上 下
9 / 13

第9話

しおりを挟む
 昼休み。
 俺はメールで結花に呼び出された。
 あーちゃんと結花の三人で弁当を食べようと思っていたのだが、どうやら二人きりで話があるようで、俺はあーちゃんに軽く謝った後、指定された場所へと向かう。
 その場所というのは図書室。
 今の時代、インターネットや技術の発達で読書をする人が昔より減ってきていると言われている。
 それはこの学校でも例外ではなく、図書室に通う生徒も全校生徒の百分の一にも満たない。
 だから、この昼休みの時間はほとんどの日が暇で今日も閑散としていた。
 ここなら二人きりで弁当を食べながら話し合うのにもうってつけだろう。
 本当ならここでの飲食は禁止だが、先生も滅多に来ないと図書委員をしている結花からも聞いている。

「あ、ごめんね。急に呼び出したりして」

 図書室に入ると、すぐにカウンターがある。
 そこで座りながら読書をしていた結花が俺に気づき、軽くそう謝った。

「いいや、別にいいんだが……」

「そうだね。まずはあそこの席に座ろうか」

 結花は一番奥にある窓側のテーブルを指で示す。
 俺はそこの席へと向かい、適当な場所に座ると、結花はその対面に座った。

「話は食べながらでもいいよね?」

「あ、ああ、別にいいけど、話ってなんだよ」

「じゃあ、単刀直入で訊くけど、早坂さんとはどういう関係なんだい?」

 結花の目がいつにも増して真剣さを物語っていた。
 たしか結花にはまだあーちゃんのことを話していない。
 昨日の放課後の光景を目の当たりにしたからには、気になっていたのだと思うのだが、そこまで真剣な表情をしなくてもいいのではないか?
 とりあえず、俺はペットボトルのお茶を開け、一口飲んだ後、あーちゃんとの関係を話した。

「えーっと……俺の幼なじみなんだ」

「え? どういうこと?」

「その……つまり、なんというか、この街に引っ越してくる前の街の幼なじみなんだ。昨日の掃除時間にやっと思い出して……」

「へぇ~。だから、あんなにイチャイチャしてたわけだ」

 結花が俺を蔑んだ目で見つめる。

「い、イチャイチャしてたわけじゃ——」

「あれのどこを見たらそうじゃないって言えるのかな? あれはどう見ても誰が見てもイチャイチャしていると捉えられるよ?」

 結花の声がさっきから威圧感を含んでいる。
 ——なぜだ? 俺、何か悪いことでもしたか?
 それから数分、沈黙が流れる。俺と結花は弁当のふたを開けたまま、手を付けようともせず、飲み物だけを口に含んでいる。

「な、なぁ……俺って、何か悪いことでもしたか?」

「したよ。幼なじみの舞ちゃんという人がいながら」

「いやいや、意味が分からん。どういう意味だよ」

「それは僕の口からは言えないし、そもそも亮介は鈍感すぎるんだよ」

「俺が鈍感?」

「そうだよ。僕でさえ、すぐに気づいたのに亮介はまだ気づいていない……いや、もしかして気づいているけど、あえて気づいていないふりでもしているのかな?」

「……いや、それはないと思う。現に結花が何について話しているのかすらも分からないからな」

 そう言うと、結花は「はぁ……」と深いため息をつく。
 結局のところ話とはこのことだったのだろうか?
 だとすれば、結花は一体俺に何を訊きたかったのか……まったく理解できない。

「でも、まぁ、亮介がどちらを選ぼうが僕はとやかく言うつもりはないけどね」

 最後に結花がそんなことを言った後、「早く弁当を食べよ」と言われ、この話は強制的に終了した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

ハチャメチャ数字学園 1から始まるスクールデイズ

青春
数字が人間になったら? 0から始まる!ハチャメチャでドタバタな学園物語 様々な数字達がいます、貴方のお気に入りの数字君たちが見つかれば嬉しいです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

姉らぶるっ!!

藍染惣右介兵衛
青春
 俺には二人の容姿端麗な姉がいる。 自慢そうに聞こえただろうか?  それは少しばかり誤解だ。 この二人の姉、どちらも重大な欠陥があるのだ…… 次女の青山花穂は高校二年で生徒会長。 外見上はすべて完璧に見える花穂姉ちゃん…… 「花穂姉ちゃん! 下着でウロウロするのやめろよなっ!」 「んじゃ、裸ならいいってことねっ!」 ▼物語概要 【恋愛感情欠落、解離性健忘というトラウマを抱えながら、姉やヒロインに囲まれて成長していく話です】 47万字以上の大長編になります。(2020年11月現在) 【※不健全ラブコメの注意事項】  この作品は通常のラブコメより下品下劣この上なく、ドン引き、ドシモ、変態、マニアック、陰謀と陰毛渦巻くご都合主義のオンパレードです。  それをウリにして、ギャグなどをミックスした作品です。一話(1部分)1800~3000字と短く、四コマ漫画感覚で手軽に読めます。  全編47万字前後となります。読みごたえも初期より増し、ガッツリ読みたい方にもお勧めです。  また、執筆・原作・草案者が男性と女性両方なので、主人公が男にもかかわらず、男性目線からややずれている部分があります。 【元々、小説家になろうで連載していたものを大幅改訂して連載します】 【なろう版から一部、ストーリー展開と主要キャラの名前が変更になりました】 【2017年4月、本幕が完結しました】 序幕・本幕であらかたの謎が解け、メインヒロインが確定します。 【2018年1月、真幕を開始しました】 ここから読み始めると盛大なネタバレになります(汗)

【第一章完結】バレンタインまであと少し

にけ❤️nilce
青春
 幼い頃から四人の幼馴染とお菓子作りを楽しんできた、バレンタイン。  今年も一緒に作りたいと思うかなえと由美子だが、中学が別れた杏、凛花の二人とは連絡を取り合っていない。  寂しく思っていたところ、買い出し先のショッピングモールでお洒落に変身した二人と偶然再会する。  女性としての自分に劣等感を抱いていたかなえは、一人置いてけぼりをくらったように感じるが……。  共感によってコンプレックスを乗り越える女の子の物語。 表紙:星影さきさん ※『黒いネコの友達』スピンオフでもあります。(本作は独立しています) バレンタインまであと少しの主人公『高橋かなえ』は本編ではなにかとトラブルを起こす悪役? として登場しています。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

処理中です...