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第8話 ドラキュラ
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私は毎回トイレに行くと思うことがある。他の人がどう思っているのかも気になるのでその話を十佳にすることにした。だから急遽ファミレスに十佳を呼び出したものの、十佳は少々不満そうな表情を見せている。
「あんた、今何時だと思ってんのよ」
「何時とは? 」
「夜の10時よ。お互い家が近いとはいえ、こんな時間に呼び出されるのは迷惑なのよ」
不満な原因は時間のことか、親友が困っている時に時間にこだわるなんてそれでも親友なのか。
「で、話って何? 」
「そうそう、話ってのはな。トイレする時さ、パンツとか自分でおろすの面倒じゃない? 」
「……は?」
「それで、勝手にパンツやらを脱がしてくれる人が欲しくなるよねって話」
「嘘でしょ? 」
嘘などついてどうする十佳。私は真剣に話しているのに。
「そんな話をするためにわざわざ呼び出したの。電話すれば済むじゃない」
分かってないな~電話ではお互いの表情を読み取れなかったり、ながら電話する場合も考えられるから嫌なんだよ。
「で? どうなの十佳は」
「人にパンツを下ろされるって嫌じゃない? 」
「機械が下ろしてくれる場合にはイレギュラーにより下ろせなかったりするかもよ。それに対して人なら的確に下ろしてくれるから嫌な気はしないけど? 」
「あんたは介護されたいの? それにトイレでパンツを下ろすためだけに雇える人なんていないわよ」
「十佳はどう? 私のパンツ下ろしに……」
「テメェのパンツを下ろしたくないわ。本当に絶交するわよ」
自分でも認めよう、くだらない話をしていたと。
私達はフライドポテトとパフェを注文した。待ち時間の間、十佳はイライラした表情が止まらない。
「注文した食べ物が運ばれてこないだけでそこまでイライラするなんてお前ひょっとして虫歯か?」
「違うわよ。あんたの右斜め後ろの席」
十佳に言われ、一体何に苛ついているのかと振り返ってみる。
男と女が公共の場で堂々といちゃついている。
「ね、不謹慎でしょ。それにあの子、あんたと同じクラスよ。確か磯貝さん、知ってるガヤ? 」
「なんだと、同じクラス? 磯貝? 知らん……公共の場で羨ましすぎるぜよ」
「羨ましがってんじゃないわよ」
他人がイチャつこうが正直私には興味がないので、視線を再びメドゥーサこと親友の十佳に向けようとした時……私は見た。
磯貝の向かいに座っていた男が磯貝の横に移動すると、首にかぶりつくようにキスをしている……いやらしい、いやらしすぎると言いたかったが、あれは違う。あれは血を吸われてる。
今は夜。そうあの男はドラキュラに違いない。十佳は同級生に大人な彼氏がいて羨ましくて妬いているだろうが、仮にも私のクラスメイトなのだから救ってあげなければいけないじゃないかと私の正義が目覚めた。
私に出来る唯一の方法は……。
「店員さん、このガーリックトーストをニンニク多めで」
「は~い、かしこまり~」
「え? 何、あんたパフェとフライドポテト頼んでいるのにまだ食べるの」
「私は磯貝を救ってやらねばならんのだ。大して話したことは無くてもクラスメイトなら助けてあげなきゃ可哀想だろ? 」
「そもそもなんで助けるのよ。イチャついているだけじゃん」
十佳よ、お前の目は節穴か。あんな首元に吸い付くのはドラキュラくらいだろ普通。これ以上は十佳と話をしていても理解しないだろうから、わざわざドラキュラ退治の説明を語らずとも良いだろう。私1人で退治してくれる。
「お持たせしました。ニンニク多めのガーリックトーストでございま~す」
運ばれてきたニンニクトーストを私は口一杯に詰め込んでいく。口腔内は程よい固さのトーストにより所々裂傷し、鉄の味も混じる。今にも溢れんばかりのニンニクトーストを含んだまま私はドラキュラの元へ走った。
「さあ、今宵は貴様の生き血を私に捧げよ」
「いや~助けてくださいませ~」
「待ちなさい、私のクラスメイトに手を出すんじゃない」
「誰だ貴様は」
「だからクラスメイトだ」
