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2.冬の日(咳)
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朝、家では出なかったんだけど、学校についてから咳が出るようになった。
教室に入るなり、少しだけ喉がイガイガするのを感じたけど、最初は「気のせいだろう」と思って、水筒のお茶を飲んだ。
でも、だんだんと咳が出てきて、止まらなくなってきた。
「けほっ、けほっ」
隣の席の星田悠が気づいて声をかけてきた。
「いつき、さっきから咳してるけど大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫…なんか急にむせた」
軽く答えたが、悠は不安そうな顔で俺を見つめてくる。
「ほんとに?無理しないで保健室行った方がいいんじゃない?」
「いや、大丈夫だって…げほっ、げほっ」
俺は頭を振って否定したけど咳はどんどん出てきて、止まる気配がない。
その時、先生が教室に入ってきて、クラス全員で「おはようございます!」と元気よく挨拶をした。その声で少し咳が収まった気がしたけど、それでも喉の痛みはなくならなかった。
授業が始まった頃、咳がまたぶり返してきた。さっきよりも頻度が増えて、止まらない。先生が黒板を見ていたが、咳の音に気づいたのか、振り返ってこちらを見た。
「相沢、大丈夫か?」先生が眉をひそめながら聞いてくる。
「だ、大丈夫です…」と咳き込みながら答えたけれど、周りの視線が気になって顔が熱くなる。
先生は少し考え込んでから、「本当に大丈夫か? 保健室に行くなら今行っていいぞ」と声をかけてくれた。
一瞬ためらったけど咳が止まる気配もなく、何より周りに迷惑をかけている感じがして、俺は小さく頷いた。
「……行きます」
悠が心配そうにこっちを見ていたけど俺は一人でいいと言って教室を出た。
教室を出た瞬間、少しだけホッとした。
でも廊下に出た途端、冷たい空気を吸ってまた咳が出る。
保健室は一階で、階段をゆっくり降りる。いつもならすぐの距離が今日はなんだか遠く感じた。
「失礼します…けほっ」
保健室のドアを開けると、保健の先生がすぐに来てくれた。
「どうしたの?咳がひどいみたいね。ソファに座って」
「授業中から止まらなくて…」
上履きを脱いで、ドアの横のソファに座る。
先生は俺の顔をじっと見て、「熱はないかな? 一応測ってみましょうか」と言いながら体温計を手渡してきた。
俺はそれを受け取り、脇に挟んだ。
咳すると疲れるんだよなあ。
体温計の音がピピっと鳴って、先生がそれを確認する。
「熱はないみたいね。でも咳がひどいから少し横になってみましょうか。担任の先生には伝えておくからね」
「はい」
ベッドに連れて行かれて横になると咳が減って楽になってきた気がする。
そのまま目をつぶると、だんだん体の力が抜けていくのが分かる。
あ、寝そう。と思った瞬間には意識がふわっと遠のいていった。
教室に入るなり、少しだけ喉がイガイガするのを感じたけど、最初は「気のせいだろう」と思って、水筒のお茶を飲んだ。
でも、だんだんと咳が出てきて、止まらなくなってきた。
「けほっ、けほっ」
隣の席の星田悠が気づいて声をかけてきた。
「いつき、さっきから咳してるけど大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫…なんか急にむせた」
軽く答えたが、悠は不安そうな顔で俺を見つめてくる。
「ほんとに?無理しないで保健室行った方がいいんじゃない?」
「いや、大丈夫だって…げほっ、げほっ」
俺は頭を振って否定したけど咳はどんどん出てきて、止まる気配がない。
その時、先生が教室に入ってきて、クラス全員で「おはようございます!」と元気よく挨拶をした。その声で少し咳が収まった気がしたけど、それでも喉の痛みはなくならなかった。
授業が始まった頃、咳がまたぶり返してきた。さっきよりも頻度が増えて、止まらない。先生が黒板を見ていたが、咳の音に気づいたのか、振り返ってこちらを見た。
「相沢、大丈夫か?」先生が眉をひそめながら聞いてくる。
「だ、大丈夫です…」と咳き込みながら答えたけれど、周りの視線が気になって顔が熱くなる。
先生は少し考え込んでから、「本当に大丈夫か? 保健室に行くなら今行っていいぞ」と声をかけてくれた。
一瞬ためらったけど咳が止まる気配もなく、何より周りに迷惑をかけている感じがして、俺は小さく頷いた。
「……行きます」
悠が心配そうにこっちを見ていたけど俺は一人でいいと言って教室を出た。
教室を出た瞬間、少しだけホッとした。
でも廊下に出た途端、冷たい空気を吸ってまた咳が出る。
保健室は一階で、階段をゆっくり降りる。いつもならすぐの距離が今日はなんだか遠く感じた。
「失礼します…けほっ」
保健室のドアを開けると、保健の先生がすぐに来てくれた。
「どうしたの?咳がひどいみたいね。ソファに座って」
「授業中から止まらなくて…」
上履きを脱いで、ドアの横のソファに座る。
先生は俺の顔をじっと見て、「熱はないかな? 一応測ってみましょうか」と言いながら体温計を手渡してきた。
俺はそれを受け取り、脇に挟んだ。
咳すると疲れるんだよなあ。
体温計の音がピピっと鳴って、先生がそれを確認する。
「熱はないみたいね。でも咳がひどいから少し横になってみましょうか。担任の先生には伝えておくからね」
「はい」
ベッドに連れて行かれて横になると咳が減って楽になってきた気がする。
そのまま目をつぶると、だんだん体の力が抜けていくのが分かる。
あ、寝そう。と思った瞬間には意識がふわっと遠のいていった。
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