上 下
6 / 120
高校生

第5話 学校イチ美少女とラブコメ

しおりを挟む
 夏休みももう終わりを向かえるころのことだ。
 俺は普段と変わりなく家でゴロゴロしていた。
 室内はエアコンの温度を二十五度に設定しているため、とても涼しい。
 そんな中、俺は部屋のテレビで録画しておいた今流行りのアニメを見ていた。題名は諸事情により言えないが、主人公は公務員を目指している高校生で、ある日突然、一人の美少女(ヒロイン)から膝蹴りを喰らう。最悪の出会いとなった二人はお互いを嫌うのだが、そのころ街ではヤクザとギャングの抗争が勃発し、今でも戦争が起きそうな状態だった。そのとき、ヤクザの跡取りである主人公とギャングのお嬢様であるヒロインが偽カップルを演じることで抗争を止めようとヤクザの組長とギャングのボスが話し合い、この二人は偽カップルとなった。まあ、あらすじはこんなものだ。ジャンル的にはラブコメね。
 俺はこのアニメを見ながら、ふと、思った。ラブコメっといえば、俺と六花って…ラブコメ的状況だよな!シチュエーション的にもそうだし、だいたいラブコメって、最終的には主人公とヒロインって結ばれるよね!……ということは、俺と六花もいずれは恋人同士になっちゃうのかな?
 そんなことを考えていたとき、六花が俺の部屋に入ってきた。

 「隼人、今日の昼何が食べたい?」

 「なんでもいいよ…てか、勝手に入ってくるなよ!」

 「ごめんごめん笑」

 ったく、俺がもしあんなことやこんなことしてたらどうすんだよ…。いや待て。自分で思ってるのもなんだが、あんなことやこんなことってなんだよ!べ、別にやらしいことじゃないからね!
 そう思っているときに六花がしゃがんでベッドの下をのぞき込んだ。

 「な、何してるの?」

 「ん?えっちな本とかないかなーっと思ってね」

 え?俺の心の中よまれてる?
 俺はなにがなんだかわからなくなってワケを尋ねると…

 「なんとなく。男の子ってそーいう本一冊ぐらいは持ってるんじゃないかなー?って思ってね」

 「じゃあ…もし…その本が見つかったらどうするの?」

 「……内容しだいでは処分する」

 え?「処分する」じゃなくて「内容しだい」で?どういうような内容だったらクリアなのか説明をお願いしたい!だが、お願いしたところで言うはずないよねー。

 「ベッドの下ないじゃん!」

 「あるわけないでしょ!早く出てってよ!」

 なぜ、ベッドの下にあると思ったのか。理由はまあ分かるけどね!俺の秘蔵お宝はそんな中学生が隠すような場所にはないんだよ!わっはははは。

 「……(じーっ)」

 「まだ居たの?!てか、なんで真顔でずっと俺を見ているの?!」

 俺の考えていること全部バレてるの?!そうなるとなんで分かっちゃうの?!…さては秘められた力に目覚めたのかしらん。中二病か!
 とりあえず六花が部屋から出ていったあと、続きのアニメを見ようとしたら…

 「一時停止ボタン押すの忘れてた!」

 また最初から先ほどまで見ていたところまで早送りするという手間がかかってしまった。
 そして…今の俺たちの関係を見ても、ラブコメ的な展開にはならないっということを思った。

 アニメを見終わったころ、ちょうど昼の十二時を過ぎたころだった。
 自分の部屋を出て、リビングに向かうと、テーブルには調理されたものが皿にきれいに盛りつけされて並べられていた。

 「今日の昼ごはんはオムライスとスープか!おいしそうだな!」

 「おいしいのは当たり前です!早く手を洗ってきて!」

 「はーい」

 俺は洗面所まで行って手を洗ってくると、六花がもう座って待っていた。俺も席につき、そして…

 「「いただきます!」」

 真っ先にオムライスにスプーンを向け、口に運んだ。

 「うっめぇええええ!!!」

 「だから、おいしいのは当たり前です!」

 俺の反応を見て、六花は少しプンスカしていたが、なんだか嬉しそうだった。
 そりゃー、プンスカするのも分かる。六花の作るごはんはいつもおいしい。だから、おいしそうって言ったら失礼に値する。
 その後、俺は夢中でオムライスとスープを食べ、五分後には食べ終わってしまった。

 「おいしかったー。ごちそうさま!」

 「食べ終わったら、歯磨きをちゃんとするんだよー」

 六花はそう言うと、また食事に戻った。
 なんか……六花、俺の奥さんみたい。将来、絶対いい奥さんになれるよ!この子!
 そう思っていると六花がなぜかむせた。そして顔が真っ赤になっている。もしかして、どこか具合でも悪いのか?

