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第一章:神聖リディシア王国襲撃編
王との謁見 ①
しおりを挟む「全く、君達もいい加減いい歳なんですから、仲良くしてください。かつての仲間としてとても恥ずかしいですよ」
その男性は20歳位の見た目をしており、服装は装飾の少ないローブ。右手には一本の杖が握られている。
『ふん、黙れ小僧。貴様は相変わらず、我の機嫌を損ねるのが得意だな』
「あら、それを貴方が言うの? 聞いたわよ、前の戦争では、敵国の魔法兵団をその拳だけで壊滅させたらしいじゃない」
【アグラスド・ヴェイン】とミリアーナが、扉前に立つ男性に話しかける。どうやらこの三人は昔からの知り合いのようだ。
「ははは、よしてくれよ。僕の魔法は手加減が難しいから、殺めずに軍隊を壊滅させる方法が拳しかなかったんだよ。それに、これくらい人間なら誰だって出来ることだろう?」
男性は笑ってそう答える。なんだろう、このおぞましさは。あの男は俺と同じ人間なのか? さも当たり前のことのように語っているが、当たり前なわけがない。拳一つで軍隊を壊滅させれるなら、戦争の為に兵器なんて造られない。だからこの男は人間の皮を被った化け物だ。
『ふん、貴様の常識で人間を語るな』
「そうよ。貴方みたいに化け物じみた力を人間が持ってるわけないでしょ。彼らは道具を駆使する事で、やっと貴方に少しだけ近づける位の力を振るえるのよ」
神使徒とミリアーナがそう言葉を返す。その言葉に男は『ふむ』と少し思案した後、俺の方に視線を向け、笑った。
「君が今回の【導き手】、アクツ・エイタ君だね。いやぁ、この世界の人間とは違う力を秘めているみたいだけど、まだそれが【ナニカ】を自覚してないみたいだね」
「・・・は、はぁ?」
何を言っているのか全くわからない。てか、この人だれ? なんで俺の名前知ってんの?
「あぁ、ごめんごめん。まだ名乗ってなかったね」
男は俺の思っていたことがわかったのか、軽く謝罪した後、
「僕はリンゲル・ユーディア。見た目の割に歳は千を超えている。でも身体能力や思考力なんかは現役の頃と同じさ。よろしくね、アクツ・エイタ君」
そう名乗り、右手を差し出した。俺は戸惑いながら、その手を握り返す。そして握手を終えた後、リンゲルは次にシエラの方に向かった。
「君が今回の勇者に選ばれたシエラ・プルーティア君か。ふむ、今までの中で一番頼りない…が、どうやら君は【英雄神の加護】を持ってるみたいだね。うんうん、相当【英雄神】に好かれてるようだ」
リンゲルはどこか嬉しそうに何度も頷きながら、そう告げた。
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