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大学生
第2話
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ある日のことだった。
俺は次の授業に参加するためにキャンパス内を歩いていた。
――それにしても広いなぁ。
この鹿島大学は全部の建物を合わせると、十五棟ほどある。
しかも、ほとんどが四階以上の建物ばかりで正直、ここまで必要ないだろと思ったほどだ。
そのため、入学したばかりの新入生には校内の地図が渡されるのだが…………今日に限って忘れてしまった。
今の状況はもう分かったかな?俺、今年で十九歳なのに迷子になっちゃった!笑笑笑
◆❖◇◇❖◆
「あ、あの……ぼ、僕と付き合ってください!」
四号館を過ぎた辺りで、そのようなセリフが聞こえてきた。
――誰か告白してんのか?
ここは来た道を戻って、他の道から教室に向かおうと思ったが…やはり気になってしまった。
俺は近くの隠れられそうな木の裏で誰が誰に告白してるのか、ひょっこりして確認した。
すると……――え…何?あの長蛇の列は?
男子十名ほどが列を作り、ある一人の少女に手を差し伸べていた。
――なるほど。あの差し伸べている手を少女が握れば、付き合うってことか……って…………はぁ?!
思わず絶叫してしまい、とっさに木の影に隠れた。
そして、バレてないか、もう一度確認すると、幸いなことに誰も気づいた様子はなかった。
で、なぜ俺が絶叫したかと言うと、相手の少女だ。
もう簡潔に言ってしまうと、俺の長年の同居人である夏川六花だった。
高校の時は、毎日のように告られてるとかウワサで耳にしたことがあったと思うが、まさか大学でも同じようになるなんて……本人も思っていなかっただろう。
――さぁ、誰と付き合うんだ?……って、六花は……。
俺はあることを思い出した。
というか、今思い出すんじゃなかった。
たしか、高校二年の時だったかな?
俺は一度、六花に告られたことがあった。その時は幼なじみや親友の双子の妹にまで告られて、ラブコメ界で定番な言わゆるハーレム状態で、かつ、修羅場だったが……。
でも、あの時六花はいつまでも待ってるみたいなことを言っていた。
――でも……やっぱり月日が流れると好きな人もさすがに変わるよなぁ。
俺は六花の告白を受け入れたわけでもなければ、断ったわけでもない。保留状態だった。
「私……その……」
六花が告白してきた相手を順序よく見回した後、頭を深々と下げた。
「ごめんなさい!皆さんの気持ちは嬉しいけど……わ、私には好きな人がいるの!だから……」
その言葉を聞いた瞬間、告白した男子たちは分かりやすく落ち込んでしまった。
一方で俺は、ホッとしていた。
なぜこんなにも安心しているのだろうか。全く分からなかった。
そして、そんな自分が何とも歯がゆく感じてしまった。
俺は次の授業に参加するためにキャンパス内を歩いていた。
――それにしても広いなぁ。
この鹿島大学は全部の建物を合わせると、十五棟ほどある。
しかも、ほとんどが四階以上の建物ばかりで正直、ここまで必要ないだろと思ったほどだ。
そのため、入学したばかりの新入生には校内の地図が渡されるのだが…………今日に限って忘れてしまった。
今の状況はもう分かったかな?俺、今年で十九歳なのに迷子になっちゃった!笑笑笑
◆❖◇◇❖◆
「あ、あの……ぼ、僕と付き合ってください!」
四号館を過ぎた辺りで、そのようなセリフが聞こえてきた。
――誰か告白してんのか?
ここは来た道を戻って、他の道から教室に向かおうと思ったが…やはり気になってしまった。
俺は近くの隠れられそうな木の裏で誰が誰に告白してるのか、ひょっこりして確認した。
すると……――え…何?あの長蛇の列は?
男子十名ほどが列を作り、ある一人の少女に手を差し伸べていた。
――なるほど。あの差し伸べている手を少女が握れば、付き合うってことか……って…………はぁ?!
思わず絶叫してしまい、とっさに木の影に隠れた。
そして、バレてないか、もう一度確認すると、幸いなことに誰も気づいた様子はなかった。
で、なぜ俺が絶叫したかと言うと、相手の少女だ。
もう簡潔に言ってしまうと、俺の長年の同居人である夏川六花だった。
高校の時は、毎日のように告られてるとかウワサで耳にしたことがあったと思うが、まさか大学でも同じようになるなんて……本人も思っていなかっただろう。
――さぁ、誰と付き合うんだ?……って、六花は……。
俺はあることを思い出した。
というか、今思い出すんじゃなかった。
たしか、高校二年の時だったかな?
俺は一度、六花に告られたことがあった。その時は幼なじみや親友の双子の妹にまで告られて、ラブコメ界で定番な言わゆるハーレム状態で、かつ、修羅場だったが……。
でも、あの時六花はいつまでも待ってるみたいなことを言っていた。
――でも……やっぱり月日が流れると好きな人もさすがに変わるよなぁ。
俺は六花の告白を受け入れたわけでもなければ、断ったわけでもない。保留状態だった。
「私……その……」
六花が告白してきた相手を順序よく見回した後、頭を深々と下げた。
「ごめんなさい!皆さんの気持ちは嬉しいけど……わ、私には好きな人がいるの!だから……」
その言葉を聞いた瞬間、告白した男子たちは分かりやすく落ち込んでしまった。
一方で俺は、ホッとしていた。
なぜこんなにも安心しているのだろうか。全く分からなかった。
そして、そんな自分が何とも歯がゆく感じてしまった。
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