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第13話 何があった?
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翌日。
俺は普段通りに登校の準備をしていた。
今日はさすがに舞も朝早くから来ていなかったみたいで、俺もゆっくりと朝食をとることができる。
そして、食べ終えると、カバンを手に玄関に向かい、家を出る。
「いってきまーす」
中にいる母さんにそう伝えると、俺は家のドアを開け、外に出た。
門前には当たり前のように人影があるが……どうしたんだろう? 舞しか見当たらないんだが……。
寝坊でもしたのかと当初は思ったが、あの完璧超人にはありえない。まだ家から出て来ていないだけか、それか先に学校に行ったかのどちらかだろう。
俺はそう思い、門を出る。
またいつものように遅いだのいつまで待たせる気なのよとか言われるんだろうなぁと憂鬱になっていると……あれ?
いつもの罵声が聞こえてこない。
俺はどうしたんだろうと舞の方を見る。
「お、おはよう……」
舞がもじもじしながらしおらしくそう言った。顔がほんのり赤い。
––––何があった?
俺の頭の中はその疑問で一瞬にして埋め尽くされる。
昨日とは違い、いつもの舞ではない様子に戸惑いを隠せないでいると、
「な、なによ……なんか、おかしい……?」
「え、えーと……」
ここは正直に言った方がいいのか?
でも、もし正直に言ってしまえば、なんとなく舞に怒られてしまうような気がする。
俺は平静を装うことにした。
「ぜ、全然おかしいところなんてないよ!」
「そう……なら、よかった……」
舞はそう言うと、小さく嬉しそうに微笑んだ。
––––一体どうしたんだ? 昨日なんかあったのか?
いつもと違う舞に気が狂いそうになる。
あのツンとした態度が和らいだかと思えば、これだ。これはこれで少し対応に困るというのか、とにかくだ。なんか嫌だ。違和感でしかない。
だが、舞はそれをやめようとせず、次の言葉に俺は驚きを隠せなくなってしまう。
「りょーすけ、話があるんだけど……少しいい?」
「あ、ああ……」
「次の土曜日なんだけどさ……で、ででデートに行かない……?」
舞が俺を上目遣いで捉える。
舞ってこんなに可愛かったかと一瞬思ったが、それよりだ。
「お前……頭でも打ったのか?」
ついそんな言葉が無意識に出てしまった。
––––何言ってんだよ俺!
あれだけ平常心を装うって決めてたのにこれだよ。
自分でもヤバいと思ったが、もう時すでに遅し。舞の顔がみるみるうちに赤くなっていく。
「あ、あの……舞さん?」
俺は戦々恐々した面持ちで訊ねる。
すると、先ほどまではどこかしおらしかったのに今はもういつもの舞に戻っていた。
「もうほんっとうに信じられないっ! なんであたしが素直にならなきゃならないの! りょーすけのバカっ! あんぽんたんのおたんこなす!」
そう言われ、俺はボコボコに殴られる羽目になった。
いつもはマッサージかと思うくらい弱い力なのに今回に限ってはめちゃくちゃ痛い。
……今までのは手加減してたの?
そう思ってしまうくらいに俺は殴られ、地面に倒れ伏した。
そう言えばなんだけど、「あんぽんたんのおたんこなす」って最近じゃあまり聞かなくね?
