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高校生
第87話 最後のクリスマスパーティー
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「で、これって……なに?」
最初にそのことを口に出したのは珍しくも美月だった。
そして、みんな一様にその謎の物体を見つめている。
「何言ってるの?どう見てもシチューじゃない」
そう答えたのはほかでもない、謎の物体を開発した調理者の亜美だ。
俺たちはその答えを聞くと、もう一度目をこすってよく見た……が、どう見てもジャイアンシチューにしか見えない。
どうなったらこんな紫色になるのだろうか。
野菜や肉は腐敗したようにドロドロになっており、腐っていないはずなのに鼻を曲げるような異臭を放っている。
現実世界で実際にジャイアンシチューを再現したのは亜美が初めてではないだろうか。
いつか歴史の教科書に載るレベルの功績だと思う。
「さぁ、パーティーを始めましょ」
亜美の掛け声で渋々そうすることにした。
俺たちは毎年こうしてクリスマスパーティーを行っている。
招待するメンバーもだいたい決まっており、今年も亜美、美月、水姫を招待している。
でも、今年のクリスマスパーティーはやりたくない。
だって……テーブルに置かれている料理すべてが腐敗しているように色が悪いんだもん。
異様な存在感を放っているリアルジャイアンシチューは特にね!
「さぁさぁ、早く食べて!」
パーティーが開催されるとともに自分の手料理を進めてくる亜美。
「ぼ、僕はいいよ!おなか減ってないし」
「わ、私もいいです」
「私も遠慮するわ!」
みんな次々へと亜美の手料理を避けようと、必死に逃げている。
これは地獄だな。
そして、みんなに食べてもらえない亜美はしょんぼりとしたが、俺を見つけるなり、
「隼人は食べるよね?ねぇ、食べたいよね?」
と、威圧感とともに迫ってきた。
俺は一気にリビングの窓際まで追い詰められていた。
――誰か…助けて…
助けを求めるように六花を見た。
「この度はご愁傷さまです。故人のご冥福をお祈りいたします」
と、合掌して俺を見つめ返していた。
――いや、俺まだ死んでないよ?!勝手に殺さないでくれるかな?!
六花が助けてくれないということが分かったので次は美月を見た。
「……でさ、あれ面白いよね!本当に…あはははは」
一瞬、俺の助けを求める視線に気づいたが……無視しやがった。
――クッソ、なんで無視すんだよ。てか、君は誰と話してるのかな?君の目の前誰もいないよね?
こうなると、最後の望みである水姫を潤んだ目で見てやった。
「亜美ちゃん、泣きたいぐらい……」
おっ、助けてくれるのか!
さすが水姫!もう、だぁい好きっ!
「食べたいらしいよ!そのシチュー!」
って、おおおおおおおいいいいいいいいい!
助けてくれるんじゃなかったの?!
…しかもよりにもよってリアルジャイアンシチューを言いやがった。
もう、だぁい嫌いっ!
「そんなに食べたいなら言ってくれればいいのに」
と、嬉しそうに亜美はリアルジャイアンシチューをスプーンですくい、俺の口に押し付けてきた。
なんとか抵抗しようと、必死に口を堅く閉ざしていたが、それも虚しく、口に異物が侵入。
「っ?!」
「どう?おいしい?」
なんだこれは…?
ブドウの酸味とみんな大好きカルピスの味が混ざり合い、それプラス腐敗したような野菜の臭さと生臭い肉がマッチしてもう………
「オオオオウウウエエエエエエエエエエエエ……」
気が付けば、その場で吐き出していた。
そして、亜美の様子を見る間もなく意識が遠のき、視界が真っ暗になった。
最初にそのことを口に出したのは珍しくも美月だった。
そして、みんな一様にその謎の物体を見つめている。
「何言ってるの?どう見てもシチューじゃない」
そう答えたのはほかでもない、謎の物体を開発した調理者の亜美だ。
俺たちはその答えを聞くと、もう一度目をこすってよく見た……が、どう見てもジャイアンシチューにしか見えない。
どうなったらこんな紫色になるのだろうか。
野菜や肉は腐敗したようにドロドロになっており、腐っていないはずなのに鼻を曲げるような異臭を放っている。
現実世界で実際にジャイアンシチューを再現したのは亜美が初めてではないだろうか。
いつか歴史の教科書に載るレベルの功績だと思う。
「さぁ、パーティーを始めましょ」
亜美の掛け声で渋々そうすることにした。
俺たちは毎年こうしてクリスマスパーティーを行っている。
招待するメンバーもだいたい決まっており、今年も亜美、美月、水姫を招待している。
でも、今年のクリスマスパーティーはやりたくない。
だって……テーブルに置かれている料理すべてが腐敗しているように色が悪いんだもん。
異様な存在感を放っているリアルジャイアンシチューは特にね!
「さぁさぁ、早く食べて!」
パーティーが開催されるとともに自分の手料理を進めてくる亜美。
「ぼ、僕はいいよ!おなか減ってないし」
「わ、私もいいです」
「私も遠慮するわ!」
みんな次々へと亜美の手料理を避けようと、必死に逃げている。
これは地獄だな。
そして、みんなに食べてもらえない亜美はしょんぼりとしたが、俺を見つけるなり、
「隼人は食べるよね?ねぇ、食べたいよね?」
と、威圧感とともに迫ってきた。
俺は一気にリビングの窓際まで追い詰められていた。
――誰か…助けて…
助けを求めるように六花を見た。
「この度はご愁傷さまです。故人のご冥福をお祈りいたします」
と、合掌して俺を見つめ返していた。
――いや、俺まだ死んでないよ?!勝手に殺さないでくれるかな?!
六花が助けてくれないということが分かったので次は美月を見た。
「……でさ、あれ面白いよね!本当に…あはははは」
一瞬、俺の助けを求める視線に気づいたが……無視しやがった。
――クッソ、なんで無視すんだよ。てか、君は誰と話してるのかな?君の目の前誰もいないよね?
こうなると、最後の望みである水姫を潤んだ目で見てやった。
「亜美ちゃん、泣きたいぐらい……」
おっ、助けてくれるのか!
さすが水姫!もう、だぁい好きっ!
「食べたいらしいよ!そのシチュー!」
って、おおおおおおおいいいいいいいいい!
助けてくれるんじゃなかったの?!
…しかもよりにもよってリアルジャイアンシチューを言いやがった。
もう、だぁい嫌いっ!
「そんなに食べたいなら言ってくれればいいのに」
と、嬉しそうに亜美はリアルジャイアンシチューをスプーンですくい、俺の口に押し付けてきた。
なんとか抵抗しようと、必死に口を堅く閉ざしていたが、それも虚しく、口に異物が侵入。
「っ?!」
「どう?おいしい?」
なんだこれは…?
ブドウの酸味とみんな大好きカルピスの味が混ざり合い、それプラス腐敗したような野菜の臭さと生臭い肉がマッチしてもう………
「オオオオウウウエエエエエエエエエエエエ……」
気が付けば、その場で吐き出していた。
そして、亜美の様子を見る間もなく意識が遠のき、視界が真っ暗になった。
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