 「ど、どうしたの?!顔が赤いけど、どこか具合でも悪いの?」

 「……何が……俺の……奥さんみたいなのよ!」

 「……へ?」

 「もう、はっきり言うけど…心の声が漏れてるわよ!」

 「……えええええええええええ!!!」

 嘘だろ?!
 ということは俺が思っていたこと全て口に出てたってことなのか?だけど…口を動かした覚えがないぞ?ん?無意識に動いたのか?!
 俺は少しパニックになりながら…

 「お、俺が言っていたことは…ぜ、ぜぜぜ全部忘れて!」

 六花の返事も聞かずに自分の部屋に逃げ込んだ。
 俺の思っていること読まれるなーって思っていたけど…まさか自分の口から出ていたとわ……ある意味自爆じゃねーか!
 六花…俺が思ったこと聞いて…どう思ったんだろ?きもいとか思ってんのかな?……やばい……もうおしまいだ…
 これを機に無意識に口から出ないよう、意識することを心に強く誓った。

 この日の夜。
 俺は昼のこと以来、自分の部屋から一歩も出ず、ただひたすらアニメを見ながら現実逃避をしていた。
 夕食が出来たよっという六花の声がしたため、恐る恐るリビングに向かった。道中、きもいって思ってんのかな?俺のこと嫌いになったかな?などと考えていたが、リビングにつくと、六花は普段と同じように手を洗ってくることを促してきた。
 そして、手を洗い、六花が待っているテーブルの席につくと、今日の夜ご飯はハンバーグかと思い……

 「「いただきます」」

 六花はいつも通りの音量で俺はいつも以下の音量で言った。
 無言でハンバーグを食べていると、六花が優しい声をかけてきた。

 「ねえ…隼人。さっきのことは気にしなくてもいいんだよ?別にきもいとか思ってないし、嫌いにもなってないから」

 「……本当に…?」

 「もちろん!」

 「……良かったぁ!嫌われたかと思いすごく落ち込んでた!」

 すると、六花は顔を少し赤くして……

 「べ、別に嫌いにはならないわよ…」

 その後、六花はものすごい早さで夕飯を食べ終わると、歯磨きをしに、洗面所に向かった。

 「……そっか」

 俺はなぜか安心した。たぶん、嫌われていないことに安心しているんだろう。俺も残りの夕飯を全て食べ終わると、歯磨きをしに六花のいる洗面所に向かった。
 ラブコメ的な展開は、アニメだけであり、現実ではありえないと心の底から思っていたが、少しはありえるのだろうかと思った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

俺の高校生活がラブコメ的な状況になっている件

ながしょー
青春
高校入学を前に両親は長期海外出張。 一人暮らしになるかと思いきや、出発当日の朝、父からとんでもないことを言われた。 それは…… 同い年の子と同居?!しかも女の子! ただえさえ、俺は中学の頃はぼっちで人と話す事も苦手なのだが。 とにかく、同居することになった子はとてつもなく美少女だった。 これから俺はどうなる?この先の生活は?ラブコメ的な展開とかあるのか?!   「俺の家には学校一の美少女がいる!」の改稿版です。 主人公の名前やもしかしたら今後いろんなところが変わってくるかもしれません。 話もだいぶ変わると思います。

三姉妹の姉達は、弟の俺に甘すぎる!

佐々木雄太
青春
四月—— 新たに高校生になった有村敦也。 二つ隣町の高校に通う事になったのだが、 そこでは、予想外の出来事が起こった。 本来、いるはずのない同じ歳の三人の姉が、同じ教室にいた。 長女・唯【ゆい】 次女・里菜【りな】 三女・咲弥【さや】 この三人の姉に甘やかされる敦也にとって、 高校デビューするはずだった、初日。 敦也の高校三年間は、地獄の運命へと導かれるのであった。 カクヨム・小説家になろうでも好評連載中!

天ヶ崎高校二年男子バレーボール部員本田稔、幼馴染に告白する。

山法師
青春
 四月も半ばの日の放課後のこと。  高校二年になったばかりの本田稔(ほんだみのる)は、幼馴染である中野晶(なかのあきら)を、空き教室に呼び出した。

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。 遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。 本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。 優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。 そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。 凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。 「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」 「気にしない気にしない」 「いや、気にするに決まってるだろ」 ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様) 表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。 小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

処理中です...