「りょ、りょーくん……」
舞がプンスカ怒りながら一人で登校した直後、今家から出て来たらしいあーちゃんが俺のそばに近寄って来た。
「今の発言はさすがに……ね?」
俺と舞の会話を聞いていたのか、あーちゃんがなんとも言えないような複雑な表情をした後、同じくして舞の後でも追ったのか、俺を置いて先に行ってしまった。
俺は、とりあえず立ち上がり、制服についた砂埃を手で落としていく。
「あの子もあの子だけど……亮介くんにも問題があるわねぇ~」
そんな声が聞こえ、聞こえた方を振り返ると、門の影で舞のお母さんが頭痛でも堪えるかのように頭を抱えているのが見えた。
俺は普段通りに登校の準備をしていた。
今日はさすがに舞も朝早くから来ていなかったみたいで、俺もゆっくりと朝食をとることができる。
そして、食べ終えると、カバンを手に玄関に向かい、家を出る。
「いってきまーす」
中にいる母さんにそう伝えると、俺は家のドアを開け、外に出た。
門前には当たり前のように人影があるが……どうしたんだろう? 舞しか見当たらないんだが……。
寝坊でもしたのかと当初は思ったが、あの完璧超人にはありえない。まだ家から出て来ていないだけか、それか先に学校に行ったかのどちらかだろう。
俺はそう思い、門を出る。
またいつものように遅いだのいつまで待たせる気なのよとか言われるんだろうなぁと憂鬱になっていると……あれ?
いつもの罵声が聞こえてこない。
俺はどうしたんだろうと舞の方を見る。
「お、おはよう……」
舞がもじもじしながらしおらしくそう言った。顔がほんのり赤い。
––––何があった?
俺の頭の中はその疑問で一瞬にして埋め尽くされる。
昨日とは違い、いつもの舞ではない様子に戸惑いを隠せないでいると、
「な、なによ……なんか、おかしい……?」
「え、えーと……」
ここは正直に言った方がいいのか?
でも、もし正直に言ってしまえば、なんとなく舞に怒られてしまうような気がする。
俺は平静を装うことにした。
「ぜ、全然おかしいところなんてないよ!」
「そう……なら、よかった……」
舞はそう言うと、小さく嬉しそうに微笑んだ。
––––一体どうしたんだ? 昨日なんかあったのか?
いつもと違う舞に気が狂いそうになる。
あのツンとした態度が和らいだかと思えば、これだ。これはこれで少し対応に困るというのか、とにかくだ。なんか嫌だ。違和感でしかない。
だが、舞はそれをやめようとせず、次の言葉に俺は驚きを隠せなくなってしまう。
「りょーすけ、話があるんだけど……少しいい?」
「あ、ああ……」
「次の土曜日なんだけどさ……で、ででデートに行かない……?」
舞が俺を上目遣いで捉える。
舞ってこんなに可愛かったかと一瞬思ったが、それよりだ。
「お前……頭でも打ったのか?」
ついそんな言葉が無意識に出てしまった。
––––何言ってんだよ俺!
あれだけ平常心を装うって決めてたのにこれだよ。
自分でもヤバいと思ったが、もう時すでに遅し。舞の顔がみるみるうちに赤くなっていく。
「あ、あの……舞さん?」
俺は戦々恐々した面持ちで訊ねる。
すると、先ほどまではどこかしおらしかったのに今はもういつもの舞に戻っていた。
「もうほんっとうに信じられないっ! なんであたしが素直にならなきゃならないの! りょーすけのバカっ! あんぽんたんのおたんこなす!」
そう言われ、俺はボコボコに殴られる羽目になった。
いつもはマッサージかと思うくらい弱い力なのに今回に限ってはめちゃくちゃ痛い。
……今までのは手加減してたの?
そう思ってしまうくらいに俺は殴られ、地面に倒れ伏した。
そう言えばなんだけど、「あんぽんたんのおたんこなす」って最近じゃあまり聞かなくね?
「りょ、りょーくん……」
舞がプンスカ怒りながら一人で登校した直後、今家から出て来たらしいあーちゃんが俺のそばに近寄って来た。
「今の発言はさすがに……ね?」
俺と舞の会話を聞いていたのか、あーちゃんがなんとも言えないような複雑な表情をした後、同じくして舞の後でも追ったのか、俺を置いて先に行ってしまった。
俺は、とりあえず立ち上がり、制服についた砂埃を手で落としていく。
「あの子もあの子だけど……亮介くんにも問題があるわねぇ~」
そんな声が聞こえ、聞こえた方を振り返ると、門の影で舞のお母さんが頭痛でも堪えるかのように頭を抱えているのが見えた。
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