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第二章 宝探し
第95話 喧嘩両成敗
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「やられてたまるかぁぁあああぁああぁあああッッ‼」
――が、なんと伍堂の倒れ込んだ先には、先ほど樫江田が座っていた切り株が。
それを鼬の最後っ屁が如く掴み、引っこ抜いては思いっ切り投げつける。
「ぐゔ――ッ⁉」
宙を舞っていた所為か回避ができず、見事、切り株がクリーンヒットしてしまう樫江田。
装着していたワイヤーは外れ、差していた日傘も手から零れ落ち、強烈な陽射しが……
「熱ゔ――ッ⁉」
樫江田の頭部は『代償』により急激に熱を帯び、焼け焦げるかのような痛みを前に頭を抱えだしてしまう。
「くっそぉぉおおッ! お前が卑怯な手ぇ使うから、一発で終わらせられなかったやんけェッ‼」
宙に巻き上げられる中、若干、気恥ずかしそうに頬を染める伍堂。
その怒りを背についていたワイヤ―にぶつけると、引き千切るや否や吸い込まれるように樫江田へと落ちていく。
伍堂は重力を味方につけながら拳を構えるも、幸か不幸かその体と太陽が一瞬重なり、樫江田の頭上に闇が訪れる。
その好機を見逃さず、樫江田も歯を食い縛りながら立ち、拳を振りかぶる。
「クソガキがぁあぁぁ……ッ! 勝つのは――」
「「ワシやぁぁああぁぁあああッッ‼」」
二つの雄叫びと共に放たれる拳――
互いにクロスカウンターを想定していたようだが、その策むなしく両者ともに頬へと拳が突き刺さる。
その衝撃で樫江田は地面を転がるように吹き飛ばされ、伍堂もふわりと宙を浮きながら程なくして地へと落ちていった。
互いに沈黙し、辺りは森閑と静まりかえ……と言いたいところだが、遠方から戦争でもしてるかの如き破壊音が轟いている。恐らく藤宮が暴れているだろうことは容易に想像できた。
うつ伏せの樫江田は、暫し痛みに顔を歪めたのち、己がスーツを見遣る。
『Turritopsis』の赤いラインは既に光を失っており、直後、デバイスには『DSQ』の文字が……
「くそっ……負けた、か……」
樫江田がそう零しつつ仰向けになると、視界には風に揺れる深緑の葉が何層にも広がっていた。
どうやら木陰まで吹き飛ばされたらしい……と、安堵の笑みを浮かべ、どこか吹っ切れたような顔で伍堂へと視線を移す。
「テメエの勝ちだよ、伍堂……。悔しいがな……」
樫江田が珍しく賞賛の言葉を贈ると、伍堂は……
「へっ……そりゃ、お前……こっちのセリフや」
と、うつ伏せのまま『DSQ』と表示されたデバイスを見せた。
◆
エリア⑦――
『……室田奏、世良修一、樫江田丈、伍堂出――失格者、41計名』
「伍堂が……失格……⁉」
己がデバイスを見下ろしながら、驚愕の面持ちを見せる大和。
さすがの大和もこの展開は予想していなかったようで、定まらぬ視線と共に左腕をゆっくり下ろしていた。
「伍堂くん、失格になったみたいだね」
相変わらず視界の外から姿を現す渡。
大して悲しむこともなく、どこか予想通りといったように、ポケットに手を突っ込んでいる。
「まさかアイツがやられるとはな……。樫江田はそこまでの奴だったのか?」
と、振り返る大和の眉間には、幾分か不服げなしわが寄っていた。
「今回はスーツがあるからね。耐久力を0にすれば、誰にだって勝ち筋はある。……あ、それよりもお探しの物、見つかったよ」
渡はそう言うとポケットから手を出し、大和のデバイスを指差す。
促された大和は今一度画面を覗くと、そこにはお助けアイテムであろう『フレアガン』の文字が。
「フレアガンか……」
「うん。普段は救難信号用で使うものだけど、今はあの葦原くんを探すのに打って付けじゃないかな?」
