上 下
27 / 209

27 突然の来客、お風呂イベント導入

しおりを挟む
 水を掛けられた快気パーティーから数日。

 朝食を食べながら考える。

「あの!」
「なに?」

 心配そうな顔でノエが私へと話しかけてきた。
 相変わらず食事は一緒にしてくれない。

「美味しくなかったでしょうか……?」
「え? 別に美味しいわよ? 何で?」

 朝食なのでパンとハム、野菜を煮込んだスープとジャムとバターなど軽いものだ。

「いえあの。美味しくなさそうな顔をしていたので」
「ああ、考え事してたのよ。そうだ! ノエは何を目指しているの?」

 目指す? と聞いて口を閉じて考え始めた。
 なので、将来の夢よと付け足す。

「夢ですか、おじょうさまの横で働きたいですっ! あ……首なん……でしょうか……」
「ち、ちがうわよ。皆夢があってうらやましいなって事。じゃぁメイドになる前の夢ってあった?」
「本が好きだったのでその、教師になれたらなって……もちろん貴族様じゃないので教師はなれないんですけど、代わりに学校に入れない子供たちに教えれる人間になりたいなぁって……ご、ごめんなさい。つまらない夢ですよね」
「え? 全然立派と思うわよ。ノエなら慣れるわよ。
 とりあえず、これと、これのお代わりあったら貰える?」

 嬉し恥ずかしそうに返事をするとノエは走っていった。
 本当に立派だ。

「おじょうさまっ!」
「あら、お代わり分なかった?」

 手ぶらのノエが私を呼んでいる。

「いえ、ナナさまが来客されましたけど、どうしましょうか?」
「え? ナナが? 何で?」
「面会を申し込みますとしか、ご、ごめんなさい。聞いてきますっ!」

 ノエに聞いてもわからない。走り出そうとするノエを呼び止める。

「あの子も、私とこれ以上付き合ったってしょうがないでしょうに。
 とりあえず、通して頂戴」
「はい」

 未来は回避された! と、思う。
 だって私はナナを虐めてないもの、一番酷いエンディングでは賢者の石を盗むだけど、私は別に盗むつもりも無い。
 それに、リュートと結婚もしたいと思わないので、殺される心配も無い。

 考えていたら目の下にクマを作ったナナが笑顔で入ってきた。

「お、おはようございます! エルンさんっ!」
「おはよう。今日はどうしたの? 約束してたっけ?」
「約束はしてません……でもっ」

 でもっ聞いてください! というので、黙って聞くことにする。
 鞄から手袋と小瓶と眼鏡をセットでテーブルに並べた。

「まだ、眼鏡は必要な齢じゃないわよ?」
「ち、ちがうんです! 精霊の眼鏡に手袋、それに小瓶です!」
「え、これがそうなの!?」


 私は眼鏡をかけてみたり、小瓶を眺めたりもする。
 変哲の無い道具にしかみえない。

「エルンさんが先に帰られたあと、エレファントさんに作り方だけを教わったんです!
 出来ないかもしれませんよ? と言われたんですけど出来ましたっ!」
「そ、そう」

 作り方を教わっても出きるとは限らない、そうディーオから教わったのは、ナナも聞いているはずなのに。

 天才よね。

「で、これを見せに来たの?」
「そうなんです! じゃぁ行きましょうっもう、作っている時から楽しみにして」
「まったまったまった、行くってどこに!?」
「やだなー精霊の森ですよ。昔から精霊ちゃんがいると言われている森です」


 場所は知っている。
 だた、なぜ一緒に行く事が決定してるのか、それを聞きたい。

「あ……もしかして、ご迷惑だったでしょうか。
 そのごめんなさい……一緒に行けると思って一人張り切ってしまって、朝食中失礼しました。帰ります……」

 もう、これじゃ私が悪者みたいじゃないの。

「待ちなさい、行くわよ」
「ほ、本当ですかっ! 日帰りでいけるんですけど!」
「まったまったまった。
 それよりもまだ、七時よ……それに、ちゃんと寝た?
 顔色悪いし、その、ちょっと匂うわよ」
「えっ、あの……ちょっと徹夜して睡眠は短かったのと、そのお風呂は入ったん……ですけどね……ちょっと前というか」
「最後に入ったのは?」
「五日前……です……。
 その! 入らなくても人間って死なないと思います!」


