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高校1年生

第5話 上目遣いの練習で恐怖!

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 ラブコメというものはなぜいつもこうなのだろうか。
 なんの取り柄もない一見普通のどこにでもいる主人公がある事をきっかけにヒロインとなる女の子と出会う。
 そこからいろいろな試練、困難を乗り越え、2人の距離はグッと縮まり、最後にはハッピーエンド!
 もちろん、その間にハーレムコースなどもあるが、一般的なラブコメはこんな感じだろう。
 俺も「そんな事が起きたらいいのにな」とか「このヒロインカワウィー!」とかアニメを見ながら妄想していた。
 そして、妄想が激し過ぎてノートに書き残してたっけ。
 でも現実ではそう上手いこといかないんだよなぁ。
 ……はぁ。

 「今日の議題はコレよ」

 『求人部』創部から翌日。
 六花はホワイトボードに何かを書き始め、早速俺達は放課後、部活動に励んでいた。
 部室は今では使われていない教室。
 正直やる気にはなれないのだが妙に美月のやつがやる気に満ち満ちている。

 

 ホワイトボードになぐり書きされたそれを見て思った。
 ……この部活本当に大丈夫かと。
 一方美月はというと、両手を拝むように組んで目をキラキラ輝かせている。
 お前男だよな?!
 少なくとも俺には関係ない議題なので宿題でもするかと思い長机の上に筆記用具とノートを取り出す。

 「何してんの?」

 「いや、俺には関係ないことだから宿題でもしようと思って」

 すると、お前何ほざいてんの?みたいな目をしながら六花は言う。

 「しょーくんには私の相手役になってもらいます」

 今「」って言ったよな?
 それとも俺の気のせいだろうか?

 「いや、気のせいじゃないよ。私との2人でやるから」

 なんで俺の心が読めたの?!

 「ちょ、ちょっと待ってくれ!なんで美月もやるんだ?」

 美月は男だろ?
 ならば、やる必要はないじゃないか。

 「私1人より2人の方がいいでしょ?」

 「つまり……あれか。人数補給のためか」

 「うん、そーいうこと」

 ふぅ……。
 びっくりした。
 一瞬美月って女の子だと思ってしまった。
 ただでさえ、容姿が中性ぽいからそう思ってしまうのも仕方がない。

 「それじゃあ早速私からするよー」

 六花はそう言うと、俺の目の前までぐぐっと近づいてきて、その上目遣いとやらをした。

 「ど、どうだった?わ、私のこと……好きになった?」

 「あー……えーと……」

 そんな期待した目で言われると余計言いにくくなるよ!
 正直六花の上目遣いは…………酷かった。
 なんと言えばいいだろうか。
 ……………………アヘ顔だった。
 一部の男子にはウケる……というか性的興奮を覚えさせるかもしれない。

 「六花ちゃん……キモかったよ」

 って、おおおおおおおおいいいいいいいいいい!
 美月そこは正直に言っちゃダメだろ?!
 せめて言葉を濁すとか遠回しに言うとかなかったの?!
 そんな俺をよそに美月は最後のトドメを刺した。

 「これ。写真撮ったから見てみたら?」

 美月が差し出したスマホを六花は受け取り…………固まってしまった。
 顔が引きつったまま、口の端がピクピク痙攣して顔色が真っ青になっていく。

 「お、おい……大丈夫か?」

 「だ、だだだだだ大丈夫…アハハハハハ。」

 六花の冷たくて乾いた笑い声が部室中に響いた。


 「つ、次は美月ちゃんの番だね…」

 それから数分後、まだ先程のダメージが残っていながらも部活を続けようとする六花。

 「よし、翔太いくよ?」

 六花と同様に美月は俺にぐぐっと近づいてきて、上目遣いをした。

 「ど、どうだった?」

 美月は頬を紅くしながら感想を求めてきた。
 
 「どう……て言われてもな……」

 本当に女の子かと思うぐらい照れた様子が可愛い。
 ……じゃなくて、上目遣いのことだった。
 美月の上目遣いは正直…………六花と同等かそれ以上だった。
 それ以上というのはつまり……酷かったという意味。
 上目遣いを通り越して白目剥いてたから一瞬何かに取り憑かれたかと思ったほどだ。
 こんなの写真に撮って、夜中メールで送られてきたら、怖くてトイレにも行けなくなる。

 「美月ちゃん……キモかったよ」

 って、おおおおおおおおいいいいいいいいいい!
 何正直に言ってるの六花は?!
 さっきの仕返しか?!
 そして、先程見たようなことを六花はした。

 「写真撮ったから見てみたら?」

 六花のスマホを美月は受け取り………………固まってしまった。
 顔色がどんどん真っ青になり、開いた口がパクパクと陸に打ち上げられた魚のようになっている。

 「お、おい……大丈夫か?」

 「だ、だだだだだ大丈夫…アハハハハハ。」

 美月の冷たくて乾いた笑い声が部室中に響いた。
 て、これさっきもこんなんだったけど、俺ループしてないだろうな?

 部活動が終わったころ、美月と六花は疲れ果てていた。
 部活中ずっと上目遣いの練習をしていたせいか、2人とも何か秘められた力に目覚めたようで「目がぁ……目がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」とか言ってた。
 まぁ、これはただ俺の解釈であって、たぶん上目遣いをやりすぎたせいで目がシパシパしているのだろう。
 こんな部活よく学校側も認めてくれたなと思う。
 でも、ずっとこんな状態であれば廃部になるのも時間の問題。
 そもそも正式な部活動ではなく『同好会』だし。

 
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