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第二章
第55話 前作主人公おじさん、勇者の女の子に魔法を教える①
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レベッカとの一戦から一日開けた朝。
天気は快晴! まさに畑仕事日和といった今日この頃。サブロウは未だ寝室の布団の中に包まっていた。
すると唐突に、玄関の開く音が聞こえてくる。
暫く下の階で何やら探すような物音が鳴り、一旦静まると、今度はドタドタと階段を上がってくる足音が徐々に近づき、そして――
「ちょっと、サブロウくん! いつまで寝てんのよ⁉ もうすぐ勇者ちゃんたちが来るってのに‼」
勢い良く扉を開けて、颯爽登場! 天界美少女たるリリスが降臨なさった。
実家のオカンが如きモーニングコールに、サブロウは堪らず己が耳を塞がんと布団を被ってしまう。
「なーに無視してんのよッ! 早く起きな――さいッ‼」
リリスによって強引に布団を剥がされた結果、やっとこさ胎児のように丸まっていたサブロウがお披露目になる。
「だってぇ~……やる気出ないんだも~ん……」
「自分で蒔いた種でしょうが⁉ いいから早く準備なさいッ‼」
怒号を飛ばすリリスに違和感を覚えたサブロウは、眠気眼のまま上体を半分起こす。
「え……っていうか、何で君はそんなにやる気なの? 昨日まで結構否定的だったじゃない?」
「そうよ? でも、どっかの誰かさんが後先考えずに彼女たちを助けちゃうから、私も作戦を改めざるを得なかったのよ!」
またよからぬことでも考えているのだろう……そう思ったサブロウは溜息をつき、「作戦って……?」と気だるげに問う。
「本来、彼女たちは主人公を目指す私たちにとって障害となりうる存在。でも今は魔法を教えてもらう側の存在になったの。教えるのはサブロウくん、アナタなの! つまり、主人公として羽ばたかせるか、一ヒロインとして留めておくかは、こちらの自由‼ 幸い彼女たちは可愛いから、ヒロインとして申し分ないわ! だから、サブロウくん! 彼女たち三人纏めてヒロインにしちゃいなさい! 惚れさせるの! そうすれば自ずと主人公の看板は我が手に……フッハッハッハッハッ‼ 我が大計の前に散るがいいッ‼」
羽扇からビームでも出しそうな高笑いと共に豊かな胸を張るリリス。
対するサブロウはというと……また蹲っていく。
「夢は人を大きくする。良い方にも悪い方にもね? だから、あまり過度な期待はしない方がいい。じゃ、僕はもう一眠り……」
「その夢をかなえるのがサブロウくんの役目よ。ハイ、【場面転換】♪」
リリスはパチンと手を叩いたのち、アヘ顔ダブルピースで強引に空間と展開を捻じ曲げた。
◆
気付くとサブロウは一階のソファーに座っていた。
先程まで寝間着だったにもかかわらず、今はいつもの一張羅にコスチュームチェンジ。もはや最強の力と言っても過言ではないな。
「さあ、サブロウくん。そのお花、さっさと解除しちゃいなさい。じゃないと勇者ちゃんたち、いつまで経っても来れないでしょう?」
目の前に御座すリリスは腕を組んだまま、蕾の開いた昇華のModel-Oを指差す。
どうやら妨害工作もバレていたらしく、サブロウは昇華に向けて指をクイクイッとすると、観念したかのように蕾が閉じていく。
「ハァ~……」
盛大な溜息と共に項垂れるサブロウ。
その姿にリリスも呆れたように溜息をつく。
「サブロウくん……あなた、よっぽど嫌なのね?」
「ああ、嫌だね……。そもそも僕は、そういうのが嫌だから、一人森の中で暮らしてたことを今さっき思い出したよ。スローライフ気取りしてるのだって、それを隠す為の口実だし……。ハハッ……やっぱ、主人公ってのは凄いんだね。僕には向いてないよ……」
ここまでサブロウが弱音を吐くのも珍しい。さらっとぶっちゃけてるところがまさにそう。
「大丈夫よ、サブロウくん。貴方はちゃんと主人公になれるわ。私が居るんだもの」
どうやらリリスも同じことを思っていたらしく、いつになく優し気に問いかけていた。
「そう。僕は君さえ居てくれれば、それでよかったんだ。クソどうでもいいこと喋って、クソどうでもいい案件に付き合わされて、クソどうでもよく一緒に食事をする。ただ、それだけで……」
「そんな後ろ向きな告白されたの初めてだわ。あとアレよ、サブロウくん? あんま人との思い出を、クソどうでもいいとか言わない方がいいわよ? 普通に傷つくから……」
目のハイライトが消え、若干ショックを受けるリリス。
そんな彼女を助けんと、ナイスなタイミングで扉がノックされる。
『こんにちわー、サブロウさーん! 起きてますかー?』
扉の向こうから聞こえてきたのは明芽の声。どうやら迷わずに到着できたようだ。
「漸く来たみたいね。さあ、行きなさい、サブロウくん。誰かの為じゃない、あなた自身の願いのために」
「いや、だから僕は行きたくないんだけど……。って、言い訳してももう遅いか……」
サブロウも漸く観念し、重い腰を上げては扉の前へと牛歩していく。
