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第二章 宝探し

第107話 優勝の波

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 モニタリング室――

「「「「おおおおおっ‼」」」」

 大和の優勝が決まり、一手に沸き立つ教員たち。

「まさか、ここまでやるとは……!」
「初めてじゃないですか? 優勝者出たの」
「いやぁ~、いいもの見せてもらったなぁ……!」

 だが、そんな中でも一番興奮していたのは……

「嘘でしょ⁉ うちのクラスが優勝⁉ やったやった! アハハハハっ!」

 クラスの担任である滝だった。

 滝はお返しと言わんばかりに、ガタイのいい体育教師の背中を叩き、「痛い痛い……」と苦笑いさせていたが、まったく気付かない。

「さすが大和くん。私の目に狂いはなかった……」

 片や平静を装うも、目元に狂気を滲ませる烏間。

(大和くん……まさか本当に優勝するとはね。正直、不正もいいところだけど、今回は見逃すわ。風紀委員も色々やってたみたいだしね……)

 景川はそう心の中で称賛しつつ、苦々しい面持ちを浮かべる風紀委員を横目で見遣った。



 『時戒室』――

「素晴らしい! なんと美しい勝利でしょう!」

 と、法悦な笑みを浮かべた不時之は席を立ち、今まで以上にバルーンスティックをポンポン叩く。さらに……

「しかし、指輪を付け替えたところを見るに、大和さんはだいぶに出たみたいですね~! この土壇場であのような行動を取れるとは……もう天晴れという他ありません! しかも――」
「あ、あのっ……理事長ぉッ……!」

 不時之が解説を続けようとしたところで、さすがにもう限界と、視線の定まらぬ佐藤がその手を止める。

 もはや涙や涎だけに留まらず、鼻水と冷や汗もダラダラと垂れる始末。あと尿意。
 もちろん吐き気も言わずもがななのだが……

「あら? どうかなさったのですか、佐藤先生。もしかしてトイレですか?」

 この理事長……まるで気付いていない。

「あ……もうそれでいいんでっ……! 外ぉ……外、出してくださぁいぃ……!」
「もう~……それならそうと言ってくださればいいのに! 我慢は身体によくありませんよ?」

 ブチィッ! と、額の血管から血が噴き出る佐藤。
 だが、その怒りはトイレにぶつけんと、佐藤はふらつく足取りで走り出し、『時戒室』からようやく――

「オロロロロロロロロロロロロロロロロロロォォ……‼」

 解放された。……昨夜、及び今朝食べたであろう献立と共に。

 その後、嘔吐物の上に浸っていた佐藤は、他の教員に見つけられたのち、病院へと搬送されることとなった。



 エリア⑫、南東――

 死屍累々の如く倒れた生徒の中心……ショート寸前の斎王は、景川による放送に笑みを零す。

「優勝……シタッ……カ……」



 エリア①――

 こちらも景川の放送を聞き、

「やった……大和くん、『永遠の指輪』を手に入れたんだ! 優勝したんだよ、手科さん!」

 そわそわと歩き回っていた画星は喜びを分かち合わんと、切り株にちょこんと座る手科へと詰め寄る。

「うん……よかった……」

 手科は笑みこそ浮かべなかったものの、小さく頷いていた。



 エリア⑤――

「凄いです、大和先輩! さすが我が部のエースです!」

 と、景川からの吉報に、ぴょんぴょん跳ね回る一ノ瀬。

「ふふっ……本当に大和くんは、いつでも私たちを助けてくれるね」

 橋本もだいぶ顔色がよくなり、どこか感慨深げに顔を綻ばせている。

 そして、このエリアを治める御門もまた……

「僕が手を貸したんです。これくらいしてもらわないと……」

 己が前を走る大きな背に賛辞を送った。



 エリア⑦――

 エリア⑥の捜索が終わり、エリア⑦を捜索していた牧瀬チーム。
 優勝の報せを受け、いの一番に声を上げたのは――

「え? 優勝……? やったぁぁああ! アイツ、勝ったんだわ! 牧瀬さん!」

 両手を上げ、体全体で喜びを表現する藤宮。
 そのまま両手を広げながら、牧瀬へと勢い良く抱きつく。

「は、はい! 本当に……本当によかった……!」

 喜びなのか『代償』なのか……恐らくどちらでもある涙に、牧瀬は声を詰まらせる。

 そんな女子二人の尊い光景の後方、

「やったなぁ、蛯原!」
「そうだな、相沢!」

 相沢と蛯原も優勝の喜びに肩を組んでいた。

「いやぁ~、まさか本当に優勝できるとはな!」
「ほんとだよ……。やっぱアイツは敵に回さない方がいいわ……」
「だなだな! こりゃあ、優勝を祝してもう一発行くっきゃないだろ!」
「ほんとほんと――って、え?」

 鳩に豆鉄砲が如き表情の蛯原を、またも有無を言わさず担ぐ相沢。

「よっしゃぁああああッ‼ もういっちょ、でっかい花火ィッ……!」
「ちょいちょいちょいちょい⁉ お前、わかってんのか⁉ もうスーツの耐久力ほとんど無いんだぞ⁉ 次やったら確実に死――」

 先ほどとは一転、ドタバタと暴れ出す蛯原。
 しかし、ひ弱な蛯原では抜け出すこと叶わず、敢え無く足から火花と煙が大量に噴射し始め、そして――

「咲かせたるわぁぁああああああああああああああああッッ‼」
「嫌だぁぁああああああああああああああああああああッッ‼」

 二人は再び『草創の森』上空へと飛んでいった。……どの花火よりも美しい、大輪を咲かせに。
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