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第一章
第13話 不死の誓い
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――グググギギギッッッヴヴヴゥゥゥ――
――オオオッッッ……オレハ……シヌワケニワ……イカナイ‼――
「ククク……ここまでなるとは予想してなかったが……やはり俺の目に狂いはなかった……お前を選んで正解だったな……これで楽しみが増えた……」
――ヴヴッッ……オレニハ……ヤラナキャ……ナラナイコトガ――
「ククク……お前が覚醒した力……名付けるなら……『イロニーア』か……それでどこまでのし上がれるか……見させてもらうぞ……冥界でな……」
――ウウウッッッ……アァ……ウッ………………………………――
◆
「……ですか?」
何か……聞こえる……
「あ……大丈……すか?」
誰かの……呼ぶ声が……
「あの……大丈夫ですか?」
はっきりと聞こえてきた辺りで、オレはようやく意識を取り戻し始める。目を徐々に開けると日の光が差し込み、本来ならその眩しさに目を開けられないところだが、そうならなかったのは目の前に大きな山のようなものがあり、それが光をうまいこと遮断していたからだった。
「う~ん……あと九時間半~」
「いや、寝すぎです! あの~すみませんが、そろそろ起きてもらえませんか? 太ももが痺れてきたので……」
ん? 太もも……?
オレはそれを聞いた瞬間、上半身を勢いよく起こすと――ポヨンと頭に柔らかいものが当たる。
「――ひゃっ⁉」
オレはその可愛い声を発した主の方へと視線を向ける。
青みがかった程よい長さの髪に、クリっとした目の可愛い顔立ちをした女の子がそこにはいた……いたのだが! 問題はそこじゃない! 彼女の格好だよ! ノースリーブに大きな胸! しかもスカートの丈が短すぎて太ももが露わになっている! この世で一番ドエロな格好じゃないか! そして何より今、恥ずかしそうに胸を押えている! つまりさっき頭に当たった感触は……その……おっぱ……おぱおぱ……うゔっ……くうっ……!
「え⁈ 何で泣いているんですか?」
「すいません……つい嬉しくって……生きてて良かったなって……」
「あぁ、そうですよね。さっきまで死んだように意識がなかったですし……」
うん……多分考えてること違うと思うけど……
オレは涙をこぼしながら頭に当たった柔らかな感触に浸っていたが、しばらくして目の前の女の子の言っていた言葉が引っ掛かり、独り言のように呟きながら質問する。
「ん? 死んだように……?」
「はい……さっきまで意識がまるでなかったので、本当に死んでしまったのかと……」
……死んでいた……オレが?
言葉の意味を理解するのに幾分か時間を要したが、徐々にあの時の……自分が死んだときの記憶が蘇ってくる。
そうだ……オレ、あの魔物にやられちまったんだっけ。でもオレは今、こうして生きている……なんでだ? 確かあの時、首を掻っ切られて血がかなり噴き出していたはず。そう、周りに飛び散る程に……そう思いつつ周りを見渡すと、違和感が……いや、違和感どころではない。明らかにおかしなことに気付く。
「血が……ない?」
周りの地面や木々にも……それこそ殺害現場の如く飛び散ったはずの血が綺麗さっぱりなくなっていた。
オレはすぐさま斬られたはずの首元を手で触れる――が……無い……傷一つ……どうなってんだ?
「あの……大丈夫ですか? まだ体調がよろしくないのであれば、私の家で少し休んでいかれますか?」
オレが困惑しているのを察してか、心配そうに女の子が語りかけてくる。
「あ、あぁ……え? いいんですか?」
「はい、少しなら……」
まさに青天の霹靂。
こうして今まで鳴かず飛ばずだったオレは、誰とも知らない女の子の家に、いきなりお呼ばれされることになった。
フッ、また騙されてるって? いいのさ……そうやって男は成長していくんだ。
◆
女の子の家に行く道すがら、そういえばこの子のこと何も知らないなぁ……と思い、名前を尋ねてみる。
「そういえば君の名前はなんて言うんだい?」
「あっ、まだ言ってませんでしたね。私の名前はジーニアと申します」
「ジーニアちゃんか……うん、いい名前だ」
「ありがとうございます。貴方様のお名前はなんと申されるのでしょうか?」
「ああ、オレ? オレの名前は……」
いかん、そういえばオレ、名前覚えてないんだった。いい加減名前ないと不便だし……どうしよう?
