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波瀾万丈の王都生活
逃避行は続くよどこまでも~死んでもろて編~
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復活した巨大スライムは、先程までと同じ機敏な動きを見せる。
多少は学習能力があるのか、他の生存者を盾にしたり、襲う素振りを見せて生存者側の動きを制限したりと、優馬達が手を出しにくい状況を作り出す。
「見た目だけではなく、性根もとことんまで汚い生物だな!実に不愉快だ!」
「原生生物のクセに、調子に乗るなよ……」
唯一の救いは、攻撃力はさほど変わっていないことと、優馬と共に立つ剣豪が疲れを知ることもなく戦い続けていることだろう。
魔法、剣術、それらをバランスよく扱い、被害者を出すことも怪我をすることもなく、スライムを攻める。
なおかつ、優馬や生存者への指示も下しているのだ、戦場に指揮官として居た期間は決して短くないだろう。
「十時方向の二人は物陰へ!四時方向の三人は今のうちに移動を!そう簡単に、愛すべき民は殺させないッ!」
壁に生存者を押し潰し、そのまま吸収しようとしていたスライムは、勢いよく壁に突っ込み、激突。
ダメージになったかは微妙だが、小さくはない隙が生まれる。
「触手男とは違い、電撃が通るならば……!」
彼は剣に込めた魔力を雷に変換し、先端へと凝縮させ、それをスライムに突き入れた。
体内で迸る数千万、あるいは数億にも及ぶ電圧の雷。
スライムは青白く輝き、まるで痙攣するかのように体表の触手が硬直、弛緩を繰り返す。
「お前は滅ぼす!この国を支える者として、必ず!全てを打ち砕く天よりの輝きを受けるがいい!『轟雷連斬』ッ!!」
常軌を逸した高圧電流により、身動きの自由を奪われたスライムを、彼は幾度も幾度も斬りつける。
その度に眩い閃光が辺りを包み、落雷が如く轟きが響き渡る。
そしてその斬撃が十に及んだとき、紅く輝く業火の剣を手にした優馬が、スライムへと飛びかかる。
「あのラフレシアの時のように……いや、それ以上の火力で、極大汚物を消毒してやる!」
「熱き業火、輝く雷光、その力を持って消し去らん!」
今一度、人類が軽く触れればその瞬間に弾け飛ぶほどの電流を、彼は剣に迸らせる。
そして高く飛び上がり――
「『炎龍息吹』ッ!!」
「『#絶滅に猛る雷神の鎚____#エクスティンクトールズスレッジ』ッ!!」
少年と大臣、否、二人の猛者の渾身の一撃が、穢れの塊に叩き付けられる。
まさに雷神の御業と言うべき雷に体を変質、粉砕され、吹き飛んだ体は全て灰塵に帰すような業火に飲み込まれ、焼失する。
「大臣さんと比べるとショボいですけど……ユーマくん、ちゃんと育ってますね。この戦いは……及第点ってところですか」
生存者達とは違い、エルは彼らの繰り出す技の応酬、そして最後の一撃までしっかりと見届けていた。
そして、彼女は人知れず、小さく拍手を送る。
「……やったかッ!?」
「少年よ!その言葉は、討てなかったばかりか反撃を受けて散っていく者の言葉だ!こういう時は……こう言うのだッ!」
生体反応を失い、残った体が液状化していくスライムに剣を突き立て、彼は叫ぶ。
「ここにッ!我々は勝利したッ!!」
生存者達は、まだこの戦いが終わっていない、まだ脱出できていない、それを踏まえた上でも、少しだけ安堵した。
「や、やったあああっ!かっ、かっ、勝ったあああっ!!たすか、た、たす、助かったあああっ!!」
否、このヤブ医者だけは何故か全てに打ち勝ったかのような喜びようだった。
彼はあまりにうるさかったので、エルに後頭部を殴られ、失神させられた。
「ユーマくん、今回はどうでした?やりきった感あります?」
完全に液状化したスライムをゴミを見る目で見つめながら、エルは問う。
「正直言うと、あんまり。こちらの剣豪将軍の圧倒的な力と比べれば、俺なんてたいしたことはないよ」
「そこまで卑下すること無いですよー。ユーマくんがちゃんとタイミングを合わせた。火力も出せた。そうじゃなかったらまだ生きてますよ、この汚物」
「そうだぞ、ユーマ!君は素晴らしい戦士だ!きっといずれは、私よりももっと強く、大きな男に成るだろう!」
明るく笑いながら、バシバシと優馬の肩を叩く。
少年ではなく、戦士として名を呼んでくれた、その事実に優馬は笑みを浮かべる。
「さて、行きますよ。階下に、ケガレモノの気配が集まっています。それを全滅させれば、恐らくここは解放されます」
二人の猛者と、一人の少女は、他の生存者を残して進む。
生きる道を掴むために。
「汚物がどうなるべきか、腐った脳天に叩き込んでやる」
「うむ、その意気だぞユーマ!」
「あ、私は基本見学ですからね。手負いですし。お二人で頑張ってください」
