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第3話 昼休み
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午前の授業が終わり、昼休みに入った。
俺はいつものように親友である結花の席に移動し、二人で弁当をつついている。
結花の席は、後方部の左から二列目。ちょうど席を二つ挟んだ横には転入生の早坂さんの席なんだが……
「亮介。早坂さん、こっち見てるんだけど……」
対面に座っている結花が声を潜めながら、俺にそう伝える。
俺は確認のため、横目でちらっと一瞬だけ見る。
「たしかにそうだな……」
ずっとこっちを見ているというわけではないにしろ、ちらちらと俺の方を何度も見てくる。
幸い、俺の視線には気づかなかったみたいだけど、一体今朝のことといい、俺に何があるんだ?
「もしかして、亮介の知り合い……とか?」
「知り合いねぇ~……」
俺は記憶を辿る。
が、いくら過去の記憶にさかのぼっても、あんな美少女と出会ったような記憶は出てこない。
ということは、俺の知り合いとかでもない、ということか?
それとも……ただ単に俺が忘れているだけか?
「違うみたいだね」
結花は卵焼きに箸をのばすと、それを口に運び、はむっと美味しそうに食べながら、再び早坂さんの方に目線を向ける。
「お、おい……少し見すぎじゃ——」
「なるほどねぇ~」
あまりにもじっと見ていたものだから、バレるのではないかとヒヤヒヤしたのだが、早坂さんは気づいていなかったらしく、その間にも俺をちらちらと見ていた。
その様子を観察とでも言うのだろうか? 見ていた結花が何かに気づいたらしい。
「何か分かったのか?」
俺はすかさずそう訊く。
すると、結花はペットボトルのお茶を開け、一口飲む。
「亮介、将来刺されるかもね」
「いきなり何怖いこと言ってんだよ」
「でも、彼女のあの表情は……」
そう言って、言おうか言わないか、言い淀む。
「え?」
「いや、このことは僕の口から言わない方がいいかも」
「もったいぶんなよ」
「もったいぶってないよ。とりあえず、亮介はプレイボーイということだけは分かった」
「意味分かんねぇ……」
結花は結局、何が分かったのだろうか……いくら訊いても教えてくれそうにない。
俺はもやもやした感じが残りながら、結花と一緒に残り少なくなった弁当の中身を平らげた。
☆
私は自分の席で今朝、お母さんが作ってくれたサンドウィッチを食べていました。
初めてこの学校に転入してからの授業を終えた、私はふぅ~と一息をつきながらも、自分の不甲斐なさに嘆きます。
「なんであのとき……」
りょーくんのことがどうしても気になって……自分でも気づかないうちに無意識にりょーくんの方を見て、目が合いそうになったら何度も逸らして……絶対変な子だって思われちゃってるよぉ~!
私は頭を抱えます。
それにりょーくんから話しかけてくれた時もありました。
でも……その時になってどう話していいか、頭が真っ白になって、分からなくなって……
「もぉ! 私のバカバカバカっ!」
頭をぽこぽこと叩きます。
ですが、「何をやってるんだ?」という周りの視線にふと気づいた私は、すぐに我に帰りました。
正直、恥ずかしいです……。
顔が熱くなってくるのを感じながら、残りのサンドウィッチをはむはむと食べます。
……りょーくんと再会できたのは嬉しいけど、このままじゃ——。
意味がありません。まずはりょーくんと話せるようにならなければ!
「となると、やはり作戦というものが……」
何事にも前もって準備することが大事です。
今日は、偶然の出来事だったので、準備らしい準備はしていません。
「で、ですが……準備とは?」
何を準備すればいいのでしょう? 話す内容ですか?
「うぅ~……」
私は考えます。
その間にサンドウィッチを食べ終えたことに、気付き、紙パック式のリンゴジュースにストローを刺して、のどを潤します。
やがて、ストローからズズーッという音が鳴り、空になったことを知ります。
「全然分かんない……」
作戦というものは考えるだけで疲れます。
どうすればいいのかとかいろいろと考えましたが、いいアイデアは思い浮かびません。
やはりそのときで対応しなくちゃいけないのでしょうか……。
コミュニケーション力の低い私には、どの教科の問題よりも難題です。
「それにしても……」
りょーくんの態度が気になりました。
なんと言うのでしょうか……初対面の人と接しているような態度とでも言えばいいのでしょうか?
とにかく、りょーくんはたぶん私のことを覚えていない、かもしれません。
と、言っても、覚えていないことは当たり前と言えばそうです。
約十年も会っていないのですから、二人とも容姿が変わっていて当然です。
仮にりょーくんが昔の私を覚えていたとします。でも、今の私を見て、気づくとは思えません。
私も最初こそ、本当にりょーくんなのか、疑いました。
ですが、りょーくんの右手にあるほくろとか一致しています。
……なんで分かったかって? それは毎日幼い時のりょーくんと私が写ったアルバムを見ているからです……えへへ。
ご、ごほん。
と、ともかくです。りょーくんで間違いないことは確かです。
「どうやって、気づいてもらおうかな……」
何かイベント的な出来事が起きればいいのですが……。
俺はいつものように親友である結花の席に移動し、二人で弁当をつついている。
結花の席は、後方部の左から二列目。ちょうど席を二つ挟んだ横には転入生の早坂さんの席なんだが……
「亮介。早坂さん、こっち見てるんだけど……」
対面に座っている結花が声を潜めながら、俺にそう伝える。
俺は確認のため、横目でちらっと一瞬だけ見る。
「たしかにそうだな……」
ずっとこっちを見ているというわけではないにしろ、ちらちらと俺の方を何度も見てくる。
幸い、俺の視線には気づかなかったみたいだけど、一体今朝のことといい、俺に何があるんだ?
