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鉱山開放、俺達貧乏
作戦決行
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これが異世界転生の小説だったらどれだけ良かったことか。
俺は今ごろ、あのクソデカムカデをチート能力で粉砕してやんややんやと持ち上げられて、財宝山ほどもらって凱旋してただろうに。
「さあ、キリキリ歩く!言うなればボス戦です!気合い入れていきましょう!」
「何と戦っても俺の場合はボス戦だよクソが」
鉱山最深部に進むのは、俺とエルと武器屋のおっさんだ。
責任を感じたのでついてくると言い出した、タフなナイスガイだ。
どうせなら俺の代わりに行ってくれよ、もう。
「あの化け物が相手では……とも思ったが、それでも今の装備は決して悪くない。信用してくれ」
俺が今着ているのは、鉄製の鎧をあのムカデの甲殻で覆ったものと、同じくムカデの甲殻で防御力をあげた兜だ。
そしてなんと、集めた鉱石で立派な剣まで作ってもらった。
ムカデをモチーフにした装飾が付いている以外は、一般兵と同等の装備らしい。
「ムカデといえば、お侍さんや大名の間では縁起のいい生き物だったんですよ。後ろに進まないことや、勇猛に見える攻撃性……。ユーマくんもそうあれますように!」
「後ろに進めないだけで、逃げない訳じゃねぇけどな」
道の途中で、ムカデの甲殻片が散らばり始める。
ヤツの存在は近い。
「もう少し進むと、巨大な広間のような空間がある。以前はそこが鉱山内での拠点だったんだが……」
「今では虫けらの居城、か」
幸か不幸か、道中での遭遇はなかった。
ヤツは今、その拠点とやらでいびきでもかいているのかもしれない。
「……ところで、私の役割って本当にコレなんですか?女の子にやらせることじゃなくないですか?」
「でも出来るのは他に居ねぇんだから、諦めろ」
「そんなだからモテないんですよ」
「ムカデの次はお前だ、首を洗って待っていろ」
「ぶー」
「ぶーじゃねぇよ」
年頃の男女っぽい不毛なやり取りをしている間に、遂に俺達は最深部へと到達した。
「すっげ……。結構な高さまで吹き抜けてる……」
「ここを掘り当てた時から、もう吹き抜けてたらしい。あの高さまで松明を設置するのは大変だったらしいが……お嬢ちゃん、君は本当に便利な魔法を使えるな」
だが俺は、この地底のアスレチックスタジアム染みた空間が自然に出来たものとは考えられなかった。
恐らく、あのムカデかまた別のモンスターが住んでいた場所を、村人達が奪ってしまった、そんな気がしてならない。
「辺り一面にムカデの魔石が……。あのムカデ、どこから襲ってくるか分かりませんよ」
「二人とも、絶対に気を抜くんじゃ――」
その時だ、足元が大きく揺れ始めたのは。
二人は突然の出来事に驚き戸惑っているが、俺は違う。
これでも地震大国に生まれた男児、地震かそうでないかくらいの判別は――
「今だ、飛び退けェッ!」
――二人に迫る危険を回避させる程度には、出来てしまったりする。
地中から飛び出したムカデは、恐ろしい叫び声をあげながら襲いかかってくる。
鎌に見えていたものはヤツの大顎、毒の有無は分からないが、当たればそんなことは関係なしに即死するだろう。
「これが……鉱山のヌシか……!」
「これから殺す相手をヌシとか言わないでくれよおっさん!手筈通りに行くぞ!特にエル、頼んだぞ!」
俺とおっさんが常人の域を脱していない中、唯一常人離れしているエルがこの戦いの要だ。
エルは重大さを分かっているのかいないのか微妙な感じだが、それでも確かにこういった。
「任せておいてくださいよ。ユーマくんより、私の方が賢いので!」
その減らず口を最後に、エルの姿が俺の視界から消え去った。
俺は今ごろ、あのクソデカムカデをチート能力で粉砕してやんややんやと持ち上げられて、財宝山ほどもらって凱旋してただろうに。
「さあ、キリキリ歩く!言うなればボス戦です!気合い入れていきましょう!」
「何と戦っても俺の場合はボス戦だよクソが」
鉱山最深部に進むのは、俺とエルと武器屋のおっさんだ。
責任を感じたのでついてくると言い出した、タフなナイスガイだ。
どうせなら俺の代わりに行ってくれよ、もう。
「あの化け物が相手では……とも思ったが、それでも今の装備は決して悪くない。信用してくれ」
俺が今着ているのは、鉄製の鎧をあのムカデの甲殻で覆ったものと、同じくムカデの甲殻で防御力をあげた兜だ。
そしてなんと、集めた鉱石で立派な剣まで作ってもらった。
ムカデをモチーフにした装飾が付いている以外は、一般兵と同等の装備らしい。
「ムカデといえば、お侍さんや大名の間では縁起のいい生き物だったんですよ。後ろに進まないことや、勇猛に見える攻撃性……。ユーマくんもそうあれますように!」
「後ろに進めないだけで、逃げない訳じゃねぇけどな」
道の途中で、ムカデの甲殻片が散らばり始める。
ヤツの存在は近い。
「もう少し進むと、巨大な広間のような空間がある。以前はそこが鉱山内での拠点だったんだが……」
「今では虫けらの居城、か」
幸か不幸か、道中での遭遇はなかった。
ヤツは今、その拠点とやらでいびきでもかいているのかもしれない。
「……ところで、私の役割って本当にコレなんですか?女の子にやらせることじゃなくないですか?」
「でも出来るのは他に居ねぇんだから、諦めろ」
「そんなだからモテないんですよ」
「ムカデの次はお前だ、首を洗って待っていろ」
「ぶー」
「ぶーじゃねぇよ」
年頃の男女っぽい不毛なやり取りをしている間に、遂に俺達は最深部へと到達した。
「すっげ……。結構な高さまで吹き抜けてる……」
「ここを掘り当てた時から、もう吹き抜けてたらしい。あの高さまで松明を設置するのは大変だったらしいが……お嬢ちゃん、君は本当に便利な魔法を使えるな」
だが俺は、この地底のアスレチックスタジアム染みた空間が自然に出来たものとは考えられなかった。
恐らく、あのムカデかまた別のモンスターが住んでいた場所を、村人達が奪ってしまった、そんな気がしてならない。
「辺り一面にムカデの魔石が……。あのムカデ、どこから襲ってくるか分かりませんよ」
「二人とも、絶対に気を抜くんじゃ――」
その時だ、足元が大きく揺れ始めたのは。
二人は突然の出来事に驚き戸惑っているが、俺は違う。
これでも地震大国に生まれた男児、地震かそうでないかくらいの判別は――
「今だ、飛び退けェッ!」
――二人に迫る危険を回避させる程度には、出来てしまったりする。
地中から飛び出したムカデは、恐ろしい叫び声をあげながら襲いかかってくる。
鎌に見えていたものはヤツの大顎、毒の有無は分からないが、当たればそんなことは関係なしに即死するだろう。
「これが……鉱山のヌシか……!」
「これから殺す相手をヌシとか言わないでくれよおっさん!手筈通りに行くぞ!特にエル、頼んだぞ!」
俺とおっさんが常人の域を脱していない中、唯一常人離れしているエルがこの戦いの要だ。
エルは重大さを分かっているのかいないのか微妙な感じだが、それでも確かにこういった。
「任せておいてくださいよ。ユーマくんより、私の方が賢いので!」
その減らず口を最後に、エルの姿が俺の視界から消え去った。
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