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高校生

第53話 台風の日の六花ちゃん

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 再びフリーとなった俺は一人ぼっちで休日を過ごしていた。
 
 「あー。暇だぁ……」

 「さっきからうるさい!」

 「あー。わりぃー」

 今、俺は六花と家のリビングでゴロゴロしている。
 そーいえば、六花が初めて来たときなんて、俺がゴロゴロしてても、六花は礼儀正しく勉強とかしてたっけ。
 でも、今となっては馴染んできたのか、自分の家のように毎日ゴロゴロしている。
 あのときの六花はどこにいったのやら……
 そんなことを考えているときに六花が何かを思いついたように提案してきた。

 「そうだ!いい事思いついた!」

 「ん?」

 大概、コイツの「思いついた」はろくなことしかない。
 とりあえず暇だし、聞くことにした。

 「遊園地行こうよ!」

 「無謀すぎるよ!」

 一応、今の状況をみんなにも教えておくと、「暇ならどこかに外出すればいいじゃん」って思ったかもしれない。だけど、外の天候が最悪だ。
 今日は台風がちょうど直撃している。だから、外は暴風と横殴りの雨で外出はできないのだ。
 なのにコイツ……
 台風の日に遊園地に行くやつなんているか!
 そもそも営業してないだろ!
 それに近くに遊園地はない!
 これでどんだけの無謀か分かったでしょ!

 「チッ!」

 「舌打ちするな!それとなんだよその目は!」
 
 獲物を狙っているライオンの目で俺を睨みつけている。
 というか、睨まれる理由が分からん。
 俺はお互いの安全を考えて……って、正論をただ言っているだけだからね?!
 
 「……仕方ない……隼人、エキサイトなことしよ?」

 「エキサイトなことってなんだよ?!」

 「そ・れ・は♡男と女がベッドで……」

 「あぁぁあああ!!!もー分かった!説明しなくていい!」

 仕方ないでそれになるのだろうか……
 本当に最近の六花はおかしい。
 六花って、こんなに肉食で変態だったか?
 何かあるたびに迫ってくるから俺の自制心を保つのにもひと苦労だ。

 「じゃあ、ベッドにいこ?」

 「は?」

 六花がいきなり着ている服をはだけさせ、肩を露出させている。
 たぶん、俺を誘惑しているのだろう。

 「六花……残念だな。俺はそんな誘惑には負けない!」

 「ふーん……じゃあ、これならどう?」

 六花はそう言うと、自分の胸元に手を伸ばし、服を……

 「ダメダメダメぇぇええ!!!」

 「ふぇ?」

 「それより、俺はそんなことはしないよ!絶対にしないんだからね!」

 「いいじゃんかよー。お嬢ちゃん少しだけね?ね?」

 どこぞのおやじのセリフだよ!俺、お嬢ちゃんじゃねーし。お前だろ。お嬢ちゃんは!
 てか……なんか立場が逆転してね?
 普通は俺が襲うオオカミで六花が赤ずきんちゃんなのに。
 まぁ、このさいどうでもいい。なんとか、オオカミ六花の手から逃れなければ!
 ……ということで、俺は自分の部屋に逃げ込んだのだった。

 「待ってぇええ!!!逃げるんじゃねぇ!」

 もー。どっちが男なのか分からないわ。
 部屋に逃げ込んだあと、俺はドアに鍵をかけた。
 これで入られることはないだろう。
 だが、そのあとが地獄だった。

 「ドンドンドンドンドン……いるんだろ?ほらほらー」

 「勘弁してください!」

 「いいからここを開けろやゴラァ」

 「うぅ……本当に勘弁してくだしゃい……」

 俺は最後、涙目になりながらドア越しにいる六花に懇願した。
 って、これなんの芝居?
 客観的に見て、ただの借金取りと貧乏人のコントみたいになってない?
 それになんで最後、俺は涙目になっているんだよ!
 なんか、六花のやつ……やりたい放題しやがって!
 
 「おい!ゴラァ!やりたい放題しやがって!なめんじゃねぇぞ!」

 俺は六花を少しビビらせようと思い、勢いよくドアを開けると、そこに立っていたのは……上半身裸の六花でした。
 
 「計画通り……」

 「あわわわわ……」

 衝撃で口が上手く言葉を発せられない。
 六花の2つの小山から目が離せない。
 先端はピンクで尖っている。
 小さいけど触りたくなるような……って、そんなことを考えるな俺!
 なんとか、自制心で我を保ちながら、やっとのことで言葉を発することができた。

 「にゃ、にゃにをしているんだ!」

 噛みましたね。
 
 「何って……見てわからない?」

 六花は少し恥ずかしいのだろうか、顔を赤くして上目遣いでそう言った。
 もう限界……俺のヤンチャな部分がパンクしそうだよ…

 「にゃにをし、してるか分からないにゃ」

 動揺しているのが丸分かりじゃねーか俺!

 「じゃあ……教えてあげる」

 そう六花は言うと、俺に近づいてきた。
 どんどんと俺と六花の距離は縮まっていく。
 あと1メートル……あと30センチ……
 それと同時に俺の鼓動も破裂せんばかりに早くなっていく。
 あと……10センチ……もうダメだ!ごめん!神様!
 と、思ったそのとき……

 「バリーン……」

 ガラスの割れる音がした。
 俺は慌てて六花を置き去りにし、音のしたリビングの方に向かうと、窓ガラス1枚が粉々に割れていた。
 そこから暴風と雨が入ってきている。
 
 「六花!俺はここを塞ぐから早く服着て部屋に入ってろ!」

 「……うん」

 六花は少し残念そうな顔をしていた。
 まぁ、窓ガラスが割れたおかげでなんとか自制心を保てたけど。
 あのままだったら、今頃は……
 考えただけで変な気持ちになってしまうので割れた窓ガラスの補修に集中したのだった。
 その日はそれ以降、六花から迫られることもなく、翌日には台風も過ぎ去っていった。
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