「えーっと……その~……」
「ひょっとして、転生者の方ですか?」
「おお、そうなんだよ! だから自分の名前覚えてなくってさぁ」
「そうだったんですか。それだと、なんとお呼びしたらいいのでしょう?」
「う~ん、そうだなぁ……じゃあ、せっかくだからご主人様とかどうだろう?」
「あ! 着きましたよ。ここが私の家です」
スルーされたわ。ツッコんでくれないと、なんか恥ずかしいんだけど。
ジーニアちゃんに案内されて訪れた家……というよりは小屋と言った方が正しいくらいの、こじんまりとした住まいがそこにはあった。
「狭いところでよろしかったら、どうぞ」
「そんじゃあ失礼して……お邪魔しまーす」
家に入ると左手にはキッチンがあり、正面に進んで扉を開けると小さな部屋に通される。第一印象は……まあ、シンプルだな。これに尽きる。クローゼット、テーブル、ベットと必要最低限の物だけ置いてあり、寂しい感じもするが、小綺麗で清潔感があるいい部屋だ。
「私はお茶を入れてきますので、おくつろぎください」
「あ、どうもお構いなく」
ジーニアちゃんが扉を閉めて出て行ったことで、生まれるこの状況……そう! 今この部屋にいるのはオレ一人! オレはベッドに視線をロックオンするや否や、思いっ切りうつ伏せでダイブする!
「スーハ―……スーハ―……」
オレは深呼吸をする。何故って? そりゃあ自分が生きているかどうか確認する為さ。さっきまで死んでたっぽいからな。当然のことだ。
ちなみに断っておくが、これはくつろいでいるだけであり、決してよこしまな気持ちなどない。あの子がくつろげと言ったから、その通りにしているのであって、オレの島じゃこれが普通のくつろぎ方だ……いや、むしろ一番、礼儀作法がなっているスタイルと言っても過言ではない。
「――何……してるんですか?」
お茶を入れてきたであろうジーニアちゃんが、一気にトーンダウンした声で問うてくる……帰ってくるのがお早いこと。
「何で、ベッドに……」
「……くつろいでくれと……言われたので……」
沈黙……
今オレはうつ伏せになっているので彼女の表情はわからないが、恐らくドン引きしているのだろうということは察せる。女の子の些細な違いにも気付ける……オレはそんな男さ。
「とりあえず、ベットから降りてください」
「……ハイ」
オレはそそくさとベットから降り、近くのイスに腰掛けようとする。
「座らなくていいんで……出てってもらえますか?」
ジト目のジーニアちゃん。初めて会った時と随分印象が変わったなぁ……取りあえず言い訳を敢行してみるが……
「いや、違うんですよ」
「何が違うんですか?」
「なんだろうなぁ……まだ体の調子がよろしくないっていうか……それで倒れちゃったっていうか……ベッドにね、うつ伏せで。いや~、ベッドなかったら危なかったな~」
「本音は?」
「いやらしい気持ちでいっぱいでした」
「出てけ」
ダメだったわ。
「いやぁ~でも、オレ行くとこないから、このままだと路頭に迷うことになるんですよね。というわけで、もしよろしければでいいんで、泊めてもらったりは――」
「よくそんなセリフが出てきますね?」
冷めた態度の食い気味なツッコミに、負けじとオレも食らいつく。
「なんでもしますよ?」
「結構です」
「お背中とか流しますよ?」
「欲望丸出しじゃねえか」
うむ、この子は淡々とツッコむタイプだな……中々ボケ甲斐があっていい。
「まあ、冗談はこのくらいにしといて……」
「ハァ……何だか疲れますね。それで? 存在が冗談みたいな貴方は、これからどうするんですか? 行くところないって言ってましたけど」
「そうだなぁ……取りあえず魔物をブッ倒すところから始めるとするわ」
「どうして? 貴方は魔物にやられたんじゃ……」
