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波瀾万丈の王都生活
前科がつきました、優馬です。
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「やんだ」
「こんな狭いところで病まないでくださいよぉ」
俺達は今、二人仲良く牢屋に閉じ込められている。
俺達が何したっていうんだ。
時は、数時間前に遡る……。
俺達は王都に到着し、まず最初に衛兵に声をかけた。
迷いの森とやらでオタクの兵隊が死んでいたので、弔ってやったと。
するとそいつは仲間を一人呼び、俺達を城まで連れていくと言い始めた。
歓待ルート来たかと思って喜び勇んで街を歩く俺達。
「すっげー栄えてるなぁ。なんかアレだな、ゲームのファンタジー世界そのものの世界って感じだな」
「ちょっと前のヨーロッパ風の街並みですよね。今でも街並みだけなら似かよったところがあると思いますよ」
「よく言う中世ヨーロッパ風世界と実際のその時代とでは、情景違ってるとかもよく聞くよな」
「ユーマくん、あんまりフィクションとかファンタジーとか楽しめなさそうですね」
「何コイツ、うるさ」
街行く人々は栄える街の中で楽しげに過ごしている。
広場を駆け回る子供も居れば、露店で串焼きを売っているおっさんもいる。
現代のブティックもあれば、武器屋なるものまでそこにはある。
村にあった武器屋よりも幾分立派だ。
「近付いてきましたよ。立派なお城ですね」
「うへぇ……。マジでヨーロッパに行かなきゃ近付けないと思ってたぞ。すげぇな、これが城の迫力か」
「日本にも立派なお城あるじゃないですか。私はそっちの方が好きですねー」
城の中からは、付き添いの兵士がもう二人追加され、俺達の左右に来た。
「おー、俺達VIP待遇じゃね?」
「いや、これはもしかして……」
この時点で、エルはきっと気が付いていたんだろう。
俺達が歓待されるためではなく、罪人としてぶちこまれるために連れてこられていたことが。
「お前達、下がれ」
偉そうなてっぺんハゲの前に連れて来られた俺達は、とりあえずその場に座らされた。
床に座らせるとか正気かよと思ったんだよ、この時は。
「私は当国の法務執行担当大臣。貴様らの処分を決めるのが私、と思えばいい」
「は?処分?」
いきなりこんなことを言われたら、そりゃあ驚きもする。
縄をかけられるわけでもなく、普通にお散歩気分でここまで来たらいきなりコレだもの。
ふざけんじゃないよホントに。
ふとエルをミルと、あぁやっぱり……みたいな顔をしていた。
……怪しく思ったらもっと早く言え。
「ちょっと待って、どう言うことですか?なんで俺らが……処分?処分って何、は?」
「口を慎め!大臣の前であるぞ!」
「いや恐っ!?」
怒鳴られたし槍を向けられた。
どないなっとんねんホンマ。
「貴様らは知らずの内に罪を犯しているようだな。無断で遺体を埋葬するなど、どんな事情があっても死体遺棄の罪に他ならぬ」
「はぁ!?いい加減にしてくださいよ、ハゲコラ。こっちはヤバイから隠すとかそういう目的じゃねぇんだぞ?弔うためにっ……あ、はい、黙りまーす」
槍の圧力には逆らわない。
優馬、覚えました。
「鉱山の魔物の討伐、森林の怪生物の討伐、そしてその善意を鑑み、処分は軽く済ましてやる。だが、そのまま釈放とは行かぬ。……牢へ入れておけ」
「あ、一応認めてくれるのかその辺は」
という、納得しろと言う方が難しい理由でぶちこまれました、優馬です。
高校生なのに死体遺棄の前科とか笑えない。
「うーん、でも、なんっかおかしいですよねぇ……」
エルは難しい顔で何事かを考えている。
扱いに納得がいかないのは俺も同じだが、エルの思考のベクトルはちょっと違うらしい。
「普通はユーマくんの世界と同じで、裁判があるんですよ。そっちの世界ではどうか知りませんけど、あのハゲ大臣にも裁判官の権限はあります。……とは言え、あんな大臣の部屋でいきなり処分とか、前代未聞ですよ」
「……え、俺、消される?」
嫌な予感しかしない。
超法規的措置で俺、死ぬのでは?
