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05 グラン国家王立学校と錬金術科

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 一人寂しい夕食が終わり寝室へと戻る。
 ノエは『メイドですから』と、一緒に食事をしようとしない、一人で食べる夕食というのはちょっと寂しい物だ。
 今度無理やりにでも一緒に食べよう。

 私はノートを開く。
 今日で四日目、今日起きた事を『日本語』で書いていく。
 転生する前の覚えている記憶や、ゲームの事などだ。

「魔物かぁ……」

 発掘場で出た魔物というのが気になる。
 ゲーム上では語られてないけど、パパが納める領土は王都よりもかなり離れた場所にある、ど田舎だ。
 パパは、そこの領地で主で金山の権利も、当然王より許可を得ている。
 まぁ金山があるといっても、あくまで採掘所なので町はそんなに発達してない。
 ゲーム終盤でも王都に魔物が襲ってくるイベントがあったはず。

 それを撃退するのは、やっぱり主人公のナナである。
 『魔よけの香』というアイテムの強化版『もっと魔よけの香』
 ナナオリジナルレシピだ。
 私はそのレシピを覚えている。

「べ、べつにパパの為じゃないんだからね! 金山がなくなると、好き放題暮らせないし!」

 一人ツンデレで誰も突っ込みがないので真面目に考える。
 作って渡してあげたいけど、私の家には工房がない。
 もっとも道具の使い方もわからないけどー、大釜で煮るぐらいは私にも出来るでしょう。
 学園には生徒が使えるレンタル工房があったはず。
 それに道具の使い方は図書室で調べればいい。
 
 しょうがない、明日学園へ行って見ますか。

 この学園、割と自由度が高い。
 特に錬金術科は年三回の試験をクリアすれば卒業できるという仕組みだ。
 もちろん、錬金科以外にも科はありリュートは騎士科だったきがする。
 
 私は枕元の財布を確認した。
 ジャラジャラと白金貨四枚と金貨が三枚ほど入っている。
 これだけあれば、何でも買えるでしょ。

 通貨は銅貨が百円。
 それが十枚で銀貨一枚になり、銀貨一枚は千円。
 以下十枚で次の単位に上がる仕組みで、金貨が一万円。
 で最後に白金貨の価値は十万円。
 
 という事はこれだけで四十三万。
 十六歳が持つ金額じゃないわね。
 そうと決まれば、私はメイド呼び出しのベルを振り回す。

 ノックの音がなると、ノエが緊張した顔で部屋へと入ってきた。

「お待たせしました」
「ごめんね、呼び出して。
 明日学園に行こうと思う、だから朝早く起こして、それとおやすみなさい」
「…………それだけですか?」
「そうよ?」
「も、申し訳ありません! おやすみなさいませおじょうさま」

 変な子ね、顔を赤くして……。


 ◇◇◇

 豪華な馬車に揺られて学園へと向かう。
 学園は王都の端にある。
 学園へと馬車をつけ目的の場所へと歩く、私の姿をみた複数の学生が目線を合わせないようにしている。

 時おり、うわ……睨まれたら終わりだぞ。あれがリュートに振られた女か、とか。
 まぁ聞こえてくる事、影口が。
 私がちらっとみると一斉に顔を背ける。

 まぁべつに気にしないんだけどー、気にしないんだけどちょっと悲しいのはある。
 中央受付に行くと、それまでいた学生が一斉に離れていく。
 逃げ場の無い若い受付が引きつった顔で頭を下げた。

「ほほ本日はどのようなご用件で」
「学生用のレンタル工房を借りたい、はい学生書」
「一日銀貨五枚……」

 私は無造作に白金貨を二枚出す。
 ええっと二日で金貨一枚だから、これで二十日は借りられるでしょう。
 受付の女性が青い顔のまま口を開く。

「も、もうしわけありません。一生徒が借りれる日数は一度に最大二日で、その次は四日空けないとダメなんです」
「は? なにそれ」
「規則なんです」
「規則ねぇ……」

 私は規則ねぇと呟いただけなのに、受付の女性は平謝りしてくる。
 脅したわけじゃない。

「これはこれは、エルン君じゃないか」

 突然の男性の声で私は振り向く。
 歳は若そうだけど学生には見えない。
 ぱっと見二十代中盤ぐらいだろう。
 体は細く顔はまぁイケメン、鼠色の短髪で私に上からであるけどフレンドリーな態度を取っている。
 服装は黒いローブをまとっていて、これで杖でも持ったらどこぞの魔法使いを連想させた。

