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高校1年生

第17話 六花とベッドで…

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 2学期に入り、2週間が経った。
 長期の休み明けということもあり、普段の学校生活に慣れるのも時間がかかった。
 正直なところ夏休み明けの学校って、「だるいー」とか「めんどくせー」とか思わなかった?俺はもちろん毎日のように思ってたさ!
 まぁ、俺の個人的な心情はこの際どうでもいいとして、休日の出来事である。
 この日は先週の体育祭の影響もあり、振替休日になっていた。
 
 「それにしても今日はいい天気だなぁ」

 朝の9時。
 目が覚めた俺はベッドから身を起こすと、すぐさまにカーテンの向こう側にある窓の外を覗いた。
 昨日までは大雨だったが、一晩で止んだようだ。

 「……よし!こういう日には2度寝に限るな!」

 俺はもともと疲れやすい体質だから十分に睡眠をとらないと死んでしまう!
 ということで、起きて10秒でベッドに戻った俺はすぐに夢の世界に舞い戻った。

 それから何時間経ったのだろうか。
 なんの夢を見ていたか一瞬で忘れたが、ふと、隣に柔らかい感触が伝わってきた。
 ――なんだろう……妙に柔らかくて暖かいな…
 腕に伝わってくる柔らかさと程よい温もりが何とも心地よい。
 でも、それが何なのか検討がつかない。抱き枕は……そもそも持ってねぇ!
 ――うーん…気になるなぁ…もう目を開けて確認するしかない!
 恐る恐る目を開けると、俺の隣にいたのは…

 「り、りりり六花?!」

 思わず絶叫してしまった。
 その驚きのせいで、眠気もすっきり爽快!一瞬にして目がぱっちりだよ!
 
 「ん……なんでしょーくんがここに?」

 俺の絶叫で目を覚ましたのか、目をこすりながら起き上がる六花。
 ノースリーブのタンクトップということもあり、少しエロい。
 
 「なんでって俺が…」

 「っ?!……バチン!」

 言いかけた瞬間に六花のビンタを喰らった。
 ああ。たぶんあれだ。さっきまでは寝ぼけていて今意識が覚醒したんだ。それで反射的に俺を殴ったと。

 「酷くね?!」

 「な、なななんでしょーくんがここにいるのよ!ここは私の部屋なんだよ?…もしかして私を襲いに…キャーッ!バチンバチン」

 さらに往復ビンタを喰らう俺。残りのHPがヤバい…回復薬を使わないと!
 
 「お、落ち着け!部屋の周りをよく見ろ!」

 「バチンバチン…え?」

 ……やっと往復ビンタの嵐が止んだ。
 殴られ続けた頬に手を当てると、妙に膨れ上がっているのだが…気のせいだろうか?

 「あ、あれ?……」

 一方で、事態に気づいたのか六花は目を丸くして部屋の周りを見続けていた。

 「はぁ…気づいただろ?ここは…お前の部屋じゃねえ!俺の部屋だ!」

 「じゃあ…なんで私はここに…?」

 「知るかっ!」

 まったく、迷惑にもほどがある。
 勝手に俺の部屋に入ってきた挙句に、俺のベッドで寝て。しかも、起きたら、変な濡れ衣を着せて往復ビンタ。
 これは賠償問題だな。

 「おーい、何しれっと部屋から出ようとしてんだぁ?」

 気が付くと、六花は足音を立てないように部屋の出入り口付近まで進んでいた。
 
 「い、いやぁ…出ようとはしてないよ…あははははは」

 六花の笑顔が引きつって見えるのは気のせいだろうか。
 とりあえず謝ってもらわないといけないよね!

 「まずは、この頬どうしてくれるんだ?」

 俺はパンパンに腫れあがった頬を指で指し示す。
 ――せめて、治療費ではないが、何かおごってもらわないと。

 「ごめんなさい…もうしませんから」

 ペコリと頭を下げる。

 「それだけか?普通ならお詫びとして何かするだろ?」

 ――そう、せめて、何かおごってもらわないと。
 すると、六花は神妙な面持ちになり、

 「で、では、私の体で……」

 「俺を何だと思ってんだ!」

 今のテレビドラマでもそんなセリフ聞いたことねぇぞ?
 一気にこいつの将来が心配になってきたよ!
 悪いやつとかにつかまなければいいんだけどなぁ。

 「じゃあ、何をすればいいの?性処理の手伝い?」

 「お前……わざと言ってるだろ?」

 キョトンとした表情で変なことを言いまくってるが、絶対にわざとだな。てか、現に指摘したら舌を出して「テヘペロ♪」みたいなことしたし。

 「ただ、何かおごってくれればいい」

 「それだけでいいの?」

 「ああ」

 俺は多くを望まない主義なんでね!
 