「いや戦わんかい」
階下に降りていく三人を、集ったケガレモノとその首魁が見つめていた。
多少は学習能力があるのか、他の生存者を盾にしたり、襲う素振りを見せて生存者側の動きを制限したりと、優馬達が手を出しにくい状況を作り出す。
「見た目だけではなく、性根もとことんまで汚い生物だな!実に不愉快だ!」
「原生生物のクセに、調子に乗るなよ……」
唯一の救いは、攻撃力はさほど変わっていないことと、優馬と共に立つ剣豪が疲れを知ることもなく戦い続けていることだろう。
魔法、剣術、それらをバランスよく扱い、被害者を出すことも怪我をすることもなく、スライムを攻める。
なおかつ、優馬や生存者への指示も下しているのだ、戦場に指揮官として居た期間は決して短くないだろう。
「十時方向の二人は物陰へ!四時方向の三人は今のうちに移動を!そう簡単に、愛すべき民は殺させないッ!」
壁に生存者を押し潰し、そのまま吸収しようとしていたスライムは、勢いよく壁に突っ込み、激突。
ダメージになったかは微妙だが、小さくはない隙が生まれる。
「触手男とは違い、電撃が通るならば……!」
彼は剣に込めた魔力を雷に変換し、先端へと凝縮させ、それをスライムに突き入れた。
体内で迸る数千万、あるいは数億にも及ぶ電圧の雷。
スライムは青白く輝き、まるで痙攣するかのように体表の触手が硬直、弛緩を繰り返す。
「お前は滅ぼす!この国を支える者として、必ず!全てを打ち砕く天よりの輝きを受けるがいい!『轟雷連斬』ッ!!」
常軌を逸した高圧電流により、身動きの自由を奪われたスライムを、彼は幾度も幾度も斬りつける。
その度に眩い閃光が辺りを包み、落雷が如く轟きが響き渡る。
そしてその斬撃が十に及んだとき、紅く輝く業火の剣を手にした優馬が、スライムへと飛びかかる。
「あのラフレシアの時のように……いや、それ以上の火力で、極大汚物を消毒してやる!」
「熱き業火、輝く雷光、その力を持って消し去らん!」
今一度、人類が軽く触れればその瞬間に弾け飛ぶほどの電流を、彼は剣に迸らせる。
そして高く飛び上がり――
「『炎龍息吹』ッ!!」
「『#絶滅に猛る雷神の鎚____#エクスティンクトールズスレッジ』ッ!!」
少年と大臣、否、二人の猛者の渾身の一撃が、穢れの塊に叩き付けられる。
まさに雷神の御業と言うべき雷に体を変質、粉砕され、吹き飛んだ体は全て灰塵に帰すような業火に飲み込まれ、焼失する。
「大臣さんと比べるとショボいですけど……ユーマくん、ちゃんと育ってますね。この戦いは……及第点ってところですか」
生存者達とは違い、エルは彼らの繰り出す技の応酬、そして最後の一撃までしっかりと見届けていた。
そして、彼女は人知れず、小さく拍手を送る。
「……やったかッ!?」
「少年よ!その言葉は、討てなかったばかりか反撃を受けて散っていく者の言葉だ!こういう時は……こう言うのだッ!」
生体反応を失い、残った体が液状化していくスライムに剣を突き立て、彼は叫ぶ。
「ここにッ!我々は勝利したッ!!」
生存者達は、まだこの戦いが終わっていない、まだ脱出できていない、それを踏まえた上でも、少しだけ安堵した。
「や、やったあああっ!かっ、かっ、勝ったあああっ!!たすか、た、たす、助かったあああっ!!」
否、このヤブ医者だけは何故か全てに打ち勝ったかのような喜びようだった。
彼はあまりにうるさかったので、エルに後頭部を殴られ、失神させられた。
「ユーマくん、今回はどうでした?やりきった感あります?」
完全に液状化したスライムをゴミを見る目で見つめながら、エルは問う。
「正直言うと、あんまり。こちらの剣豪将軍の圧倒的な力と比べれば、俺なんてたいしたことはないよ」
「そこまで卑下すること無いですよー。ユーマくんがちゃんとタイミングを合わせた。火力も出せた。そうじゃなかったらまだ生きてますよ、この汚物」
「そうだぞ、ユーマ!君は素晴らしい戦士だ!きっといずれは、私よりももっと強く、大きな男に成るだろう!」
明るく笑いながら、バシバシと優馬の肩を叩く。
少年ではなく、戦士として名を呼んでくれた、その事実に優馬は笑みを浮かべる。
「さて、行きますよ。階下に、ケガレモノの気配が集まっています。それを全滅させれば、恐らくここは解放されます」
二人の猛者と、一人の少女は、他の生存者を残して進む。
生きる道を掴むために。
「汚物がどうなるべきか、腐った脳天に叩き込んでやる」
「うむ、その意気だぞユーマ!」
「あ、私は基本見学ですからね。手負いですし。お二人で頑張ってください」
「いや戦わんかい」
階下に降りていく三人を、集ったケガレモノとその首魁が見つめていた。
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