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#9 なんかだんだん腹が立ってきたので

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「あんなものがおでましになっては我々の世界は終わりだ。命に代えても止めねばならん」
「だが、どうする」
 アーネストとフレイグがオーディンの目的について考えていたところ、同じことに気づいたのだろう、討伐隊の人間たちがやってきてアーネストたちに協力を求めた。協力も何もアーネストはもともと討伐隊の一員だったのだが、ここでつっこんでも仕方がない。アーネストは彼らの申し出に感謝を述べた。
 が、相手はあのオーディンである。魔法使いが肩をすくめた。味方であれば最も強力であっただろう彼の戦力の要である杖は、アーネストが破壊してしまっている。

「一国、いや連合軍をむけたとしても無理だろうな。それこそ陸地という陸地を墓で埋め尽くすことになるだろう」
「一つ確認したいことがあるのだが」

 フレイグが忙しく治療してまわるのを見、アーネストは口を開いた。フレイグの案で彼の母親の実家である妖精の森へ応援を頼んだので、こちらはまもなく解決することになりそうだ。
 アーネストは視線を戻す。
「法王様がオーガの一部と内通していたことを貴殿らは知っているのか?」
「ああ」
 答えたのは魔法使いだった。
「魔王城までの門は5つ。魔物のなかでもこと戦闘に特化したオーガを手に入れることができれば大いに我らの戦果は伸びよう。もっとも、半分は失敗に終わったが」
「大本命だった門を統べるオーガの長にフラれちまったのさ」
 魔法使いの言葉を長剣の男が補足した。アーネストは小首をかしげる。

「門を統べるオーガの長? ボルドルどののことか?」
「ボルドル? 今暴れてるオーガの事?」
「いや、それはオーディン――あそこにいる彼の父君の名だ。そうすると貴殿らが直接交渉をしたわけではないのだな」

 少なくとも名と顔を知らなければ情報の交換はできない。なるほど、とアーネストは内心でうなずいた。不毛としか見ていなかったが「討伐隊」派遣にはオーガ側の味方を増やす目的もあったのかもしれない。
「なんだ。変な顔をして?」
 ふと討伐隊の面々がおかしな表情をしていることに気づいてアーネストはたずねる。代表して長剣の男が答えた。
「手懐けるってやつ、でまかせじゃなくて正式に預けてた方がよかったかもなって思ってさ。短い間にずいぶん奴さんらにくわしくなってるじゃん。あいつがもしこっちについてたら魔王城まで余裕だっただろうに」
「どうかな」
 アーネストは腰を上げた。どこへ行くのだと問われるのへ、アーネストは視線でニールを示す。濡れて重くなった羽から雨粒を落とすようにニールがぶるぶると全身をふるわせていた。

「ニールが戻ってきた。私は行く」
「だからどこへだよ」

 アーネストはねぎらうようにニールの首筋を撫でる。決まっている。答えて笑う。
「オーディンのもとへ、だ」

 
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