 それから、数時間後。
 俺は気が付けば、3度寝をしていた。
 慌ててベッドから身を起こし、カーテンの向こう側の窓から外を見ると、あんなに爽やかな青空だったのが、オレンジ色に染まり始めていた。
 
 「そういえば、腹減ったな…」

 朝、昼と何も食べずにずっと寝ていたから腹時計も騒音のごとく鳴り響いている。
 ずっと眠り続けていたいが、それをしてしまうと餓死してしまうので仕方なくリビングの方に向かうことにした。

 「おーい、六花?いないのかー?」

 リビングに着くと、そこには誰もいなかった。
 六花の部屋にも行ったが返事がなかったので出かけているのだろう。

 「はぁ…カップラーメンでも食べるか」

 こういう時こそぼっちの味方カップラーメン!
 手軽に調理できるからいいよね!お湯を注ぐだけで5分待てばできるから、もう…これ発明した人天才だよ!
 俺は素早くカップラーメンの下ごしらえを終え、お湯を注ぎ終わると、六花に電話をかけることにした。
 
 「…あいつ…電話でるかなぁ」

 一応、俺もこう見えて心配している。何せ、今日の昼の出来事でさらに心配だ。
 でも、六花も16歳だし、そこのところは心配ないと思うが。

 「……でないな」

 六花に何度か電話をかけてみたもののでる気配なし!
 その間にカップラーメンできちゃったよ!
 ということで、カップラーメンでもいただきますかね。

 六花が家に帰ってきたのは午後7時半だった。
 帰ってくるなり、少しは怒鳴りつけてやろうと思ったのだが、六花の両手には大きい紙袋が2つ握られていた。

 「その荷物どうしたんだ?」

 「ああ、これ?」

 両手に握られている大きい紙袋2つを俺の目の前に差し出す。
 
 「とりあえず、これ持ってリビングに来て」

 「うん……お、おもっ!」

 差し出された大きい紙袋2つを受け取った瞬間、一気に俺の両手が重力により、真下に持ってかれた。…危うく肩が外れるかと思ったよ。

 リビングに大きい紙袋2つを運び終えると、六花は着替えてくるということで自分の部屋に向かっていった。
 ――それにしてもこの大きい紙袋の中身は何なんだ?
 中身を確かめたいところだが、六花からは「私が着替えてくるまで開けたり、中身を覗いたりしたらダメだからね!」ときつく言われたので、ここは我慢!
 でも、そう言われると気になっちゃうのが人間の本能なんだよねぇ。
 
 「…形だけならいいよな」

 紙袋の外から中に入っているものを感触で確かめた。
 1つの紙袋の中には複数の箱があるようで、もう1つの紙袋の中には大きい箱が1つ。
 ――テレビゲーム機とか?いやいや、そんなの買ったら今月の生活費なくなるんじゃないか。
 六花は俺の家庭と違い、毎月の生活費を海外に出張している両親に一定額を振り込んでもらっている。毎月いくらなのかは知らないが、間違いなく、足りなくなるに違いない。

 「ねぇ…なにしてんの?」

 「え……?」

 何か怒気をはらんだ声がしたような気がしたんだが……気のせいだよね!

 「そんなわけないでしょ?」

 「そ、そうですよね…あははは」

 後ろをゆっくりと振り返ると、そこには笑顔の六花がいた…しかし目は笑っていない。
 
 「ち、違うんだ!ただ、ホコリを払っていただけ!」

 嘘をつくなゴミみたいな目でみつめてくる六花。
 ハハハ…分かってたさ。自分でもこの言い訳は苦しいことぐらいさ!

 「はぁ…まぁ、中身を見ていないならいいんだけどさ」

 六花はそう言うと、「その紙袋を開けてみて」と目線でそう指示してきた。
 俺はそれに従い2つの紙袋を素早く開けてみると、中には…

 「PZ4?!」

 1台が4万円ぐらいするZONYのテレビゲーム機一式が入っていた。
 六花は俺の反応に満足したのか鼻を鳴らし、

 「ふふん、ちゃんとおごってやったんだからこれで文句ないでしょ?」

 いやいや、六花さん!文句たくさんありますよ!
 
 「こんなの買って、これからの生活費とかどうするの?」

 「それは大丈夫」

 六花のズボンポケットから取り出されたのは「ヘソクリ」と書かれた一枚の封筒。
 ああ、なるほど。そういうことか。

 「でも、よくそんなにヘソクリがあったな」

 一式なのでコントローラも合わせて、5万円はしたと思うが。

 「それは、毎日の節約のおかげね!」

 そういえば、六花って、あまり買い食いとか無駄なお金を使ってたところ見たことないな。
 
 「じゃあ、私はお風呂に入ってくるね」

 「いや、ちょっと待て」

 六花が立ち去ろうとしたところを止め、1つ言いたいことを言った。

 「俺がおごれっと言ったのはこういう事じゃなくて、昼飯とかジュースとかそういうことだ!」

 内心ではラッキーとは思っているが、それでもこれだけは言っとかないと!

 「え、そうなの?」

 「そうだよ。だから、今度からはこういう高いもの買ってくるなよ」

 こうして、この日は終わったのだが、結局俺がこのゲームにかかったお金を六花に支払うことにした。
 結局は自分のお金で買ったことになったじゃないか!俺のお小遣いが……

 「ゼロね」

 「うるせぇ!誰のせいだと思ってんだ!バーカバーカ」

 俺の通帳には残高がゼロになっていた。
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