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一学期【中間試験】編

馬鹿吸血鬼と通学路

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翌日の朝。真夜中に家に夕食を食べに来た迷惑な幼馴染を家へと送ったり、バカ2人の喧嘩を止めたりと大変なことがあったせいで、朝から眠気が凄い。1度、レヴィは家に転移魔法で帰宅した為、朝食は俺とリィン、妹華の分だけ用意した。

「さて、お寝坊さん2人を起こしに行くか」

俺はエプロンを外し、未だに起きてこないリィンと妹華を起こしに二階へと上がる。まず最初に、階段から近い妹華の部屋の扉を叩く。

「おーい、朝食出来たから早く起きて食えよ~」

そう一言だけ告げ、次に俺の部屋に向かう。異性を自分の部屋で寝かせるのはどうなのか?と言われるかもしれないが、早とちりは良くない。俺は、リィンとレヴィにベッドと客用の布団も貸した為、リビングのソファーで寝たのだ。

「おーい、リィン。起きてるか?」

扉を軽く叩く。なんというか、自分の部屋を自分でノックするというのはなんとも不思議だ。暫くして、ガタンっと音がして、続けてドアノブを握る音が聞こえた。俺は扉から離れると、ガチャっとドアノブが回され、扉が開いた。 そしてそこから出てきたのは俺の身長よりかなり低めの棺桶。

「・・・おはよ」

寝起きということもあって声の小さい声が棺桶から発せられる。いや、正しくは棺桶の中にいるリィンから。

「あぁ、おはよう。相変わらず棺桶で行動するのに手馴れてるな」

「・・・ん。これくらいかんふぁあんよ。…ねむ」

欠伸をしながらリィンは器用に棺桶の中から片手を出して扉を閉める。そして、トントンっと軽く跳ねながら階段を楽々と降りていく。ホントにあの棺桶はどんな構造をしているんだろうかと疑問を抱いてしまう。

「後は妹華が起きてればいんだけど・・・」

俺は再度、妹華の部屋に向かう。扉を数回叩き、声をかけると、

「・・・っさい!! 起きてるっての!何度も叩くな、バカにぃ!!」

内側からドアを蹴る音と共に妹華の怒鳴り声が響いてきた。

相変わらずの反抗期でお兄ちゃんは朝から悲しいが、その感情を妹華に見せるのは恥ずかしいので、

「はいはい、そりゃ悪かったよ」

なんともない感じで返し、先に階段を降りた。そして、リビングでしばらく待っていると、制服に着替えた妹華が朝食の席に座った。これで妹華、リィン、俺の3人が揃った。

「よし、全員揃ったな。それじゃ、いただきます」

「・・・ます」

「・・・ふあぁ」

俺の言葉に、朝からご立腹の妹華と欠伸をするリィンは各々の感じで続き、食べ始めた。




朝食が終わり、一足先に学校へと向かう妹華に「行ってらっしゃい」と言ってから、俺は汚れた食器の片付け等を一通り済ませて、自室に置いてある鞄を手に取り、待たせていたリィンと共に家を出た。

「相変わらずアンタは男のくせに女子力高いわね」

通学路を歩きながら、リィンがそんな事を言ってきた。

「そういうお前は、女子力皆m・・・いてっ!?」

冗談でそう言おうとして、棺桶から器用に出てきたリィンの拳で思い切り脇腹を殴られた。一瞬の出来事だが、俺の目はごまかせない。鍛えてなかったら地面に倒れてジタバタしていただろう。吸血鬼なだけあって威力が強かった。

「い、いきなり殴ることねえだろ!?」

「ふんっ!アンタが無神経なこと言うから悪いんでしょ、バーカ」

「はァ?例え、俺が馬鹿だとしてもお前は超弩級の馬鹿だろ。そんな奴に馬鹿って言われたくないねぇ~」

「あ? 誰が超弩級の馬鹿ですって?」

リィンは棺桶に入ったままで【狂血化】を発動させる。脅しの1種とは分かってはいるが、人間相手にするような脅しじゃない。だが、俺だってそうそう簡単に負けを認めて言葉を撤回するわけにはいかない。リィンが馬鹿なのは事実。そして、俺はこいつより馬鹿じゃない。

「はっ! 俺と喧嘩してもいいけどよ、太陽の下で動けるのか?貧血でぶっ倒れるぞ?」

「ふん!ご忠告どうも!!」

バカンっと棺桶の蓋が開け放たれ、【狂血化】しているリィンが俺に飛びかかって--

「・・・ぁう」

来なかった。いや、飛び掛ることが出来なかった。とういうのも、本来【狂血化】は太陽がない時に使用する事を目的とされた能力。吸血鬼の弱点を抑制する特殊な繊維で作られた服を普段から着用しているが、【狂血化】を使用するとその繊維で守られていた吸血鬼の弱点が再起する。その為、今のリィンのように、太陽の下で【狂血化】をすれば貧血で意識を失いかけるのは当たり前だ。

「はぁー。朝から世話かけんなよ」

「・・・うきゅ~」

目をグルグルさせて気を失うリィンを棺桶へと入れ直し、俺はソレを引きずりながら学校へと向かった。
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