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一学期【恋する乙女】編

転校生は厨二病を拗らせた女の子でした

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相談室--そこは別名『拷問部屋』と呼ばれ一部の男子生徒から恐れられている。 というのも、この部屋に来るのは男子生徒ばかりだからだ。そして、本日も一人の男子生徒が生贄となった。 

「で? なんで朝っぱらからうるせぇ声上げてたんだ? お前」

桃色の髪に黄金色こがねいろの瞳。 小学生サイズの薄桃色のシャツと空色のスカートを履く合法ロリ教師--四ノ宮華薇は四つん這いでただいま首絞め拷問絶賛中の俺に尋ねてきた。

「ぐぎぃびょぉ!?」

「気色悪ぃ呻き声あげてんじゃねぇ! 首絞めんぞ!」

「いや、既に絞められびょるふぁ!?」

再びカエルの潰れたような呻き声をあげる俺に容赦なく首絞めをかけてくる華薇先生。 ちなみに首絞めされると女の人の胸が当たるってよく聞くけど、実際喰らうと痛みのせいで嬉しくないのが分かりました。 オマケに華薇先生はペッタンだから余計痛いだけでした。 それに首絞めされすぎて新たな扉が開きそうな件について。このままでは、大学とかの自己紹介で、『俺は首絞めされるのが大好きなマゾ豚です』っていう最悪的な未来に! ここが俺の正念場。 ここで新たな扉を開ければ終わりなのだ。人には負けられない時がある。 それが今なんだァァァア!?
俺は決意を胸に先生へと勝負を挑んだ。


--数分後--

「これにこりたらもう二度と私のスカートを捲ろうとすんなよ」

「ふぁ、ふぁい...」

顔を真っ赤にした華薇先生にコテンパンにされた俺は、ブドウのように腫れた顔のまま、紐で縛られて正座させられていた。無謀すぎた。 華薇先生を見誤っていた。 まさか、スカートの中に水色と白の横縞パンツを履いていたなんて!俺が横縞パンツに弱いことを既に知っていたとは・・・恐るべし合法ロリ。  

「ったく、そろそろHR始めっから早く帰れ。 もしも今から1分後に教室に着いてなかったらお前の制服を雑巾にするからな」

「ハハハ、そんな冗談やめてくださ・・・え? 冗談ですよね? ですよね、先生?」

俺は微笑を浮かべたまま表情を変えない華薇先生に問いかけるが何も言わない。 俺はふと、ある出来事を思い出した。 あの時もこんな事を言われたような気がする。 

(そうえば・・・あの時もこんな笑顔で俺の風呂敷を雑巾に変えるとか言ってたっけ・・・・・俺の風呂敷どこいったのかなぁ?)

「ちなみに、お前はこれで二回目だよな? ほれ」

しばし思考を全速力で駆け巡らせる俺の顔面に華薇先生が何かを投げてきた。 その何かは綺麗に俺の顔面にヒットし、それと共に牛乳が腐ったような臭いが襲ってきた。 鼻がもげるような臭いに悲鳴をあげることも出来ず、床をのたうち回った。 

「おいおい、それお前の風呂敷だぞ? 元だけど」

「なぬっ!?」

俺は今しがた投げ捨てた物を見やると、確かにそこには見慣れた風呂敷が落ちていた。 しかしその風呂敷は原型が全くなくなっており、本当に雑巾化していた。 唯一残っていたのは名前部分だけでした。 その時、嫌な未来が俺の頭を過ぎった。 

(今度は制服を雑巾にされる!? あ、あと何秒だ!?)

「早く行かねえと、間に合わねえぞ。 残り時間、30秒」

俺の慌てぶりに相変わらずの微笑みのままで華薇先生がそう告げた。 俺はその言葉を聞いた瞬間に、扉を開け放ち、全速力で廊下を走り始めた。 残り30秒。 普通に歩いて教室まで5分はかかる。走れば2分。 しかし今回は30秒でつかなければならない。普通ならば無理だ。 しかし、限界を超えればなんてことは無い。 人間は火事場の馬鹿力と呼ばれるものがある。それが今だ。 俺は階段を一気に駆け上がり、教室の扉が開いていないのを確認。 ならばとすぐ横の開いている窓へと、反対側の壁に足を当て加速してからの前宙で教室内へと入室を決めた。 そして自身の席へと体から体当りするように座り込んだ。 その時に隣の大親友--佐々倉京治の頬に拳がめり込んだがそんな事は気にしない。 今は自分のことで精一杯だ。 それに親友の犠牲により席から落ちることは無かったのだから良しとしよう。 不意に思い出して、時計を見やると、相談室を出てからまだ10秒しか経っていなかった。 この時、人間は本気を出せば限界を超えれるんだなぁと実感しました。