頑張れサブロウ。主人公にはならなくていい。せめて前作主人公っぽい感じで、己が生き様を後世に伝えるのだ。
天気は快晴! まさに畑仕事日和といった今日この頃。サブロウは未だ寝室の布団の中に包まっていた。
すると唐突に、玄関の開く音が聞こえてくる。
暫く下の階で何やら探すような物音が鳴り、一旦静まると、今度はドタドタと階段を上がってくる足音が徐々に近づき、そして――
「ちょっと、サブロウくん! いつまで寝てんのよ⁉ もうすぐ勇者ちゃんたちが来るってのに‼」
勢い良く扉を開けて、颯爽登場! 天界美少女たるリリスが降臨なさった。
実家のオカンが如きモーニングコールに、サブロウは堪らず己が耳を塞がんと布団を被ってしまう。
「なーに無視してんのよッ! 早く起きな――さいッ‼」
リリスによって強引に布団を剥がされた結果、やっとこさ胎児のように丸まっていたサブロウがお披露目になる。
「だってぇ~……やる気出ないんだも~ん……」
「自分で蒔いた種でしょうが⁉ いいから早く準備なさいッ‼」
怒号を飛ばすリリスに違和感を覚えたサブロウは、眠気眼のまま上体を半分起こす。
「え……っていうか、何で君はそんなにやる気なの? 昨日まで結構否定的だったじゃない?」
「そうよ? でも、どっかの誰かさんが後先考えずに彼女たちを助けちゃうから、私も作戦を改めざるを得なかったのよ!」
またよからぬことでも考えているのだろう……そう思ったサブロウは溜息をつき、「作戦って……?」と気だるげに問う。
「本来、彼女たちは主人公を目指す私たちにとって障害となりうる存在。でも今は魔法を教えてもらう側の存在になったの。教えるのはサブロウくん、アナタなの! つまり、主人公として羽ばたかせるか、一ヒロインとして留めておくかは、こちらの自由‼ 幸い彼女たちは可愛いから、ヒロインとして申し分ないわ! だから、サブロウくん! 彼女たち三人纏めてヒロインにしちゃいなさい! 惚れさせるの! そうすれば自ずと主人公の看板は我が手に……フッハッハッハッハッ‼ 我が大計の前に散るがいいッ‼」
羽扇からビームでも出しそうな高笑いと共に豊かな胸を張るリリス。
対するサブロウはというと……また蹲っていく。
「夢は人を大きくする。良い方にも悪い方にもね? だから、あまり過度な期待はしない方がいい。じゃ、僕はもう一眠り……」
「その夢をかなえるのがサブロウくんの役目よ。ハイ、【場面転換】♪」
リリスはパチンと手を叩いたのち、アヘ顔ダブルピースで強引に空間と展開を捻じ曲げた。
◆
気付くとサブロウは一階のソファーに座っていた。
先程まで寝間着だったにもかかわらず、今はいつもの一張羅にコスチュームチェンジ。もはや最強の力と言っても過言ではないな。
「さあ、サブロウくん。そのお花、さっさと解除しちゃいなさい。じゃないと勇者ちゃんたち、いつまで経っても来れないでしょう?」
目の前に御座すリリスは腕を組んだまま、蕾の開いた昇華のModel-Oを指差す。
どうやら妨害工作もバレていたらしく、サブロウは昇華に向けて指をクイクイッとすると、観念したかのように蕾が閉じていく。
「ハァ~……」
盛大な溜息と共に項垂れるサブロウ。
その姿にリリスも呆れたように溜息をつく。
「サブロウくん……あなた、よっぽど嫌なのね?」
「ああ、嫌だね……。そもそも僕は、そういうのが嫌だから、一人森の中で暮らしてたことを今さっき思い出したよ。スローライフ気取りしてるのだって、それを隠す為の口実だし……。ハハッ……やっぱ、主人公ってのは凄いんだね。僕には向いてないよ……」
ここまでサブロウが弱音を吐くのも珍しい。さらっとぶっちゃけてるところがまさにそう。
「大丈夫よ、サブロウくん。貴方はちゃんと主人公になれるわ。私が居るんだもの」
どうやらリリスも同じことを思っていたらしく、いつになく優し気に問いかけていた。
「そう。僕は君さえ居てくれれば、それでよかったんだ。クソどうでもいいこと喋って、クソどうでもいい案件に付き合わされて、クソどうでもよく一緒に食事をする。ただ、それだけで……」
「そんな後ろ向きな告白されたの初めてだわ。あとアレよ、サブロウくん? あんま人との思い出を、クソどうでもいいとか言わない方がいいわよ? 普通に傷つくから……」
目のハイライトが消え、若干ショックを受けるリリス。
そんな彼女を助けんと、ナイスなタイミングで扉がノックされる。
『こんにちわー、サブロウさーん! 起きてますかー?』
扉の向こうから聞こえてきたのは明芽の声。どうやら迷わずに到着できたようだ。
「漸く来たみたいね。さあ、行きなさい、サブロウくん。誰かの為じゃない、あなた自身の願いのために」
「いや、だから僕は行きたくないんだけど……。って、言い訳してももう遅いか……」
サブロウも漸く観念し、重い腰を上げては扉の前へと牛歩していく。
頑張れサブロウ。主人公にはならなくていい。せめて前作主人公っぽい感じで、己が生き様を後世に伝えるのだ。
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