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第一章:神聖リディシア王国襲撃編
先代導き手と勇者が刻みしページ ②
しおりを挟む「・・・空? なんで、俺・・・外に?」
最初、映像かなにかだと思っていた。だけど、俺の肌に当たる風は本物だ。この世界にクーラーや扇風機があれば別だが、あるわけがない。
「驚いたかい? アクツ君」
背後から、リンゲルの声がした。
「ここは過去の世界。先代導き手と勇者が生きていた時代。どうやら、ちょうどいい時間に飛べたみたいだね。 下を見てみなよ」
リンゲルが下を指さす。俺は恐る恐る下を見ると、そこには見覚えのない広大な都市があった。いや、正しくは崩れた都市だ。
「・・・どういう状況だ?これは…」
「さっきも言った通り、先代導き手と勇者が生きていた時代だよ。そしてこれは彼らの生命が尽きる2時間前の光景だ」
現状を飲み込めない俺に、リンゲルがそう説明する。これが先代導き手達が生きていた時代?こんな血なまぐさい場所で彼らは死んだのか? 俺も彼らと同じ道を辿るのか?
「そうえばひとつ言い忘れてたけど。あまり声を出すと【音竜】に気づかれるから気をつけてね」
リンゲルは、黒雲と白雷の中を踊るように飛び回る、やけに耳がでかい竜を指さして忠告する。
「彼らは、視覚を持たない代わりに聴覚が優れている厄介な特性を持った竜なんだ。まぁ幸い、あれは低竜種みたいだから大声をあげない限りは大丈夫だよ」
「・・・ちなみに、声を上げたらどうなるんだ?」
恐る恐るそう尋ねると、
「試しにやってみるといいよ。もれなく骨になれるから」
「いや、それを聞いてやりたいって言うやつはいないからやめとく」
その提案にそう返答する。
「まぁ、僕の近くにいれば大声出しても安全だけどね。と、そんな事よりも先代導き手と勇者がいる地点まで飛ぶとしようか」
リンゲルは俺に近くに来るように手招きし、
「それじゃあ、行こうか」
杖を振る。すると、再び俺の身体を淡い白い光が覆い、先代導き手と勇者がいる地点まで飛んだ。
そこに着くまでの数分。俺はリンゲルから先代導き手と勇者についての話を聞いていた。
「今回見に行く先代導き手と勇者の名前を伝えてなかったね。 先代導き手の名前は、雪鵠來薇。そして勇者4人の名前は、レンク、キエド、シノ、アトラ。 今までの導き手と勇者の中で一番の逸材だった者達だ」
リンゲルが挙げた人物の中に聞き覚えのある名前があった。
「・・・雪鵠來薇?」
「おや?彼女の知り合いだったのかな?」
「いや、知り合いって訳じゃない。行方不明ってのを聞いたことがあるだけだ」
雪鵠來薇は数年前に行方不明になった。そうニュースに流れていたのを俺は見たことがある。というか、誰もが知ってるニュースだ。確か、家にいたはずの雪鵠來薇が突然、消えたという内容だったはずだ。警察も家族や身内の人たちも必死に探したが、結局見つかることは無かったらしい。噂では今でも家族は雪鵠來薇を探しているとか。まさか、異世界に飛ばされていたなんてな。
「そりゃ、見つかるわけないか」
「っと、そろそろ着くみたいだ。いいかい?今から見る光景は、君達にも起こりうる可能性のある未来だ。それを覚悟した上で、自分はどうするか考えてくれ」
リンゲルのその言葉を最後に、俺達の視界を覆っていた白い光が消えた。
そして俺達の視界に映った光景は--。
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