「そりゃあ、倒しておかないとジーニアちゃんが危ないかもしれないだろ?」
今まで眉をひそめていたジーニアは、少しばかり穏やかな表情に変わる。
「そういうところは、しっかりしてるんですね」
「別に……やられっぱなしは趣味じゃねえだけさ」
「そうですか。でも、その必要はありません。あなたが寝ている間に『魔物は討伐された』という連絡がありましたので」
「そうなのか? なーんだ、カッコつけて損したわ。まあいいや、そういうことならもう行くわ。ありがとな、拾ってくれて!」
オレは片手をあげて別れの挨拶をしつつ、部屋を後にしようとするが「それなら、これを持っていってください」とジーニアに紙を渡される。
「ん……なんだこの紙は?」
「それは私の知り合いが働いている宿屋への地図です。名前は『ア・プレスト』。そこに行けば貴方の問題は解決されるでしょう」
「ふーん……まあ、ジーニアちゃんがそう言うなら行ってみるわ。ありがとよ! なんか困ったことがあったら言いに来な。すぐに飛んでいくからよ!」
「フッ……魔物にやられた癖に、そんな約束していいんですか?」
ジーニアのその言葉に、オレは帰る背中のまま答える。
「オレは一度やられても、二回目で必ず勝つ男だ」
「あら、そうなんですか?」
「ああ!……今、決めた!」
オレは振り返りながら笑顔で誓いを立て、宿屋を目指すべくジーニアの家を後にした。
◆
しばらく歩いて街道に出たあたりで、ジーニアに貰った地図を開いてみる。
「………………」
なんて言うんだろう……前衛的? 死んでから評価される絵ってあると思うけど、これはもう評価の対象外っていうか……これでわかったら天才っていうか……そもそも天才だったらこんなことになってないっていうか……まあ、そんな感じの絵が描いてあった。
「まあ……なんとかなんだろ……」
わりかしポジティブなはずのオレは空を仰ぎながら、幾分か不安な気分に駆られつつ街へ戻ることにした。
――オオオッッッ……オレハ……シヌワケニワ……イカナイ‼――
「ククク……ここまでなるとは予想してなかったが……やはり俺の目に狂いはなかった……お前を選んで正解だったな……これで楽しみが増えた……」
――ヴヴッッ……オレニハ……ヤラナキャ……ナラナイコトガ――
「ククク……お前が覚醒した力……名付けるなら……『イロニーア』か……それでどこまでのし上がれるか……見させてもらうぞ……冥界でな……」
――ウウウッッッ……アァ……ウッ………………………………――
◆
「……ですか?」
何か……聞こえる……
「あ……大丈……すか?」
誰かの……呼ぶ声が……
「あの……大丈夫ですか?」
はっきりと聞こえてきた辺りで、オレはようやく意識を取り戻し始める。目を徐々に開けると日の光が差し込み、本来ならその眩しさに目を開けられないところだが、そうならなかったのは目の前に大きな山のようなものがあり、それが光をうまいこと遮断していたからだった。
「う~ん……あと九時間半~」
「いや、寝すぎです! あの~すみませんが、そろそろ起きてもらえませんか? 太ももが痺れてきたので……」
ん? 太もも……?
オレはそれを聞いた瞬間、上半身を勢いよく起こすと――ポヨンと頭に柔らかいものが当たる。
「――ひゃっ⁉」
オレはその可愛い声を発した主の方へと視線を向ける。
青みがかった程よい長さの髪に、クリっとした目の可愛い顔立ちをした女の子がそこにはいた……いたのだが! 問題はそこじゃない! 彼女の格好だよ! ノースリーブに大きな胸! しかもスカートの丈が短すぎて太ももが露わになっている! この世で一番ドエロな格好じゃないか! そして何より今、恥ずかしそうに胸を押えている! つまりさっき頭に当たった感触は……その……おっぱ……おぱおぱ……うゔっ……くうっ……!