「…………誰?」
「…………本気か?」

 本気も何も全くおぼえた無い。
 受付の若い女性が、ディーオ先生と小さく呟く。

 ディーオ、ディーオねぇ。
 あっ!

 私は自然に手を叩いていた。

「もしかして、前作で錬金術師ミーナに振られて、失恋したまま失踪したディーオ!?」

 思わず思った事を大声で言ってしまった。
 さっきまで青い顔をしていた受付の女性が小さく『ぷっ』と笑った。
 周りの野次馬さえも静かに笑いを堪えている。
 でも、変ね……ナナの錬金術には、彼出てこないのよね、出てくるのは名前だけ。
 甲高いディーオの声が大きく響く。

「訂正しよう。
 過去に在籍していたミーナは錬金術師ではなく錬金術をかじった冒険者だ。
 それに、天才なボクは彼女に惚れてなんて一切ない!
 いいか、彼女がボクに絡んできただけであって、ボクは迷惑をしてたんだ。
 彼女が居なくなって清々した!
 聞いているかっエルン・カリュラーヌ君!」
「え? ああ聞いてたわよ」

 たぶん。
 私前作のミーナの錬金術師はプレイしてないのよねぇ。
 続編であるナナの錬金術師は前作から八年後が舞台だから、ディーオの年齢は予想通り二十代中盤。

「で、そのディーオ先生? が私に何のようですか」
「何のようもなにも、君の学科は錬金科だろう。
 今年はボクの担当だ、実家は相当な金持ちらしいが、ボクは賄賂など一切受け取らないからな」

 イラ☆

 人を呼び止めておいて賄賂は受け取らないとか突然すぎる。
 そもそも私は賄賂なんて……。
 前世を思い出してからは一度も無い! まだ一週間もたってないけど。
 その前はほら、パパ色々頼んだような。
 自分であって自分じゃないみたいな。

「賄賂なんて贈ったこと一度もないですけど!」
「ほう、これを受け取れ」

 私はハンカチに包まれた物を手渡された。
 中を開くと金貨が二枚入っている。

「なんですか? 金貨に見えますけど」
「見えるんじゃなくて金貨その物だ。
 ある生徒から貰うわけには行きませんからと、君に返してくれと預かった物だ」
「へえ、でも私に心当たりないわよ?」

 入学してまだ半月もたってないのに、賄賂も何も無い。
 しかも生徒に送るなんて事も、自慢じゃないが私には友達が居ない。

「それよりも、先生なんでしょ?。
 生徒向けのレンタル工房を四日ほど借りたいんだけど」
「君は受付の話を聞いていたか? 生徒に貸し出せる期間は二日だ。
 それ以上貸し出すと、何作るかわからん奴が多いからな」
「じゃぁ、時間かかる物はどうするのよ! どうしても使いたいんですけど」

 私の作る予定の『もっと魔よけの香』は、調合に四日かかる。
 強い魔物には効かないらしいけど、市販の奴よりは強力に出来る、たぶん。
 腕を組んだディーオ……先生。
 心の中ではディーオでいいか、彼は口元へ手をあて始めた。

「長く使いたい場合は個人の工房などだな……よしっ!
 いいか、先方の工房で変な態度はしないと約束できるなら紹介状を書いてやろう」
「別に変な態度はとりませんけどー」
「ふむ、彼からの噂は本当らしいな。一時間ほどまて相手の工房主に連絡を取る。
 許可が下りたら紹介状を渡そう」

 ディーオは、すたすたと私から離れていった。
 いや、それよりも噂って何よ。
 あっ金貨返すの忘れてたわ。 
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