 五日前というとパーティー前日か。


「ノエ、お風呂の用意お願い。
 それと午後から出かけるから、ナナはそれまで寝てなさい」

 そんな悪いですし! それに外に出たらまた汚れますけどというナナを私は、はいりなさい! と一括して従わせる。
 私としても、食べて直ぐは動きたくは無いし、寝不足のナナを連れて行きたくない。

「あとは、冒険者の手配も必要よね……」
「あ、日帰りなので大丈夫ですよ! それに最近強くなったんです!」

 私の呟きを聞くナナは、懐から花柄の物体と取り出した。
 カラフルで可愛い。

「ボムLV2改です! 使い方は簡単で、この部分を押して投げるだけでっ」

 カチッ!

「え?」
「あっ」

 ナナはそのボタンを押したまま固まる。
 私と顔を見合わせてどうしようというような顔だ。

「そ、外に捨ててっ! ノエ窓を開けて」
「「は、はい」」

 二人とも大声で返事をして動く、ノエが窓を開けてナナが走る。
 そして窓の手前で転んだ。

 コロコロと私の足元に転がってくるボムLV2改。

 ボンッ!

 大きな音とおもに白煙が部屋中に広がる。
 何ともいえない臭いが広がり咳き込んだ。

「げっほげほ」
「ご、ごめんなげふげふ」
「お、じょう……こほ」
「ぶ、無事?」
「さっしょう能力はない、げほ、ないん……げふ……です」

 煙が収まるまで暫くかかった。
 煙が収まると部屋の中は悲惨な状況だった。
 あちこち白や赤や青の煙跡がついている、害虫退治の中にいたらこんな感じなんでしょうねと思う。

 後から聞いた話によると、人には無害で魔物が嫌がる煙をだすのに特化させたらしい。
 女性や子供にも安心って、でも室内で使うものじゃないわね……。
 横を見ると体中煙で汚れているのに、エルンさんとおっふろおっふろと呟いているナナがいる、ちょっと怖いわね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄計画書を見つけた悪役令嬢は

編端みどり
恋愛
婚約者の字で書かれた婚約破棄計画書を見て、王妃に馬鹿にされて、自分の置かれた状況がいかに異常だったかようやく気がついた侯爵令嬢のミランダ。 婚約破棄しても自分を支えてくれると壮大な勘違いをする王太子も、結婚前から側妃を勧める王妃も、知らん顔の王もいらんとミランダを蔑ろにした侯爵家の人々は怒った。領民も使用人も怒った。そりゃあもう、とてつもなく怒った。 計画通り婚約破棄を言い渡したら、なぜか侯爵家の人々が消えた。計画とは少し違うが、狭いが豊かな領地を自分のものにできたし美しい婚約者も手に入れたし計画通りだと笑う王太子の元に、次々と計画外の出来事が襲いかかる。 ※説明を加えるため、長くなる可能性があり長編にしました。

伯爵夫人のお気に入り

つくも茄子
ファンタジー
プライド伯爵令嬢、ユースティティアは僅か二歳で大病を患い入院を余儀なくされた。悲しみにくれる伯爵夫人は、遠縁の少女を娘代わりに可愛がっていた。 数年後、全快した娘が屋敷に戻ってきた時。 喜ぶ伯爵夫人。 伯爵夫人を慕う少女。 静観する伯爵。 三者三様の想いが交差する。 歪な家族の形。 「この家族ごっこはいつまで続けるおつもりですか?お父様」 「お人形遊びはいい加減卒業なさってください、お母様」 「家族?いいえ、貴方は他所の子です」 ユースティティアは、そんな家族の形に呆れていた。 「可愛いあの子は、伯爵夫人のお気に入り」から「伯爵夫人のお気に入り」にタイトルを変更します。