「……藤ヶ谷さん、助けに来てくれたのね」
「今から助けてやるからな」
磯貝はがっちりとドラキュラにホールドされて身動きがとれないようだ。
十字架や太陽光を当てることが出来るのであればもっと簡単ではあったが、現時点で出来る最善の方法でドラキュラを倒す。
「なんなんだよお前。何も喋らずにこえーよ」
「……」
磯貝には悪いが取りあえずドラキュラと一緒にガーリックトーストを吹きかけさせてもらった。
「ぶっふぁああ~」
「うあぁ~~~何だよ。いきなり」
ドラキュラに会心の一撃を与えることが出来た。ドラキュラは苦しそうに慌ててトイレの方へと逃げて行った。ニンニク臭と私の唾液により若干その場は臭かったが磯貝を守ることが出来て良かった。私は満足して席に戻ると十佳に強制的に連れ出されファミレスを後にした。
「あんた、絶対に磯貝さんに殺されるわね」
「何故だ? 私はドラキュラを退治しただけなのに」
「勝手に妄想して、相手の彼氏に失礼なことしたんだから。明日、謝っておきなさいよ」
……無念。結局、パフェとフライドポテトも食べ損ねた。
――翌日
朝早くから登校し、席に座り、額に出来たかさぶたを取っている所に磯貝が現れた。昨日、十佳は磯貝が私を殺害しに来ると言っていたのを思い出した。咄嗟に逃げようと席を立ち、逃げることを私は選択した。逃げることは恥では無い。
「待って、藤ヶ谷さん」
「……」
「昨日はありがとうね」
……ドラキュラを退治した事に感謝をしてくれているでいいんだよな? でもこれは罠で油断させておいてザスッと真っ二つに切られるかもしれん。
「け、結局は私の妄想に過ぎなかったらしい。許してくださいませ」
私はもう一度「ごめん」とだけ言って走り去った。結局は授業が始まるのでまたすぐに戻ってくるのだけど。
その後、磯貝は特に私に話しかけてこなかったが、同じ教室でお弁当を食べる気になれず十佳と共に屋上で食べた。
「あんたの妄想もたまには役に立つこともあるのね」
「なんの話をしている? 」
「磯貝さん、あの男に強引に迫られて困っていたみたいだけど、あんたのおかげで助かったんだってさ」
「……やっぱり本物のドラキュラだったのか」
「磯貝さん、あんたと友達になりたいって言ってたわよ」
最近、友達が立て続けにできるけど……モテ期か何かかな? だが、去る者は追わず来る者は拒まずなので問題はないけどね。
「あんた、今何時だと思ってんのよ」
「何時とは? 」
「夜の10時よ。お互い家が近いとはいえ、こんな時間に呼び出されるのは迷惑なのよ」
不満な原因は時間のことか、親友が困っている時に時間にこだわるなんてそれでも親友なのか。
「で、話って何? 」
「そうそう、話ってのはな。トイレする時さ、パンツとか自分でおろすの面倒じゃない? 」
「……は?」
「それで、勝手にパンツやらを脱がしてくれる人が欲しくなるよねって話」
「嘘でしょ? 」
嘘などついてどうする十佳。私は真剣に話しているのに。
「そんな話をするためにわざわざ呼び出したの。電話すれば済むじゃない」
分かってないな~電話ではお互いの表情を読み取れなかったり、ながら電話する場合も考えられるから嫌なんだよ。
「で? どうなの十佳は」
「人にパンツを下ろされるって嫌じゃない? 」
「機械が下ろしてくれる場合にはイレギュラーにより下ろせなかったりするかもよ。それに対して人なら的確に下ろしてくれるから嫌な気はしないけど? 」
「あんたは介護されたいの? それにトイレでパンツを下ろすためだけに雇える人なんていないわよ」
「十佳はどう? 私のパンツ下ろしに……」
「テメェのパンツを下ろしたくないわ。本当に絶交するわよ」
自分でも認めよう、くだらない話をしていたと。
私達はフライドポテトとパフェを注文した。待ち時間の間、十佳はイライラした表情が止まらない。
「注文した食べ物が運ばれてこないだけでそこまでイライラするなんてお前ひょっとして虫歯か?」
「違うわよ。あんたの右斜め後ろの席」
十佳に言われ、一体何に苛ついているのかと振り返ってみる。
男と女が公共の場で堂々といちゃついている。
「ね、不謹慎でしょ。それにあの子、あんたと同じクラスよ。確か磯貝さん、知ってるガヤ? 」
