愛を知らないパトリオットへ

あず

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第1章 新王国

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しばらく、隣の檻、つまりアーシュと兵士との行為に意識を向けないようにするため、頭の中を整理しようと目を覚ます前、意識を手放す前の記憶を整理しようと頭を働かせた。

やはり、あれは夢ではない。生々しいあの匂いや、狂ったような民衆の歓声。頭からこびりついて離れない、あの広場での光景は12年生きてきた中で十分に衝撃的なものだった。
それでも、僕はリーフレンド王国がどうなるのか、貴族たちは皆、すでに処刑されてしまったのか。言い伝えにあった魔界への門はまだ開いていないままなのか、一個人としての家族の心配よりも、国のことが気になっていた。

静かになり、アーシュと兵士が一言二言、会話を交わした。2人がやりとりをしているところからして、やはり、僕の使う公用語リーフレンド王国語が、ここではあまり使われていないことが窺える。
よく聞いてみても、やはり、聞いたことがないような単語ばかりである。

顔を上げると、ちょうどアーシュが自身の鎖についた重石を手に持って、兵士に促されながらこちらの檻に来るところだった。
ギィと稼働の悪そうな音を立てて僕の胸くらいまでしかない高さの檻の扉が開けられる。
顔立ちから小柄だと思っていたアーシュは思っていたよりも背が高く、扉を潜る姿から僕よりも頭ひとつ分くらい背が高いようだ。
アーシュはまだ少し赤い顔にニコニコと穏やかな笑みを浮かべて僕の方に近づいて来た。敵意がないことが分かっていても、無意識に身構えてしまう。

そうな僕の様子を敏感に察して、アーシュは両掌を軽く挙げて降参の格好を取る。決して敵意がないことを伝えているようだ。

そして、僕の前に膝をついてしゃがむと、綺麗な顔に見合った綺麗な手を伸ばし、僕の頭をくしゃくしゃと撫でた。
そしてその手を頭からこめかみを通り、頬へ滑らせる。

「ふふっ、××××。×××、××××××。」

楽しそうに笑うアーシュの先ほどから漏れている香り立つような色気に、否が応でもやはり聞こえてしまっていたあられもない彼の声を思い出して、少し気まずさが残る。視線を外して彷徨うろつかせるのも、彼にとっては年下の可愛い抵抗に過ぎないようだ。

そして、彼は驚くべきことに自身の親指に歯を立て、血を流すと、それをペロリとひと舐めし、僕の後頭部を動かないように支え、額にちゅ、と唇を落とした。唇を落とす前に目の前にいる僕にも聞こえないような小声で何かを言っていた。

「これで言葉が通じたかな?」

急な彼の行動に目を瞬かせて固まっていた僕は彼の一言に大きく目を見開いた。
なぜ。どうして。

「可愛い。珍しいね。マホウを見たのは初めてなのかい?きれいなお目々がおっこちそうだ。」

終始、僕を揶揄うようなそんな言葉を紡ぐ。

「どうして…、言葉…。」

「意志が通じないのは大変だからね。意思の疎通ができるようにさせてもらったよ。ただ、字は読めないだろうから、意思の疎通だけ。」

これは夢だろうか。いや、夢にしては全てがはっきりし過ぎている。目の前で繰り広げられる超人的な力にただ口を開けることしかできない。

「こんなに綺麗な女の子のような顔をしていても、やっぱり男の子だねぇ。」

そう言って注がれる、視線の先を追うと先ほどから、ムズムズして落ち着かず、膝をすり合わせていたソコに行き着いた。

「ごめんね?君と同じ部屋に入れてもらうためだったんだけど。どうしようか。俺が向こう向いてるから、自分でする?」

「え?」

「え?………もしかして、したことない?」

「…何、を?」

数秒の沈黙の後、アーシュはアチャーと片手を額に当てて、前髪をグシャリと片手で掴んだ。
綺麗な人のおちゃらけた態度に少し親近感が湧く。ただ、彼の反応がイマイチわからず、頭に?が浮かぶ。

アーシュは、意を決したように肯いて僕の手を取った。

「まず、性行為はわかるかな?」

アーシュの質問に僕は首を縦に振る。腐っても、公爵位を持つ家の息子だ。家庭教師に閨の授業だって受けて来た。一通り、実戦はしたことがないが、一連の流れはわかる。

「うん、じゃあ、射精はしたことある?」

優しく、諭すように落ち着けるように穏やかに微笑みながら、僕の瞳を覗き込む。アーシュの髪と同じ青に近いパープルの瞳にきょとんと間抜けな顔をした自分が映る。
その間抜けな自分が首を横に振る。

「君くらい美人だとどちらにしろ相手には困らないだろうけど、自分でも出来るようにしておこうね。ここから出たら、さすがに酷い扱いは受けないと思うから。」

そう言って、僕の手を一回り大きなこれの手が包む。
もう片方のアーシュの手が僕の太腿をスッと撫でてペタリと床につけていた膝の裏に手を滑り込ませて持ち上げた。

「…っ、!?」

布一枚しかない心許ない僕の服装事情ではこんな格好をさせられたら、少し、いや、かなり問題だ。
びっくりして、声のない声を上げてしまった僕にあは困ったように笑った。
アーシュの一つ一つの動きにビクビクと過剰に反応してしまう。目があっただけで肩を竦める始末だ。

「力を抜いて。大丈夫、痛いことはしないよ。男の子はね、定期的に抜かないと…発散しないといけないからね。手、開こうか。」

恐る恐る、おっかなびっくりアーシュに取られた手を開くのをアーシュは根気よく待ってくれた。
そして、やっとの事で開いた手に、僕のボクを柔く握らせた。

ひんやりと冷たい手に足がぴくりと反応する。

そして、アーシュは僕の手を上から握って上下に動かした。

「っ、ん、…ふ、ぁ、んっ、」

ゾクゾクと背中を這い上がる感覚に息ができなくなってハフハフと口を開ける。
初めて感じる感覚に生理的な涙が溜まる瞳をギュッと瞑って、自然と漏れる声を出さないように開いた口を意識的にぐっと閉じ、首を細かく横に振る。

手にトロリと温かい何かが触れた。

それに手を引っ込めそうになるが、アーシュに握られているためにそれは叶わない。
未知の感覚への恐怖が恐ろしくて、アーシュが絡めて来たもう片方の手をギュッと握る。

「アーシュ、あーしゅ、待って、止めて。怖いっ。」

「大丈夫。みんなしてるよ。怖くない怖くない。」

宥めるようなアーシュの優しい声が耳元を侵す。
見開いた目からポロポロと涙が溢れる。

「やだ、やだっ。なんか変っ、いや!ぁッ、…ンンッ!!」

目の前がチカチカして頭が真っ白になった瞬間、手に勢いよく比較的さらさらな液体が触れた。それは僕のソコから出ているはずなのに、僕の意思では止まりそうにない。

放心状態でいるとアーシュはベタベタになった僕の手と性器をサラリと撫でた。アーシュが撫でたところが綺麗にさらさらになる。

「お疲れ様。」

熱が引いて、冷静になるとサーっと頭から血の気が引く。

「アーシュっ、今の、あのっ、」

謝ればいいのか、なんて言えばいいのかわからなくて慌てていると、アーシュは今までにないくらいの笑顔になった。

「ハルの一番可愛いところ見て、俺が得しちゃったね。ごちそうさま。」

その言葉に、僕は湯気が出そうなくらい顔が熱くなった。アーシュは綺麗で、優しくて、なんだか頼りになって、それでいて、意地悪だ。





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