元々異世界からの渡来人、生きていられちゃ困るのかもしれない。
「死ぬかは分かりません。でも案外悪くない待遇ですよ。ほら、手足も自由!」
「でも槍は向けられたけど」
言われてみれば、確かに一切の拘束をされていない。
危うく槍とキスする羽目になっていたが。
エルは何気にこの状況を楽しんでいるのか、このクソ狭い牢屋の中でヲタ芸をし始めた。
そんな全力でやらんといてほしい、しかも根性棒振り回してるし。
「ふぅー……すっきり。それに、街中でも大捕物にならなかったですよね。ボディチェックとありませんでしたし。そんなザル警備で罪人、或いは容疑者を、大通りのど真ん中を通らせるなんて、あり得ないんですよ」
「俺達に警戒させないため、では?」
「だから、警戒も何も真っ先に捕まえちゃえば関係無いんですよ。で、裏道からさっさと引っ張っちゃえばいいんです。……でも、なんでそれをしなかったんだろう」
二人で考えていても、らちが明かない。
だが言われてみれば、確かに容疑者相手とは思えないほど、いろいろとユルい。
槍は向けられたけど。
「まぁ、大丈夫です。処刑されそうになったら、ちゃんと助けてあげますから!」
「それはありがたい。……でも、これまでの違和感を考えると、いきなり処刑されることもないような気がするんだよなぁ。槍は向けられたけど」
「いやめっちゃ根に持つじゃないですか」
「アイツ魔王の後ぐらいで地べたにキスさせるわ。マジでクソうぜぇ」
「まぁまぁ、これがお仕事ですから。それに、ユーマくんも今言ってましたけど、処されると決まったわけでもないですしね!」
とても容疑者や罪人とは思えない様子で話していると、隣の牢屋から声が聞こえた。
牢屋にぶちこまれているとは思えないほど、穏やかで親しみのある、そんな声が。
「僕の兵士が不躾な対応をしたみたいで、申し訳ないね」
顔の見えないその男は、確かにそう口にしていた。
「こんな狭いところで病まないでくださいよぉ」
俺達は今、二人仲良く牢屋に閉じ込められている。
俺達が何したっていうんだ。
時は、数時間前に遡る……。
俺達は王都に到着し、まず最初に衛兵に声をかけた。
迷いの森とやらでオタクの兵隊が死んでいたので、弔ってやったと。
するとそいつは仲間を一人呼び、俺達を城まで連れていくと言い始めた。
歓待ルート来たかと思って喜び勇んで街を歩く俺達。
「すっげー栄えてるなぁ。なんかアレだな、ゲームのファンタジー世界そのものの世界って感じだな」
「ちょっと前のヨーロッパ風の街並みですよね。今でも街並みだけなら似かよったところがあると思いますよ」
「よく言う中世ヨーロッパ風世界と実際のその時代とでは、情景違ってるとかもよく聞くよな」
「ユーマくん、あんまりフィクションとかファンタジーとか楽しめなさそうですね」
「何コイツ、うるさ」
街行く人々は栄える街の中で楽しげに過ごしている。
広場を駆け回る子供も居れば、露店で串焼きを売っているおっさんもいる。
現代のブティックもあれば、武器屋なるものまでそこにはある。
村にあった武器屋よりも幾分立派だ。
「近付いてきましたよ。立派なお城ですね」
「うへぇ……。マジでヨーロッパに行かなきゃ近付けないと思ってたぞ。すげぇな、これが城の迫力か」
「日本にも立派なお城あるじゃないですか。私はそっちの方が好きですねー」
城の中からは、付き添いの兵士がもう二人追加され、俺達の左右に来た。
「おー、俺達VIP待遇じゃね?」
「いや、これはもしかして……」
この時点で、エルはきっと気が付いていたんだろう。
俺達が歓待されるためではなく、罪人としてぶちこまれるために連れてこられていたことが。
「お前達、下がれ」
偉そうなてっぺんハゲの前に連れて来られた俺達は、とりあえずその場に座らされた。
床に座らせるとか正気かよと思ったんだよ、この時は。