華薇先生が教室に戻ってくるまでの間、俺は我が大親友--佐々倉京治に怒鳴られていた。 

「お前、さっき俺の頬殴ったろ!? 謝れよ!俺のキューティクルフェイスに傷が付いたらどう落とし前つけてくれんだよ!?」

「安心しろよ、お前の顔はキューティクルじゃねえからよ」

俺は怒鳴りちらかす京治の肩に手を乗せて告げた。 すると更に怒りをかい、拳を放ってきた。 それは物の見事な右ストレートだが、俺はその拳の軌道をずらして逆に強烈なデコピンをかました。 京治は小さな苦鳴をあげ自陣の机に倒れふした。

「ふぅ、悪者成敗完了。 寝るとしますかね」

俺は瞼を閉じて深い眠りへと落ちる瞬間、扉が勢いよく開けられその音で椅子から転げ落ちた。心臓が止まるかと思うほど強く開け放たれた扉の方を憎々しげに睨むと華薇先生が出席簿を手に入って来た。俺は即座に眠りの態勢から姿勢正しきフォームへと移行した。 見た目だけなら優等生と勘違いされるレベルだ。 と言うのは嘘である。 何故なら--

(お、おふぅ・・・いつも気だるげな姿勢で座ってるから・・・背筋ピーンッは辛い!? お、ぐふ、でゅふふ、ふぁる・・・)

1分も経たずに力尽きた。 やはりなれないことはするものでは無い。 俺はいつものように椅子にもたれ掛かる気だるげフォームに変えて、華薇先生が教卓の裏に隠れた踏み台に立つのを待った。 しかしいくら待っても先生が踏み台に立つことはない。 それもそのはずで、踏み台は既に俺が隠している。 どこにかって? それは隣の京治のロッカーに決まっている。俺は笑うのを堪えながら教卓の裏へ行くと、赤い顔をして一生懸命背伸びしている華薇先生がいた。 そんなほほえましい光景に俺の心は罪悪感に苛まれた。 俺は華薇先生をヒョイっと持ち上げて、

「とりあえずこれでHRやりましょうよ、華薇先生」

「ふ、ふざけんな!? 先生を抱いていいと思ってんのか! セクハラで退学にさせんぞ!」

「でもどうするんですか? このままじゃ、HR始めれませんよ? それはやばくないですか?」

「・・ぐぬぬ。 うぅ・・・それならお前が台になれ」

華薇先生は暫く可愛らしい仕草を交えながら頭を悩ませていると、こちらに振り返って、最高な提案だろ?というような自信満々な子供のような笑みでそんな事を告げた。 もしも華薇先生がロリ体型じゃなかったら殴ってた可能性は70%あったが、ロリ体型なので殴ってた可能性は0%だ。

「拒否け--」

「拒否権はない」

いや、拒否権はあると思うんですが・・・


「発言の自ゆ--」

「お前に発言の自由はない」

何故!?

「体ば--」

「理事長は懐柔済みだ」

理事長が国語教師に懐柔されてどうすんだよ!?

「ちなみに、猫なで声で甘えるように言ったら簡単に落ちたぞ」

「理事長、ロリコンだったのかよ!?  終わってんだろ、この学園!!」

「まぁ、そういう事だ。 諦めて、台になれ。 な?」

「--っす」

俺は理事長がロリコンだった事と理事長に見捨てられた事により精神面的ダメージが大きかった。 四つん這いになり、華薇先生がその上に乗っかり、HRが始まった。

「えーと、今日はお前らに転校生を紹介する。 お~い、入ってこい」

華薇先生の言葉に全クラスメイトが期待に胸をふくらませていた。 かくいう俺もだ。 まぁ、俺や野郎共に膨らむような胸はないけど。  こういう時、野郎共は美少女が来るのに期待し、女子は美男子が来るのを期待する。 まぁ、時々、男の娘を期待する野郎やんなの子を期待する女子もいたりする。 ちなみに俺は普通の女の子を期待します。 この学園は先生含めて全員が普通じゃないので。  
そして、教室の扉が開けられ、そこにいたのは--

オッドアイの瞳に、腰まで伸びた銀髪から生える角が二本。 口の端から微かに覗く小さな牙。スカートの中からフルフルと揺れている先っぽが三つ又のような形をした尻尾。厨二病をこじらせた美少女だった。

「クククッ・・・我が名はレヴィナンス・キティ・ラルフィシア!! 又の名を〈魔王レヴィ〉!! この学園をしひゃい!?」

厨二病の美少女はマントがあるかのように翻し、不敵な笑みを浮かべ右眼に右手ピースを添えた姿で告げた。  しかし--

(あ・・・噛んだ。 かわいいなぁ)

(また変人キタァァァァァアアア!!)

