アルトリアの花

マリネ

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「はい。え?ええ?」
思わず返事をしたら、ソウンディックは、ばぁっと明るい笑顔になる。
「レティ!」
「え、ちょっ、ちょっと待って下さい。」
ばっと両腕を広げて抱き締められた。
隠されてしまった腕の中から、モゴモゴと叫ぶ。

「あー、ソウンディック。残念だが、求婚は無効だ。」
「急がれるなと申し上げたはずです。」
「はい。離れて離れてー。」

三者三様にソウンディックを呆れ顔で眺めている。
マリアに引き剥がされるようにソウンディックが離れた後、顔の火照りを戻すのが難しい。

「良い案だと思ったんだが。」
「順番が違うだろうが。もう、俺から説明するから座ってろ。」
アルベルトがソウンディックの肩を抑えて座らせる。
今度はアルベルトと向き合う事になってしまった。

「レティ、今後エディルと連絡を取ったり行動を供にするのに、身分が必要となる可能性がある。そこで君には、俺の家の子になるか、ギルデガルドの娘となるかを選んで欲しい。」
急で済まないなと、アルベルトは申し訳なさそうに首を竦めた。
「ちなみに、俺の家は王都の宰相家だ。ソウンディックが馬鹿な事をしても押さえ込めるし、国内の情報通にもなれる。お勧めだぞ?」
「え?」
あまりにも大きな名前が出てきて、同様してしまう。
王都の宰相家といえば、代々続く名家中の名家だ。
辺境に居てもその功績と手腕は聞き及ぶ。
もともとこれといって特出した産業や戦績がなかったこのカルストリアを、小さな王国から帝国まで拡大したのは宰相家だとも言われているからだ。

「アルトリアに居たいなら、うちだな。知ってると思うが、辺境伯は重畳されてはいるが、世襲制ではないし一部の貴族からは軽視されておる。儂には子も配偶者もおらんし、家の子になってくれれば邸が華やかになるんだがな。」
「あ、情に訴えるのはズリィだろ。そんなら家だって可愛い…くはないかもしれないが、弟に妹が出来て楽しいと思うぞ。」
アルベルトの横にギルデガルドが並び立つ。
アルトリアで過ごしてきたレティにとっては、今まで交流する事すらなかったが、ギルデガルドの方が身近に感じているのは確かだ。

「ど、どうしても今すぐにどちらかでお願いするのであれば…。」
すっと立ち上がり、ギルデガルドに向き合って礼をとる。
王都だって遠くて自分とはかけ離れた場所に感じるのに、宰相家なんて格式が高すぎる。
自分には恐れ多くてやって行ける自信がない。

「ギルデガルド様。よろしくお願い致します。」
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