回帰令嬢ローゼリアの楽しい復讐計画 ~拝啓、私の元親友。こまめに悔しがらせつつ、あなたの悪行を暴いてみせます~

星名こころ
恋愛
 ルビーノ公爵令嬢ローゼリアは、死に瀕していた。親友であり星獣の契約者であるアンジェラをバルコニーから突き落としたとして断罪され、その場から逃げ去って馬車に轢かれてしまったのだ。  瀕死のローゼリアを見舞ったアンジェラは、笑っていた。「ごめんね、ローズ。私、ずっとあなたが嫌いだったのよ」「あなたがみんなに嫌われるよう、私が仕向けたの。さようならローズ」  そうしてローゼリアは絶望と後悔のうちに人生を終えた――はずだったが。気づけば、ローゼリアは二年生になったばかりの頃に回帰していた。  今回の人生はアンジェラにやられっぱなしになどしない、必ず彼女の悪行を暴いてみせると心に誓うローゼリア。アンジェラをこまめに悔しがらせつつ、前回の生の反省をいかして言動を改めたところ、周囲の見る目も変わってきて……?  婚約者候補リアムの協力を得ながら、徐々にアンジェラを追い詰めていくローゼリア。彼女は復讐を果たすことはできるのか。 ※一応復讐が主題ではありますがコメディ寄りです。残虐・凄惨なざまぁはありません

異世界転生_「土木の錬金術師」スローライフ目指して頑張ります

相楽 快
ファンタジー
異世界転生した土木技術者、タック。 転生時に錬金術の才能を授かった。 磨き上げた錬金術の技術と土木技術の知識で、異世界を少しずつ暮らしやすくしていくお話。

乙女ゲーム攻略対象者の母になりました。

緋田鞠
恋愛
【完結】「お前を抱く気はない」。夫となった王子ルーカスに、そう初夜に宣言されたリリエンヌ。だが、子供は必要だと言われ、医療の力で妊娠する。出産の痛みの中、自分に前世がある事を思い出したリリエンヌは、生まれた息子クローディアスの顔を見て、彼が乙女ゲームの攻略対象者である事に気づく。クローディアスは、ヤンデレの気配が漂う攻略対象者。可愛い息子がヤンデレ化するなんて、耐えられない!リリエンヌは、クローディアスのヤンデレ化フラグを折る為に、奮闘を開始する。

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

英雄になった夫が妻子と帰還するそうです

白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。 愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。 好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。 今、目の前にいる人は誰なのだろう? ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。 珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥) ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。

【完結】アッシュフォード男爵夫人-愛されなかった令嬢は妹の代わりに辺境へ嫁ぐ-

七瀬菜々
恋愛
 ブランチェット伯爵家はずっと昔から、体の弱い末の娘ベアトリーチェを中心に回っている。   両親も使用人も、ベアトリーチェを何よりも優先する。そしてその次は跡取りの兄。中間子のアイシャは両親に気遣われることなく生きてきた。  もちろん、冷遇されていたわけではない。衣食住に困ることはなかったし、必要な教育も受けさせてもらえた。  ただずっと、両親の1番にはなれなかったというだけ。  ---愛されていないわけじゃない。  アイシャはずっと、自分にそう言い聞かせながら真面目に生きてきた。  しかし、その願いが届くことはなかった。  アイシャはある日突然、病弱なベアトリーチェの代わりに、『戦場の悪魔』の異名を持つ男爵の元へ嫁ぐことを命じられたのだ。  かの男は血も涙もない冷酷な男と噂の人物。  アイシャだってそんな男の元に嫁ぎたくないのに、両親は『ベアトリーチェがかわいそうだから』という理由だけでこの縁談をアイシャに押し付けてきた。 ーーーああ。やはり私は一番にはなれないのね。  アイシャはとうとう絶望した。どれだけ願っても、両親の一番は手に入ることなどないのだと、思い知ったから。  結局、アイシャは傷心のまま辺境へと向かった。  望まれないし、望まない結婚。アイシャはこのまま、誰かの一番になることもなく一生を終えるのだと思っていたのだが………? ※全部で3部です。話の進みはゆっくりとしていますが、最後までお付き合いくださると嬉しいです。    ※色々と、設定はふわっとしてますのでお気をつけください。 ※作者はザマァを描くのが苦手なので、ザマァ要素は薄いです。  

処理中です...