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22 招待状を受け取って

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 突然の告白を受けたまま考える。
 私の中では終わった事。というか付き合ったら殺される可能性が高いし、前よりも熱はない。
 ただ、嫌いにはなれないのよね。
 ナナとくっついて幸せな人生を送って欲しい。
 そう何ていうか、弟みたいな感じだ。

 断ろうと私が口を開きかけた時に、リュートのほうから声を出して来た。

「いや、こんな事を言うのも悪いと思っている。
 今の俺が気に食わないのだろう、だから優しい騎士になる――――」
「――――そして、全部終わったら結婚してくれないか?」

 私はリュートが喋り終わる前に、リュートの言葉の続きを言った。
 リュートは当然驚いている。

 いやだって……このセリフ、ゲームでみたもん。

「君は……俺の言いたい事を……」
「とりあえず、却下却下。
 ナナでもなんでもいいからさっさとくっついたら? 用事はそれだけ?」
「ナナとは別に付き合っても……いや、用事はもう一つあって」

 まだあるのか。
 リュートは一枚の紙を取り出すと私に手渡した。

「手紙?」
「ああ、母からの手紙と招待状で……お礼をしたいから家に来てくれという奴だ、今度の休日に小さいけどパーティーをするらしい」
「あーあのっ! に」
「に?」

 人間じゃない母親よね。と口が裂けそうになった。
 セーフ、セーフ、セーーーーーッフ。
 
「に、苦手なのよね、そういう集まりって、それにリュートの実家って私の家の近くよね」
「母は王都にいる」
「ああ、そうだったわね……行くかどうかは別にして招待状は受け取っておくわ」

 今は話を切り上げたい。

「……リュート……」

 少し甲高い声がリュートを呼んだ。
 私が振り向くと、同じく剣を腰につけた少年がいる。

「あら、カイン……」

 様つけたほうがいいのかしら。

「やぁリュート。君が屋上になんて珍しいね」
「……試験官に言われリュートを探していた」
「やだ、試験の途中だったの!?」
「試験といっても、書類を届けるだけさ。じゃエルン当日待ってるよ」
「あ、ちょっとっ」

 リュートは私に手を振ると階段を降りていく。
 残ったカインは私と目が合った。

「カイン……様もありがとうございます」
「様は…………いらない」
「はい?」
「城じゃないから普通にして欲しい」

 あーはいはい。ヘルン王子もそうだったけど、王族って見られるの嫌なのかしら。

「じゃ、無礼講って事で、わかったわよ」
「怪我は治ったのか?」
「もちろん」

 あれ、ちょっとだけ嬉しそう?

「見舞いに行けなくて、すまなかった」
「別にいいわよ。ほらこの通り」

 私はスカートをめくり膝下から見せる、複雑に折れていたのに今はすっかり元に戻った。
 高価な薬って凄いわよね、あれ一本あったら切られた腕さえも治るとかなんとか。
 カインの顔色が青ざめて横を向く。

「ちょっと、カイン大丈夫?」
「き、君は……その……恥ずかしくないのか?」
「え、ああ膝裏ぐらい平気よ、こうしてインナーも履いて……無いわね」

 そういえば、朝寝坊して履いた記憶が無い。
 後で履こうと思ってベッドの上だわ。

「これは失礼」
「オレのほうこそ……」

 カインは私をじーっとみてる。
 なんだろ、こないだの治療費でもやっぱり払ってほしいのだろうか。

「何?」
「す、すまない。君が綺麗で見とれてしまった……」
「「…………」」


 お互い無言で見つめあう。
 思わず私は笑い出してしまった。


「ぷっ、いやいやいや。ありがとう!」

 私はカインの背中を叩く。
 久々に聞いた貴族流の冗談だ。小さい頃は性格以外は良物件の私に、そう言い寄ってくる男の子が結構居た。
 なお、悲しい事に日本での私には特に記憶にない。

「エ、エルン?」
「王族となると女性にいうお世辞の言葉も上品よね。
 でも、勘違いする人が出るからあまり言わないほうがいいわよ」
「……オレは……」
「はいはい、それよりも帰りましょう、さっきから私達をみて屋上に来たくても帰る人を見えるのよね」
「そう……なのか?」

 殆どカップルだけど、私の姿を見ると階段を戻る生徒を何人か見ている。
 おかしいなぁ、そんな悪い事してないんだけどなぁ……。


 ◇◇◇

 冗談を言ってからさらに無口になったカインと一緒に階段を降りる。
 廊下で別れると、今度こそ一人になった。
 暗い顔していたけど、体調でも悪いのかしら。

「で、私は図書館の地下室に行きたいんだけど。結局功績をあげろってなんなのよ……。
 あーもう錬金術師って面倒!」
「ふぁっふぁっふぁ、面倒かね?」

 老人の声が聞こえる。
 私の愚痴に付き合ってくれるなら老人でも、いいかもしれない。
 声のほうへと振り向き……。

「ええ、面倒よ。お爺ちゃんもそう……おも……いませんよね。
 錬金術はとても素晴らしい物と思っています」
「ふむ、しかしワシの耳は確かに今しがた……」
「いやですわ、学園長先生。空耳ですわよ」

 私が百八十度態度を変えたのは、相手が学園長だったからだ。
 なお、校長でもありグラム王国の王でもある。

「ふむーおかしいのう……」
「おかしくありませんわっ! で、校長先生が私みたいな一般生徒に何用が御座いますでしょうか?」
「ふぁっふぁっふぁ、学園長だからといって態度を改めなくてよいよい。
 ヘルンやカインみたいに気さくに接してほしいのう」

 ご冗談。
 気さくに接して何かしらの言葉が暴言と問われたら最後打ち首になる可能性がある。
 もちろん王子二人にもあるんだけど、あっちにはそういうイベントが記憶に無いからだ。

「いやですわ、これが普通です」
「かなしいのう……」
「それよりも」

 私は声を落として小さく喋る。

「先日は過度な治療をありがとうございます。高い薬だったんですよね」

 お礼を言う、大人として…………元大人としてやっぱり言ったほうがいいだろう。
 あの時、どんな事をしても治して下さいという皆の顔を思い出す。
 
「ふぉっふぉっふぉ、カインの判断は正しいようじゃな。
 所で、今度の休日日に小さな昼食会があるのじゃが、どうかな?」

 あっ。これって悪者を甘い言葉で釣って捕まえる時によくあるパターンよね。
 ほいほいとついていくと牢屋に入るってのが定番!

「申し訳ありません、学園長と親しいわけでもなく。
 いえ、その日は友人の家族に食事会を誘われてまして」
「ほっほう……」

 どうせリュートの所にも行く気はないけど、断る口実に使わせて貰おう。
 あれ? 学園長の目が光ったような。

「いやなに、息子達の希望だったのでな。
 断られたら仕方がない、それではよき錬金術師へと、ふぁっふぁっふぁ」

 私の言葉に満足したのか、学園長は長い廊下をすたすたと歩いていった。
 あ、どうせ話す機会あったのなら、地下室へ入る許可書聞いておくんだった……。
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