「なんだと、同じクラス? 磯貝? 知らん……公共の場で羨ましすぎるぜよ」
「羨ましがってんじゃないわよ」
他人がイチャつこうが正直私には興味がないので、視線を再びメドゥーサこと親友の十佳に向けようとした時……私は見た。
磯貝の向かいに座っていた男が磯貝の横に移動すると、首にかぶりつくようにキスをしている……いやらしい、いやらしすぎると言いたかったが、あれは違う。あれは血を吸われてる。
今は夜。そうあの男はドラキュラに違いない。十佳は同級生に大人な彼氏がいて羨ましくて妬いているだろうが、仮にも私のクラスメイトなのだから救ってあげなければいけないじゃないかと私の正義が目覚めた。
私に出来る唯一の方法は……。
「店員さん、このガーリックトーストをニンニク多めで」
「は~い、かしこまり~」
「え? 何、あんたパフェとフライドポテト頼んでいるのにまだ食べるの」
「私は磯貝を救ってやらねばならんのだ。大して話したことは無くてもクラスメイトなら助けてあげなきゃ可哀想だろ? 」
「そもそもなんで助けるのよ。イチャついているだけじゃん」
十佳よ、お前の目は節穴か。あんな首元に吸い付くのはドラキュラくらいだろ普通。これ以上は十佳と話をしていても理解しないだろうから、わざわざドラキュラ退治の説明を語らずとも良いだろう。私1人で退治してくれる。
「お持たせしました。ニンニク多めのガーリックトーストでございま~す」
運ばれてきたニンニクトーストを私は口一杯に詰め込んでいく。口腔内は程よい固さのトーストにより所々裂傷し、鉄の味も混じる。今にも溢れんばかりのニンニクトーストを含んだまま私はドラキュラの元へ走った。
「さあ、今宵は貴様の生き血を私に捧げよ」
「いや~助けてくださいませ~」
「待ちなさい、私のクラスメイトに手を出すんじゃない」
「誰だ貴様は」
「だからクラスメイトだ」
「……藤ヶ谷さん、助けに来てくれたのね」
「今から助けてやるからな」
磯貝はがっちりとドラキュラにホールドされて身動きがとれないようだ。
十字架や太陽光を当てることが出来るのであればもっと簡単ではあったが、現時点で出来る最善の方法でドラキュラを倒す。
「なんなんだよお前。何も喋らずにこえーよ」
「……」
磯貝には悪いが取りあえずドラキュラと一緒にガーリックトーストを吹きかけさせてもらった。
「ぶっふぁああ~」
「うあぁ~~~何だよ。いきなり」
ドラキュラに会心の一撃を与えることが出来た。ドラキュラは苦しそうに慌ててトイレの方へと逃げて行った。ニンニク臭と私の唾液により若干その場は臭かったが磯貝を守ることが出来て良かった。私は満足して席に戻ると十佳に強制的に連れ出されファミレスを後にした。
「あんた、絶対に磯貝さんに殺されるわね」
「何故だ? 私はドラキュラを退治しただけなのに」
「勝手に妄想して、相手の彼氏に失礼なことしたんだから。明日、謝っておきなさいよ」
……無念。結局、パフェとフライドポテトも食べ損ねた。
――翌日
朝早くから登校し、席に座り、額に出来たかさぶたを取っている所に磯貝が現れた。昨日、十佳は磯貝が私を殺害しに来ると言っていたのを思い出した。咄嗟に逃げようと席を立ち、逃げることを私は選択した。逃げることは恥では無い。
「待って、藤ヶ谷さん」
「……」
「昨日はありがとうね」
……ドラキュラを退治した事に感謝をしてくれているでいいんだよな? でもこれは罠で油断させておいてザスッと真っ二つに切られるかもしれん。
「け、結局は私の妄想に過ぎなかったらしい。許してくださいませ」
私はもう一度「ごめん」とだけ言って走り去った。結局は授業が始まるのでまたすぐに戻ってくるのだけど。
その後、磯貝は特に私に話しかけてこなかったが、同じ教室でお弁当を食べる気になれず十佳と共に屋上で食べた。
「あんたの妄想もたまには役に立つこともあるのね」
「なんの話をしている? 」
「磯貝さん、あの男に強引に迫られて困っていたみたいだけど、あんたのおかげで助かったんだってさ」
「……やっぱり本物のドラキュラだったのか」
「磯貝さん、あんたと友達になりたいって言ってたわよ」
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