナの説明の続きを聞きだす。

 ガール補佐官の発言に、それは良い案だという王。
 ポンポンと話が進んで誰が行くかと成った時、ガール補佐官が家宝の銀水晶を贈らせて貰いますと手を上げたのだ。

「なるほど…………ようするに、ガール補佐官がガーランドの国に対して賄賂を送りたいって事なのね」
「エ、エルンさんっ! 声が大きいです!」
「で、なんで私が国外に?」
「はい、王様が『ガール補佐官は国にとって重要な人物、事故があってはいけない。
 ここは大きな功績を挙げたエルン嬢を推薦する。錬金術師にとっていい勉強になるだろう』と」
「あー…………そこで私が」
「はい……」

 

 謹んで受けたわけか。
 どうして、こう不幸なのかしら……村を救ったというのに、いや実際救ったのはナナであるけど。
 それでも、たった金貨十枚渡されて今度は、国外へ宅急便の仕事をしなくちゃならない。
 それもこれ、絶対に無報酬よね。

「私も一緒に行きたいんですけど……すみません別の仕事が」
「へ? ああいいわよ。気持ちだけ受け取るわ、まったく次から次へと……」
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