Fragaria

石蜜みかん

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過去編

前日譚-2 晴斗

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 大人の定義、という曖昧な話題から、健全な青少年が連想するであろう方向に意識が向くのは、さほど不自然ではない、と思う。

「ひかる、キスしたことある?」

 話の流れでついそんなことを訊いてしまったのは、自身の願望の表れだったろうか。

 ただ、自分たちは幼馴染で、しかも同性で。
 お互いをそういった対象として意識するには、まだいくつかの壁が存在しているのも事実だった。

「一応あります、けど。カウントしていいものなのか」

「どういうこと?」

 意味深な言葉に、すこしの嫉妬と好奇心が頭をもたげる。
 
「その、相手が……スバルなんで」

「はあ!?」

 てっきり母親とかそんなところだろう、と思っていた晴斗は、意外な返答にぽかんとくちを開けたまま固まった。

「なんか、その、成り行きで」

 なぜか顔を赤くしてうつむいた晶の姿に、まさか、という考えがよぎる。

「それって、キスだけ、だよね?」

「あー、まあ、」

 目を泳がせて言い淀んだその様子に、晴斗は図らずも確信を得てしまった。

 まさか、相手が半分とはいえ血の繋がった男兄弟だとは。しかも晶の態度をみるに、おそらくキス以上のこともしているに違いない。

 これは由々しき事態だ、親友を正しい道に戻さなければ、と妙な使命感に燃えた晴斗は、なぜか先程からもじもじしている晶の両肩をがっしりと掴んだ。

「でも、セックスはまだだよね?」

 驚いて見上げてくる顔に、ずっとこころの奥で燻っていた感情が炙り出されてゆく。

 突然の展開に言葉を失ったのか、晶は目を丸くしたままじっと晴斗を見つめているばかりだ。

 半開きになったくちびるに視線が吸い寄せられ、誘われるように指でたどると、ぴくりと触れた肩が震える。

「ハルトさんは……したい、ですか。おれと」

 戸惑ったような表情。だがその声音のなかに、なぜか拒絶の色はみつけられなかった。
 そのうえ、羞恥で紅く染まった目尻のせいか、晶の姿はいつも以上に艶っぽく映る。

「ずっと思ってた。お前のこと、抱きたいって」

 果たしてこれが正道であるかという疑問もなきにしもあらずだし、なんだか間違った手順を踏んでいるような気がしないでもない。
 だが、いざ彼を目の前にしてしまうと、それはほんの些細な問題であるかのように感じられてくる。

 そっと顎を持ち上げれば、ゆっくりと閉じられるまぶた。

 はじめて触れたくちびるは、ほんのすこしだけ、ほろ苦いような気がした。
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