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第一章:神聖リディシア王国襲撃編

聞かされてない話 ①

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「なんでここが分かったんだ?」

俺はシエラに尋ねる。それも仕方ない。そう簡単に俺の居場所がわかるはずがない。例え、この女がミリアーナと知り合いだとしても、こんな都合よくこの家に来るか? そんな事ありえない。

・・・発信機か?

俺の頭を一瞬、よぎったのはソレだが、ここは異世界だ。そんなものが存在するわけがないと、その考えを放棄する。では、何故分かったのか? 

「それは、私が呼び出した転生者だからです」

シエラは、右手の甲に刻まれた蒼いチェーンを見せて答えた。

「・・・それは?」

「コレは、あなたの右胸に刻まれているモノと私の甲に付けられている【契約命鎖リンク】。私と貴方の命を繋げる鎖です」

「・・・は?」

俺は異性が部屋にいることも忘れて、上の服を脱いだ。そして、右胸に視線を向けると、確かにそこにはシエラが言っていた交差する蒼い鎖の痣があった。何度も指で削ってみるが、剥がれることは無く、ただ胸が痛くなるだけだった。

「ってことは、コイツがお前に俺の居場所を教えていると?」

「ええ、そうです。ただ、1度だけあなたの反応が弱くなったので焦りましたよ」

シエラが言っているのは、俺がチンピラに刺された時の事だろう。というか、場所がわかるなら早く助けに来て欲しかったものだ。勇者なら、チンピラくらいなんとか出来ただろうに。 

「あのですね。あなたが一人で遺跡を出ていくから悪いんですよ? 自業自得です」

「おい、コレって俺の思ってる事も考えてる事も分かるのか?」

自分の心を読まれた事に驚き、尋ねる。しかし、そういう訳では無いらしく、シエラは首を左右に振った。どうやら、俺がそう思っていたんじゃないかと思っただけらしい。

「そういことに関しては不可能ですが、貴方の生命いのちを感じ取ることは出来ます。要するに、あなたと私、どちらかが死ねば、二人とも死にます」

「・・・は? 死ぬって…」

聞いてない話だ。あの遺跡で1度もコイツはそんなこと言わなかった。1番重要な話をコイツは一言も俺に伝えていない。死ぬなんて冗談じゃない。なんで、他人と命を共有しなくてはならない。ましてや勇者と。勇者って事は、危険な敵と戦う存在だ。そんなのいつ死んでもおかしくない。死に怯えて生きていくなんて嫌だ。やっと、両親や教師、皆の期待を背負って生きていかなくて良いようになったってのに。今度は死に怯えなくていけないのか。

「・・・ふざけんなよ」

ポツリと呟く。久しぶりにイライラした。

「なんか真剣な話してる時に申し訳ないけど、突然、私と彼の話に割り込むのはやめてもらえるかしら?」

置いてきぼり状態のミリアーナが、シエラに告げる。

「ほら、貴方もイライラしてないで、落ち着きなさい」

「・・・ありがとうございます」

俺は、差し出された薬草茶の入ったコップを受け取り、口をつける。やっぱりくそ苦いが効果は本物だ。そのおかげでスゥーと心が落ち着いた。
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