「私は当国の法務執行担当大臣。貴様らの処分を決めるのが私、と思えばいい」
「は?処分?」
いきなりこんなことを言われたら、そりゃあ驚きもする。
縄をかけられるわけでもなく、普通にお散歩気分でここまで来たらいきなりコレだもの。
ふざけんじゃないよホントに。
ふとエルをミルと、あぁやっぱり……みたいな顔をしていた。
……怪しく思ったらもっと早く言え。
「ちょっと待って、どう言うことですか?なんで俺らが……処分?処分って何、は?」
「口を慎め!大臣の前であるぞ!」
「いや恐っ!?」
怒鳴られたし槍を向けられた。
どないなっとんねんホンマ。
「貴様らは知らずの内に罪を犯しているようだな。無断で遺体を埋葬するなど、どんな事情があっても死体遺棄の罪に他ならぬ」
「はぁ!?いい加減にしてくださいよ、ハゲコラ。こっちはヤバイから隠すとかそういう目的じゃねぇんだぞ?弔うためにっ……あ、はい、黙りまーす」
槍の圧力には逆らわない。
優馬、覚えました。
「鉱山の魔物の討伐、森林の怪生物の討伐、そしてその善意を鑑み、処分は軽く済ましてやる。だが、そのまま釈放とは行かぬ。……牢へ入れておけ」
「あ、一応認めてくれるのかその辺は」
という、納得しろと言う方が難しい理由でぶちこまれました、優馬です。
高校生なのに死体遺棄の前科とか笑えない。
「うーん、でも、なんっかおかしいですよねぇ……」
エルは難しい顔で何事かを考えている。
扱いに納得がいかないのは俺も同じだが、エルの思考のベクトルはちょっと違うらしい。
「普通はユーマくんの世界と同じで、裁判があるんですよ。そっちの世界ではどうか知りませんけど、あのハゲ大臣にも裁判官の権限はあります。……とは言え、あんな大臣の部屋でいきなり処分とか、前代未聞ですよ」
「……え、俺、消される?」
嫌な予感しかしない。
超法規的措置で俺、死ぬのでは?
元々異世界からの渡来人、生きていられちゃ困るのかもしれない。
「死ぬかは分かりません。でも案外悪くない待遇ですよ。ほら、手足も自由!」
「でも槍は向けられたけど」
言われてみれば、確かに一切の拘束をされていない。
危うく槍とキスする羽目になっていたが。
エルは何気にこの状況を楽しんでいるのか、このクソ狭い牢屋の中でヲタ芸をし始めた。
そんな全力でやらんといてほしい、しかも根性棒振り回してるし。
「ふぅー……すっきり。それに、街中でも大捕物にならなかったですよね。ボディチェックとありませんでしたし。そんなザル警備で罪人、或いは容疑者を、大通りのど真ん中を通らせるなんて、あり得ないんですよ」
「俺達に警戒させないため、では?」
「だから、警戒も何も真っ先に捕まえちゃえば関係無いんですよ。で、裏道からさっさと引っ張っちゃえばいいんです。……でも、なんでそれをしなかったんだろう」
二人で考えていても、らちが明かない。
だが言われてみれば、確かに容疑者相手とは思えないほど、いろいろとユルい。
槍は向けられたけど。
「まぁ、大丈夫です。処刑されそうになったら、ちゃんと助けてあげますから!」
「それはありがたい。……でも、これまでの違和感を考えると、いきなり処刑されることもないような気がするんだよなぁ。槍は向けられたけど」
「いやめっちゃ根に持つじゃないですか」
「アイツ魔王の後ぐらいで地べたにキスさせるわ。マジでクソうぜぇ」
「まぁまぁ、これがお仕事ですから。それに、ユーマくんも今言ってましたけど、処されると決まったわけでもないですしね!」
とても容疑者や罪人とは思えない様子で話していると、隣の牢屋から声が聞こえた。
牢屋にぶちこまれているとは思えないほど、穏やかで親しみのある、そんな声が。
「僕の兵士が不躾な対応をしたみたいで、申し訳ないね」
顔の見えないその男は、確かにそう口にしていた。
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