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第一章:神聖リディシア王国襲撃編

神聖リディシア城 ①

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「・・・【導き手】」

ミリアーナが告げた言葉を反芻して、シエラに視線を向ける。

「な、なんですか!? 私はちゃんと貴方に伝えようとしましたよ!なのに、貴方が勝手に出ていくから!」

「あら、自分で召喚したのにうまく使役できてないの?」

シエラはその言葉に引き攣った笑みを浮かべた。どうやら図星らしい。というか、俺は使い魔なのか?召喚されたらアイツの奴隷ってことか?そんなことにならなくて良かったわ。あんなチビに使役されるとか、最悪すぎる。

「おかしいわねぇ。召喚者が召喚を行った場合、呼び出された側は強制的に【導き手】という役割を持った使い魔になるはずなのに」

「ほんとおかしいんですよ!信じられません!」

ミリアーナの言葉に同意して、シエラが怒る。

「アレじゃねえの。お前に召喚術は向かない。その証拠に、なんの力も持たない俺が召喚されたわけだしな」

そう告げて、俺はベッドから立ち上がる。ズボンのポッケをまさぐり、何も取られてないかを確認し、扉へと向かう。

「あ!? 今度はどこに行こうとしてるんですか!アクツ・エイタさん!!」

「もう体は平気なの?アクツ・エイタ君」

背後から、俺を止めようとするシエラの声と体のことを尋ねるミリアーナに視線を向けずに、手を振る。

「どこに行こうが俺の勝手だろ。それに嫌でも、お前には居場所がバレるんだし答えなくてもいいだろ。ってか、この世界に詳しくない時点で目的地なんてねえよ」

誰かと一緒にいるのは嫌いだ。他人に合わせる意味が分からない。学生時代の時もそうだ。クラスで俺がいい点をとっても他の奴らが足を引っ張るせいでクラス順位が上がらない。部活も同じだ。例え、俺が活躍しても仲間が頼りにならなければ勝てるわけがない。だから、他人に合わせるのは面倒だし、意味が無い。自分にメリットなんて存在しない。

「まぁ、そういう訳だから。ついてくんなよ」

俺は最後に突き放すように告げて、医務室を後にした。
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