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序章
第22話 奴隷商人が来てるらしいけど、毎回可愛い女の子とは限らない④
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奴隷市場を真っ直ぐ通り抜けた二人。
ただ今、絶妙な気持ちのまま反省会が催される。
「可愛……かったわね……」
絞り出すようにそう言ったのはリリス。
「まあ……可愛くは……あったよ……」
サブロウも端的に返していく。
歯切れの悪い二人。微妙な空気が流れる中、口火を切ったのはホストであるリリスだった。
「男の娘……だったわね……」
「そう……だね……」
そう。サブロウたちが来たのは『ザ・春の男の娘フェア』と大々的に看板が掲げられる、一風変わった奴隷市場だったのだ。
それだけデカデカと掲げられてるのに直ぐに気付かなかったのは、周りにいた男の娘たちのクオリティが高かったせいであろう。あの子もその子も粒ぞろいだ。
しかし、よくよく見れば檻に張り付けられているラベルには、表示法だか何だかの影響からか、『男の娘』という肩書がしっかりと刻み込まれていた。
っていうか、そもそもパンツをおっぴろげにされたら誰だって見るし、下腹部が『もっこり』しているのだって誰だって気付く。
結果、そのことに気付いた二人は仲良く目が死んだまま、男の娘たちの視線を浴びつつ、ワインディングロードを歩くことになった……というのが今回のお話。
「まあ、ホント女の私から見ても可愛かったし、ヒロインの中に一人くらい、そういうキャラが居るのは全然構わないんだけどさ。ただ、その……一人目に迎い入れるとなるとね? 色々、話が変わってきちゃうっていうかね?」
「……と言うと?」
サブロウは理解していたが、あえて分からないふりをした。
リリスという女はサブロウを伸し上げることに対して努力を惜しまない。
魔王軍の件にしても、お姫様の件にしても、今回の件にしても、リリスはいつでも誘う。サブロウという一人の男を立てる為に。
方向性はどうであれ、努力をする人間をサブロウは嫌わない。自分もそれなりにしてきた方だと自負しているからだ。
だから、恐らく今回の件も本当に知らなかったのだろう。なら、当の本人に全部吐き出させてやるのも優しさだとサブロウは考えたのだ。
「いや、ほら……一人目に迎え入れちゃったらさ? もう、そういう話じゃん? 他の女の子入る余地無くなるじゃん? ボーイズ的な話じゃん? でも、心は女の子だから違うかもしれないじゃん? そうなると結局、どっちだか分からなくなるじゃん? じゃん? じゃん……」
「わかった、もういい。もういいんだ……」
ショート寸前のリリスを止めたサブロウは、意外にも激励するように優しく肩に手を置いていた。
どれぐらい意外かというと、どこぞのおばさんがシチューではなく、カップラーメンで済まそうとしてくるくらい意外だった。
「ごめんなさい、サブロウくん。今回は完全に私の凡ミス……。ヒロインを代表して、お詫びに脱ぎたてのパンツを進呈するわ」
リリスは徐にスカートの中に手を入れ、腰本からパンツをずり下ろそうとする。
「いや……要らない。あんまり言いたかないけど、君さっきトイレ行ったばっかだろ? だから……要らない」
が、サブロウは断った。結構、傷つく形で……断った。
「大丈夫よ、サブロウくん……」
「……何がだい?」
風がふわりと吹き、揺れる髪を押さえながら、目の前に佇む儚げなヒロインはこう続ける。
「さっきのトイレ……う〇こだったから」
「なら、尚更言わないでくれ……」
ただ今、絶妙な気持ちのまま反省会が催される。
「可愛……かったわね……」
絞り出すようにそう言ったのはリリス。
「まあ……可愛くは……あったよ……」
サブロウも端的に返していく。
歯切れの悪い二人。微妙な空気が流れる中、口火を切ったのはホストであるリリスだった。
「男の娘……だったわね……」
「そう……だね……」
そう。サブロウたちが来たのは『ザ・春の男の娘フェア』と大々的に看板が掲げられる、一風変わった奴隷市場だったのだ。
それだけデカデカと掲げられてるのに直ぐに気付かなかったのは、周りにいた男の娘たちのクオリティが高かったせいであろう。あの子もその子も粒ぞろいだ。
しかし、よくよく見れば檻に張り付けられているラベルには、表示法だか何だかの影響からか、『男の娘』という肩書がしっかりと刻み込まれていた。
っていうか、そもそもパンツをおっぴろげにされたら誰だって見るし、下腹部が『もっこり』しているのだって誰だって気付く。
結果、そのことに気付いた二人は仲良く目が死んだまま、男の娘たちの視線を浴びつつ、ワインディングロードを歩くことになった……というのが今回のお話。
「まあ、ホント女の私から見ても可愛かったし、ヒロインの中に一人くらい、そういうキャラが居るのは全然構わないんだけどさ。ただ、その……一人目に迎い入れるとなるとね? 色々、話が変わってきちゃうっていうかね?」
「……と言うと?」
サブロウは理解していたが、あえて分からないふりをした。
リリスという女はサブロウを伸し上げることに対して努力を惜しまない。
魔王軍の件にしても、お姫様の件にしても、今回の件にしても、リリスはいつでも誘う。サブロウという一人の男を立てる為に。
方向性はどうであれ、努力をする人間をサブロウは嫌わない。自分もそれなりにしてきた方だと自負しているからだ。
だから、恐らく今回の件も本当に知らなかったのだろう。なら、当の本人に全部吐き出させてやるのも優しさだとサブロウは考えたのだ。
「いや、ほら……一人目に迎え入れちゃったらさ? もう、そういう話じゃん? 他の女の子入る余地無くなるじゃん? ボーイズ的な話じゃん? でも、心は女の子だから違うかもしれないじゃん? そうなると結局、どっちだか分からなくなるじゃん? じゃん? じゃん……」
「わかった、もういい。もういいんだ……」
ショート寸前のリリスを止めたサブロウは、意外にも激励するように優しく肩に手を置いていた。
どれぐらい意外かというと、どこぞのおばさんがシチューではなく、カップラーメンで済まそうとしてくるくらい意外だった。
「ごめんなさい、サブロウくん。今回は完全に私の凡ミス……。ヒロインを代表して、お詫びに脱ぎたてのパンツを進呈するわ」
リリスは徐にスカートの中に手を入れ、腰本からパンツをずり下ろそうとする。
「いや……要らない。あんまり言いたかないけど、君さっきトイレ行ったばっかだろ? だから……要らない」
が、サブロウは断った。結構、傷つく形で……断った。
「大丈夫よ、サブロウくん……」
「……何がだい?」
風がふわりと吹き、揺れる髪を押さえながら、目の前に佇む儚げなヒロインはこう続ける。
「さっきのトイレ……う〇こだったから」
「なら、尚更言わないでくれ……」
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