クラスメイトの心が各一名を除いて初めて揃った。 ちなみに魔王レヴィと名乗った少女は涙目で「うぅっ・・・しひゃかんひゃった」となんか可愛らしい声をあげている。 と、俺の目が彼女の目と合った。 なんか凄いコチラを見てる件。
俺はとりあえず笑ってみた。 すると、なんか生き別れの兄弟か恋人に会ったような笑顔浮かべたよ。なんか嫌な予感しかしない。 気づいたら喉がカラカラに乾いていた。 恐らく緊張したからだろう。 俺は唾を飲み込み、レヴィの次なる行動を警戒した。 そんな彼女はこちらに指を突きつけてこう告げた。 

「見つけたぞ! 我が未来の伴侶よ!」

それは愛の告白だった。 思考が追いつかない。 俺が未来の伴侶? やばい、この子アタマオカシイ。 ナニイッテルノカ、ワカンナイ。  俺は全思考を彼女の言葉の意味にフル回転させて、遅れて理解した。 そして一つ、俺は肝心なことを忘れていた。 そう、俺の背中に華薇先生が立っていたことに。 驚きに起き上がった俺の背中から転げ落ちた華薇先生による蹴りが容赦なく俺の股間へと容赦なく放たれた。 しかし、悲しいかな。 俺と華薇先生との身長にはかなりの差がある。 そのため、俺の股間に足が届くことはない。 代わりに勢いよく足を振り上げた華薇先生の方が足をつった。

「ふぎゃ!?」

華薇先生は小さな悲鳴をあげて、涙目になりながら自身のつった足を押さえていた。俺は慌てて華薇先生を抱き上げて教室を飛び出そうとして、扉の前にレヴィが居ることを思い出した。
俺は廊下側の席に座る長身イケメン--海道院新に窓を開けるようお願いした。

「このぐらいでいいかい? ケータ君」

「あぁ! ついでに一度先生を受け取れ!」

俺は開いた窓から飛び出る前に華薇先生を新へとパスして、廊下へと転がり出た瞬間に、先程飛び出た窓から華薇先生が放り出されてきた。 俺はそれをキャッチして猛ダッシュで保健室へと駆け出した。 階段を駆け下り、1階にある保健室へと入り込むと、高速の右ストレートが俺の鼻面へと叩き込まれた。いきなりの不意打ち攻撃に受け身も取れずに後頭部を床へと打ち付けた。 ちなみに華薇先生は俺の鳩尾に何とかぶつかり助かった。 その代償に俺の意識が飛びかけたが。 俺は痛む鼻を擦りながら前を向くと、右拳を除菌ペーパーで念入りに拭いている白衣を纏った女性が立っていた。 

この人は、岸野院きしのいん 冬音ふゆね、29歳独身の保健の先生で
雫の義姉あね。 
特技は格闘術全般、料理、治療術。
ライトグリーンのショートヘアに碧眼。172cmで恐らくDカップはある巨乳の持ち主で、バランスの整った容姿をしている。 性格面は、かなり感情的で俺をからかうことだけが生きがいと豪語するほどの最悪さを持つが時に優しい、いわゆるアメとムチをうまく使い分けるプロフェッショナルな女性である。

「何するんですか!? 冬音さん!!」

「あぁ、ゴメンね。 君が来る気配を感じたから殴っちゃった♪」

冬音さんは悪びれる様子もなく未だに除菌ペーパーで右拳を拭きながら答えた。これがこの人の凄いところだ。 人の気配を感じ取ることが得意でこれまでに何度も痴漢魔を捕まえている。

「殴っちゃった♪、じゃないですよ! あなたは誰が来てもこういうことするんですか!?」

「えーと、何言ってるの? そんな事したら精神科に隔離されるよ? 頭大丈夫?」

なんかものすごい勢いで引いてきたんだが。

「何で俺がおかしいみたいになってるんです!? ってか逆に生徒を殴ることは体罰じゃないんですか!?」

「聞いてないの?  アナタは殴っても体罰にならないって事」

「誰が言ったんですか!?」

「理事長」

「またあんたかよ! 理事長!!」

俺は窓から外に向かって悲痛の叫びをあげた。余りにも理不尽な事に叫ばずにはいられなかった。 なんかしてやったりみたいな顔をしてる理事長を思い浮かべて苛立ちがさらに高まった。

「で? 華薇ちゃんは受け取ったしアナタは帰ったら? まぁ、私と気持ちいいことしたいなら別にいいけど♪」

「御遠慮願います、それじゃ!」

俺は冬音さんの誘いを断って保健室から逃げ去った。 男なら誰だってあんな綺麗な人が気持ちいいことしてあげると言ったら喜んで受けるだろう。 だが、冬音さんはそんな人じゃない。 
この場合の『気持ちいいこと』は『痛いこと』だ。 とてつもなく痛いことをされるというわけだ。 何度もその罠に俺は引っかかってきたため慣れている。 正直、冬音さんのことを知り尽くした『歩く冬音辞典』と呼ばれるぐらいにはプロだ。 まぁ、そんなふうに呼んでくれるような人はいなかったけども。 俺はそんなどうでもいい事を思いながら、教室の扉を開けようとして、中が騒がしいことに気づいた。 

「ん? 厨二病とメスゴリラの声か?」

俺は不思議に思いながら少しだけ扉を開けると、厨二病少女ことレヴィと、メスゴリラこと桜花がクラスメイトが集う中心でキャットファイトとは似ても似つかぬどっちかと言うとアニメやマンガで見るようなSFじみたバトルを繰り広げていた。

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