「フレアガンを打ち上げ、『幻視眼鏡』で奴の視界を盗み、その距離で位置を特定するってことか……。しかし、この鬱蒼とした森じゃ木々に隠れて目視できない可能性がある。確実性のある策とは言えんな」
「とはいえ、もう一時間切ってるんだ。他に策があるなら聞くけど?」
渡の言う通り、時刻はもう十一時を過ぎている。
ここからお目当てのアイテムを探す余裕はないだろう。無論、自力で見つけ出す時間も。
「わかったよ……。ま、お前が無駄なモン見つけてくるとも思えんしな。その策、乗ってやるよ」
大和は渡と笑みを交わすと、スクリーンをタッチし、左手にフレアガンを生成。迷わず頭上に向けて撃つと、耳に響く破裂音と共に、上空には赤い光が打ち上がる。
即座に『幻視眼鏡』も生成し、対象を葦原計都へと設定。
視界が切り替わると、運が味方したのか頭上は開けており、空には赤い光が……
「見つけた! しかもこれ……かなり近いぞ⁉」
そう。大和の言う通り、対象はかなり上を見上げている。
要はそれだけ近いということ。周辺エリア付近であることは間違いないようだ。
「位置は?」
「距離的に外周だ。太陽の向きも考慮すると……エリア⑨か?」
「エリア⑨? それって、さっき喧嘩を吹っ掛けてきた樫江田くんのエリアじゃない?」
すると大和は「なるほどな……」と眼鏡を投げ捨てつつ、何かピースでもはまったかのような笑みを見せる。
「樫江田はGクラス。単独で動いてるところを見るに、他の連中も伍堂のクラス同様、やる気がない。そんな総大将が抜けたエリアを奪うなんざ朝飯前。失格者も出ないから、オレに悟られる心配もない。おまけに樫江田が失格になったことで、他の邪魔な奴らも軒並み消える。考えたな」
「あらら。いいように遊ばれてるね? これは是が非でも挨拶に行かなきゃ」
大和は「だな」と冷たい目に闘志を滾らせ、デバイスから『転移門』を呼び出す。
地中からはファンタジックな門がせり上がり、大和はその扉に触れるなり渡の方を見遣る。
「覚悟はいいか?」
そう問われた渡は「愚問だね」と鼻先で笑い、
「よし……なら行くぞ――ッ!」
大和も強く頷いたのちに門を開くと、二人は光の中へと消えていった――
――が、なんと伍堂の倒れ込んだ先には、先ほど樫江田が座っていた切り株が。
それを鼬の最後っ屁が如く掴み、引っこ抜いては思いっ切り投げつける。
「ぐゔ――ッ⁉」
宙を舞っていた所為か回避ができず、見事、切り株がクリーンヒットしてしまう樫江田。
装着していたワイヤーは外れ、差していた日傘も手から零れ落ち、強烈な陽射しが……
「熱ゔ――ッ⁉」
樫江田の頭部は『代償』により急激に熱を帯び、焼け焦げるかのような痛みを前に頭を抱えだしてしまう。
「くっそぉぉおおッ! お前が卑怯な手ぇ使うから、一発で終わらせられなかったやんけェッ‼」
宙に巻き上げられる中、若干、気恥ずかしそうに頬を染める伍堂。
その怒りを背についていたワイヤ―にぶつけると、引き千切るや否や吸い込まれるように樫江田へと落ちていく。
伍堂は重力を味方につけながら拳を構えるも、幸か不幸かその体と太陽が一瞬重なり、樫江田の頭上に闇が訪れる。
その好機を見逃さず、樫江田も歯を食い縛りながら立ち、拳を振りかぶる。
「クソガキがぁあぁぁ……ッ! 勝つのは――」
「「ワシやぁぁああぁぁあああッッ‼」」
二つの雄叫びと共に放たれる拳――
互いにクロスカウンターを想定していたようだが、その策むなしく両者ともに頬へと拳が突き刺さる。
その衝撃で樫江田は地面を転がるように吹き飛ばされ、伍堂もふわりと宙を浮きながら程なくして地へと落ちていった。
互いに沈黙し、辺りは森閑と静まりかえ……と言いたいところだが、遠方から戦争でもしてるかの如き破壊音が轟いている。恐らく藤宮が暴れているだろうことは容易に想像できた。
うつ伏せの樫江田は、暫し痛みに顔を歪めたのち、己がスーツを見遣る。
『Turritopsis』の赤いラインは既に光を失っており、直後、デバイスには『DSQ』の文字が……