「え⁈ 何で泣いているんですか?」
「すいません……つい嬉しくって……生きてて良かったなって……」
「あぁ、そうですよね。さっきまで死んだように意識がなかったですし……」
うん……多分考えてること違うと思うけど……
オレは涙をこぼしながら頭に当たった柔らかな感触に浸っていたが、しばらくして目の前の女の子の言っていた言葉が引っ掛かり、独り言のように呟きながら質問する。
「ん? 死んだように……?」
「はい……さっきまで意識がまるでなかったので、本当に死んでしまったのかと……」
……死んでいた……オレが?
言葉の意味を理解するのに幾分か時間を要したが、徐々にあの時の……自分が死んだときの記憶が蘇ってくる。
そうだ……オレ、あの魔物にやられちまったんだっけ。でもオレは今、こうして生きている……なんでだ? 確かあの時、首を掻っ切られて血がかなり噴き出していたはず。そう、周りに飛び散る程に……そう思いつつ周りを見渡すと、違和感が……いや、違和感どころではない。明らかにおかしなことに気付く。
「血が……ない?」
周りの地面や木々にも……それこそ殺害現場の如く飛び散ったはずの血が綺麗さっぱりなくなっていた。
オレはすぐさま斬られたはずの首元を手で触れる――が……無い……傷一つ……どうなってんだ?
「あの……大丈夫ですか? まだ体調がよろしくないのであれば、私の家で少し休んでいかれますか?」
オレが困惑しているのを察してか、心配そうに女の子が語りかけてくる。
「あ、あぁ……え? いいんですか?」
「はい、少しなら……」
まさに青天の霹靂。
こうして今まで鳴かず飛ばずだったオレは、誰とも知らない女の子の家に、いきなりお呼ばれされることになった。
フッ、また騙されてるって? いいのさ……そうやって男は成長していくんだ。
◆
女の子の家に行く道すがら、そういえばこの子のこと何も知らないなぁ……と思い、名前を尋ねてみる。
「そういえば君の名前はなんて言うんだい?」
「あっ、まだ言ってませんでしたね。私の名前はジーニアと申します」
「ジーニアちゃんか……うん、いい名前だ」
「ありがとうございます。貴方様のお名前はなんと申されるのでしょうか?」
「ああ、オレ? オレの名前は……」
いかん、そういえばオレ、名前覚えてないんだった。いい加減名前ないと不便だし……どうしよう?
「えーっと……その~……」
「ひょっとして、転生者の方ですか?」
「おお、そうなんだよ! だから自分の名前覚えてなくってさぁ」
「そうだったんですか。それだと、なんとお呼びしたらいいのでしょう?」
「う~ん、そうだなぁ……じゃあ、せっかくだからご主人様とかどうだろう?」
「あ! 着きましたよ。ここが私の家です」
スルーされたわ。ツッコんでくれないと、なんか恥ずかしいんだけど。
ジーニアちゃんに案内されて訪れた家……というよりは小屋と言った方が正しいくらいの、こじんまりとした住まいがそこにはあった。
「狭いところでよろしかったら、どうぞ」
「そんじゃあ失礼して……お邪魔しまーす」
家に入ると左手にはキッチンがあり、正面に進んで扉を開けると小さな部屋に通される。第一印象は……まあ、シンプルだな。これに尽きる。クローゼット、テーブル、ベットと必要最低限の物だけ置いてあり、寂しい感じもするが、小綺麗で清潔感があるいい部屋だ。
「私はお茶を入れてきますので、おくつろぎください」
「あ、どうもお構いなく」
ジーニアちゃんが扉を閉めて出て行ったことで、生まれるこの状況……そう! 今この部屋にいるのはオレ一人! オレはベッドに視線をロックオンするや否や、思いっ切りうつ伏せでダイブする!