「もしかして、亮介の知り合い……とか?」
「知り合いねぇ~……」
俺は記憶を辿る。
が、いくら過去の記憶にさかのぼっても、あんな美少女と出会ったような記憶は出てこない。
ということは、俺の知り合いとかでもない、ということか?
それとも……ただ単に俺が忘れているだけか?
「違うみたいだね」
結花は卵焼きに箸をのばすと、それを口に運び、はむっと美味しそうに食べながら、再び早坂さんの方に目線を向ける。
「お、おい……少し見すぎじゃ——」
「なるほどねぇ~」
あまりにもじっと見ていたものだから、バレるのではないかとヒヤヒヤしたのだが、早坂さんは気づいていなかったらしく、その間にも俺をちらちらと見ていた。
その様子を観察とでも言うのだろうか? 見ていた結花が何かに気づいたらしい。
「何か分かったのか?」
俺はすかさずそう訊く。
すると、結花はペットボトルのお茶を開け、一口飲む。
「亮介、将来刺されるかもね」
「いきなり何怖いこと言ってんだよ」
「でも、彼女のあの表情は……」
そう言って、言おうか言わないか、言い淀む。
「え?」
「いや、このことは僕の口から言わない方がいいかも」
「もったいぶんなよ」
「もったいぶってないよ。とりあえず、亮介はプレイボーイということだけは分かった」
「意味分かんねぇ……」
結花は結局、何が分かったのだろうか……いくら訊いても教えてくれそうにない。
俺はもやもやした感じが残りながら、結花と一緒に残り少なくなった弁当の中身を平らげた。
☆
私は自分の席で今朝、お母さんが作ってくれたサンドウィッチを食べていました。
初めてこの学校に転入してからの授業を終えた、私はふぅ~と一息をつきながらも、自分の不甲斐なさに嘆きます。
「なんであのとき……」
りょーくんのことがどうしても気になって……自分でも気づかないうちに無意識にりょーくんの方を見て、目が合いそうになったら何度も逸らして……絶対変な子だって思われちゃってるよぉ~!
私は頭を抱えます。
それにりょーくんから話しかけてくれた時もありました。
でも……その時になってどう話していいか、頭が真っ白になって、分からなくなって……
「もぉ! 私のバカバカバカっ!」
頭をぽこぽこと叩きます。
ですが、「何をやってるんだ?」という周りの視線にふと気づいた私は、すぐに我に帰りました。
正直、恥ずかしいです……。
顔が熱くなってくるのを感じながら、残りのサンドウィッチをはむはむと食べます。
……りょーくんと再会できたのは嬉しいけど、このままじゃ——。
意味がありません。まずはりょーくんと話せるようにならなければ!
「となると、やはり作戦というものが……」
何事にも前もって準備することが大事です。
今日は、偶然の出来事だったので、準備らしい準備はしていません。
「で、ですが……準備とは?」
何を準備すればいいのでしょう? 話す内容ですか?
「うぅ~……」
私は考えます。
その間にサンドウィッチを食べ終えたことに、気付き、紙パック式のリンゴジュースにストローを刺して、のどを潤します。
やがて、ストローからズズーッという音が鳴り、空になったことを知ります。
「全然分かんない……」
作戦というものは考えるだけで疲れます。
どうすればいいのかとかいろいろと考えましたが、いいアイデアは思い浮かびません。
やはりそのときで対応しなくちゃいけないのでしょうか……。
コミュニケーション力の低い私には、どの教科の問題よりも難題です。
「それにしても……」
りょーくんの態度が気になりました。
なんと言うのでしょうか……初対面の人と接しているような態度とでも言えばいいのでしょうか?
とにかく、りょーくんはたぶん私のことを覚えていない、かもしれません。
と、言っても、覚えていないことは当たり前と言えばそうです。
約十年も会っていないのですから、二人とも容姿が変わっていて当然です。
仮にりょーくんが昔の私を覚えていたとします。でも、今の私を見て、気づくとは思えません。
私も最初こそ、本当にりょーくんなのか、疑いました。
ですが、りょーくんの右手にあるほくろとか一致しています。
……なんで分かったかって? それは毎日幼い時のりょーくんと私が写ったアルバムを見ているからです……えへへ。
ご、ごほん。
と、ともかくです。りょーくんで間違いないことは確かです。
「どうやって、気づいてもらおうかな……」
何かイベント的な出来事が起きればいいのですが……。
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