「くそっ……負けた、か……」
樫江田がそう零しつつ仰向けになると、視界には風に揺れる深緑の葉が何層にも広がっていた。
どうやら木陰まで吹き飛ばされたらしい……と、安堵の笑みを浮かべ、どこか吹っ切れたような顔で伍堂へと視線を移す。
「テメエの勝ちだよ、伍堂……。悔しいがな……」
樫江田が珍しく賞賛の言葉を贈ると、伍堂は……
「へっ……そりゃ、お前……こっちのセリフや」
と、うつ伏せのまま『DSQ』と表示されたデバイスを見せた。
◆
エリア⑦――
『……室田奏、世良修一、樫江田丈、伍堂出――失格者、41計名』
「伍堂が……失格……⁉」
己がデバイスを見下ろしながら、驚愕の面持ちを見せる大和。
さすがの大和もこの展開は予想していなかったようで、定まらぬ視線と共に左腕をゆっくり下ろしていた。
「伍堂くん、失格になったみたいだね」
相変わらず視界の外から姿を現す渡。
大して悲しむこともなく、どこか予想通りといったように、ポケットに手を突っ込んでいる。
「まさかアイツがやられるとはな……。樫江田はそこまでの奴だったのか?」
と、振り返る大和の眉間には、幾分か不服げなしわが寄っていた。
「今回はスーツがあるからね。耐久力を0にすれば、誰にだって勝ち筋はある。……あ、それよりもお探しの物、見つかったよ」
渡はそう言うとポケットから手を出し、大和のデバイスを指差す。
促された大和は今一度画面を覗くと、そこにはお助けアイテムであろう『フレアガン』の文字が。
「フレアガンか……」
「うん。普段は救難信号用で使うものだけど、今はあの葦原くんを探すのに打って付けじゃないかな?」
「フレアガンを打ち上げ、『幻視眼鏡』で奴の視界を盗み、その距離で位置を特定するってことか……。しかし、この鬱蒼とした森じゃ木々に隠れて目視できない可能性がある。確実性のある策とは言えんな」
「とはいえ、もう一時間切ってるんだ。他に策があるなら聞くけど?」
渡の言う通り、時刻はもう十一時を過ぎている。
ここからお目当てのアイテムを探す余裕はないだろう。無論、自力で見つけ出す時間も。
「わかったよ……。ま、お前が無駄なモン見つけてくるとも思えんしな。その策、乗ってやるよ」
大和は渡と笑みを交わすと、スクリーンをタッチし、左手にフレアガンを生成。迷わず頭上に向けて撃つと、耳に響く破裂音と共に、上空には赤い光が打ち上がる。
即座に『幻視眼鏡』も生成し、対象を葦原計都へと設定。
視界が切り替わると、運が味方したのか頭上は開けており、空には赤い光が……
「見つけた! しかもこれ……かなり近いぞ⁉」
そう。大和の言う通り、対象はかなり上を見上げている。
要はそれだけ近いということ。周辺エリア付近であることは間違いないようだ。
「位置は?」
「距離的に外周だ。太陽の向きも考慮すると……エリア⑨か?」
「エリア⑨? それって、さっき喧嘩を吹っ掛けてきた樫江田くんのエリアじゃない?」
すると大和は「なるほどな……」と眼鏡を投げ捨てつつ、何かピースでもはまったかのような笑みを見せる。
「樫江田はGクラス。単独で動いてるところを見るに、他の連中も伍堂のクラス同様、やる気がない。そんな総大将が抜けたエリアを奪うなんざ朝飯前。失格者も出ないから、オレに悟られる心配もない。おまけに樫江田が失格になったことで、他の邪魔な奴らも軒並み消える。考えたな」
「あらら。いいように遊ばれてるね? これは是が非でも挨拶に行かなきゃ」
大和は「だな」と冷たい目に闘志を滾らせ、デバイスから『転移門』を呼び出す。
地中からはファンタジックな門がせり上がり、大和はその扉に触れるなり渡の方を見遣る。
「覚悟はいいか?」
そう問われた渡は「愚問だね」と鼻先で笑い、
「よし……なら行くぞ――ッ!」
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