「スーハ―……スーハ―……」
オレは深呼吸をする。何故って? そりゃあ自分が生きているかどうか確認する為さ。さっきまで死んでたっぽいからな。当然のことだ。
ちなみに断っておくが、これはくつろいでいるだけであり、決してよこしまな気持ちなどない。あの子がくつろげと言ったから、その通りにしているのであって、オレの島じゃこれが普通のくつろぎ方だ……いや、むしろ一番、礼儀作法がなっているスタイルと言っても過言ではない。
「――何……してるんですか?」
お茶を入れてきたであろうジーニアちゃんが、一気にトーンダウンした声で問うてくる……帰ってくるのがお早いこと。
「何で、ベッドに……」
「……くつろいでくれと……言われたので……」
沈黙……
今オレはうつ伏せになっているので彼女の表情はわからないが、恐らくドン引きしているのだろうということは察せる。女の子の些細な違いにも気付ける……オレはそんな男さ。
「とりあえず、ベットから降りてください」
「……ハイ」
オレはそそくさとベットから降り、近くのイスに腰掛けようとする。
「座らなくていいんで……出てってもらえますか?」
ジト目のジーニアちゃん。初めて会った時と随分印象が変わったなぁ……取りあえず言い訳を敢行してみるが……
「いや、違うんですよ」
「何が違うんですか?」
「なんだろうなぁ……まだ体の調子がよろしくないっていうか……それで倒れちゃったっていうか……ベッドにね、うつ伏せで。いや~、ベッドなかったら危なかったな~」
「本音は?」
「いやらしい気持ちでいっぱいでした」
「出てけ」
ダメだったわ。
「いやぁ~でも、オレ行くとこないから、このままだと路頭に迷うことになるんですよね。というわけで、もしよろしければでいいんで、泊めてもらったりは――」
「よくそんなセリフが出てきますね?」
冷めた態度の食い気味なツッコミに、負けじとオレも食らいつく。
「なんでもしますよ?」
「結構です」
「お背中とか流しますよ?」
「欲望丸出しじゃねえか」
うむ、この子は淡々とツッコむタイプだな……中々ボケ甲斐があっていい。
「まあ、冗談はこのくらいにしといて……」
「ハァ……何だか疲れますね。それで? 存在が冗談みたいな貴方は、これからどうするんですか? 行くところないって言ってましたけど」
「そうだなぁ……取りあえず魔物をブッ倒すところから始めるとするわ」
「どうして? 貴方は魔物にやられたんじゃ……」
「そりゃあ、倒しておかないとジーニアちゃんが危ないかもしれないだろ?」
今まで眉をひそめていたジーニアは、少しばかり穏やかな表情に変わる。
「そういうところは、しっかりしてるんですね」
「別に……やられっぱなしは趣味じゃねえだけさ」
「そうですか。でも、その必要はありません。あなたが寝ている間に『魔物は討伐された』という連絡がありましたので」
「そうなのか? なーんだ、カッコつけて損したわ。まあいいや、そういうことならもう行くわ。ありがとな、拾ってくれて!」
オレは片手をあげて別れの挨拶をしつつ、部屋を後にしようとするが「それなら、これを持っていってください」とジーニアに紙を渡される。
「ん……なんだこの紙は?」
「それは私の知り合いが働いている宿屋への地図です。名前は『ア・プレスト』。そこに行けば貴方の問題は解決されるでしょう」
「ふーん……まあ、ジーニアちゃんがそう言うなら行ってみるわ。ありがとよ! なんか困ったことがあったら言いに来な。すぐに飛んでいくからよ!」
「フッ……魔物にやられた癖に、そんな約束していいんですか?」
ジーニアのその言葉に、オレは帰る背中のまま答える。
「オレは一度やられても、二回目で必ず勝つ男だ」
「あら、そうなんですか?」
「ああ!……今、決めた!」
オレは振り返りながら笑顔で誓いを立て、宿屋を目指すべくジーニアの家を後にした。
◆
しばらく歩いて街道に出たあたりで、ジーニアに貰った地図を開いてみる。
「………………」
なんて言うんだろう……前衛的? 死んでから評価される絵ってあると思うけど、これはもう評価の対象外っていうか……これでわかったら天才っていうか……そもそも天才だったらこんなことになってないっていうか……まあ、そんな感じの絵が描いてあった。
「まあ……なんとかなんだろ……」
わりかしポジティブなはずのオレは空を仰ぎながら、幾分か不安な気分に駆られつつ街へ戻ることにした。
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