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流行りの劇
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貴族のデートといえばどのようなものだろうか?町娘がするように喫茶や甘味処、公園を散策なんてことはしない。
もっと豪華で豪勢なことをする。例えば自邸の庭園を誰にも見られることなく2人きりで散策。例えば大きな美しい船で透き通った湖を渡る。取り寄せた珍味を積み上げてみたり。
多種多様な遊びの中で最もメジャーなのが観劇だ。座席のグレードこそ違えど裕福な平民から王族まで多種多様な人びとが2人で楽しむ。
「ルカ、よく似合っている。会う度に君を愛する気持ちが深まっていくのが分かるよ。いつも、これ以上はないと思うのに。」
忙しい夫と少しでも長く遊ぶため現地集合。驚かせるべくめかしこんだ結果がこれ。勝てない。悔しい。絶対ぐぬぬと言わせてやる。負けない。
つん、とした表情のままルカは手を差し出しエスコートを要求する。
出てくるまで随分時間がかかったことや、うっすら頬が紅くなっていることに、鋭く冷静なものは気がついてヒソヒソ。
もちろん冷静ではないルカは気が付かない。
緞帳が上がる。煌びやかな衣装を着た役者たちがそれぞれの役を演じる様は決してそれそのものでは無い。しかし、心に訴える。まるで、私の半生のような内容で泣きたくなった。
平民の娘として生まれた主人公は1年後に生まれた愛らしい妹に愛情を奪われてしまった。
少し大きくなると掃除は主人公の仕事になった、もう少しすると料理や洗濯、家事と名のつくものはどんどん主人公の仕事になった。
母親が何をしているかと言うと妹の世話をしていた。それ以外は何もせず、自分の面倒を娘に見させていた。たまに帰ってくる父親はそれが正しいと言う妻を信じた。
そんな主人公は人にサリアと呼ばれていた。それは彼女が喋れるようになった頃、彼女に話しかけた近所の女性の名前だった。要するに名付けされていなかったが、それは本人以外気がついていなかった。
一度、それを両親に訴えたが、取り合って貰えず。落ち込むサリア。名付け親のいない娘は悪魔に狙われる。
サリアはこの世界では無い、かと言って魔界でもない場所の知識をもとに、自分にもうひとつ名前をつけた。彼女には前世の知識があった。
これでサリアは2つ目の名前を知られない限り魂を奪われることはなくなった。
そんなサリアを悲劇が襲う。神官から悪魔付きとして告発されたのだ。屈強な騎士に引きずられて連れ去られるサリア。その彼女を母と父と妹は悲しげに見つめるばかりだった。
連れ去られた先で杖で殴られたり、聖水をかけられたり、散々な扱いを受けるサリアの反応が悪魔に疲れたもののそれでは無いため、不思議に思った神官がサリアに尋ねる。
「あなたは、誰ですか?」
「わたしはサリアよ、なんでこんな酷いことをするの。」
「わたしはあなたにふたつの名前があるように見えます。それは悪魔のいる証です。」
「確かに私は2つの名前があるけれどそれがそんなにいけないの?少し人と違うと言うだけであなたは私を虐げるの?」
なにかがおかしい、そう感じた神官たちは彼女についてもっと調べることにした。そして、彼女が両親にかつて放置されていたことを突き止める。
特に、彼女の名付け親が不明なことは重大な問題で、名付け親が居ないと悪魔に狙われやすくなる。また、彼女が名前について両親と揉めたことがあるという証言もあった。彼女の両親は神殿騎士に拘束され、妹は孤児院で保護されることになった。
しばらくして意を決した彼女は神官に自分の名前について全てを打ち明ける。ただ、前世については誤魔化して、2つ目の名前を埋めておけば悪魔につかれずに済むと考えたと話す。神官はまだ秘密があると感じたがそれ以上追求しなかった。
このことがきっかけで事態は180°変わる
両親は財産を没収され妹とはもう二度と会えないことになった。妹はただひとりで生きていくことになるかと思われたが、幼なじみと結婚し幸せそう。
サリアは名付けの問題を解決するため出家し名前を捨てることになった。どちらの名前も深く彼女に結びついているからだ。
出家し、シスター・マリアとなったサリア、あるいはウルスラであった主人公は神の恩寵のもと幸せに暮らしましたとさ。
あっ、これ多分印象操作。外面の良い両親に虐げられた娘の話を流すことで私への印象を変えるのが狙い。
すっと隣を見るの意味ありげにニコリと笑うレオ。これはわざと。獲物を取ってきてしっぽを振る犬の幻影が見える。
自分に忠実なら犬も悪くないなぁ。
ルカは順調に成長していた。
もっと豪華で豪勢なことをする。例えば自邸の庭園を誰にも見られることなく2人きりで散策。例えば大きな美しい船で透き通った湖を渡る。取り寄せた珍味を積み上げてみたり。
多種多様な遊びの中で最もメジャーなのが観劇だ。座席のグレードこそ違えど裕福な平民から王族まで多種多様な人びとが2人で楽しむ。
「ルカ、よく似合っている。会う度に君を愛する気持ちが深まっていくのが分かるよ。いつも、これ以上はないと思うのに。」
忙しい夫と少しでも長く遊ぶため現地集合。驚かせるべくめかしこんだ結果がこれ。勝てない。悔しい。絶対ぐぬぬと言わせてやる。負けない。
つん、とした表情のままルカは手を差し出しエスコートを要求する。
出てくるまで随分時間がかかったことや、うっすら頬が紅くなっていることに、鋭く冷静なものは気がついてヒソヒソ。
もちろん冷静ではないルカは気が付かない。
緞帳が上がる。煌びやかな衣装を着た役者たちがそれぞれの役を演じる様は決してそれそのものでは無い。しかし、心に訴える。まるで、私の半生のような内容で泣きたくなった。
平民の娘として生まれた主人公は1年後に生まれた愛らしい妹に愛情を奪われてしまった。
少し大きくなると掃除は主人公の仕事になった、もう少しすると料理や洗濯、家事と名のつくものはどんどん主人公の仕事になった。
母親が何をしているかと言うと妹の世話をしていた。それ以外は何もせず、自分の面倒を娘に見させていた。たまに帰ってくる父親はそれが正しいと言う妻を信じた。
そんな主人公は人にサリアと呼ばれていた。それは彼女が喋れるようになった頃、彼女に話しかけた近所の女性の名前だった。要するに名付けされていなかったが、それは本人以外気がついていなかった。
一度、それを両親に訴えたが、取り合って貰えず。落ち込むサリア。名付け親のいない娘は悪魔に狙われる。
サリアはこの世界では無い、かと言って魔界でもない場所の知識をもとに、自分にもうひとつ名前をつけた。彼女には前世の知識があった。
これでサリアは2つ目の名前を知られない限り魂を奪われることはなくなった。
そんなサリアを悲劇が襲う。神官から悪魔付きとして告発されたのだ。屈強な騎士に引きずられて連れ去られるサリア。その彼女を母と父と妹は悲しげに見つめるばかりだった。
連れ去られた先で杖で殴られたり、聖水をかけられたり、散々な扱いを受けるサリアの反応が悪魔に疲れたもののそれでは無いため、不思議に思った神官がサリアに尋ねる。
「あなたは、誰ですか?」
「わたしはサリアよ、なんでこんな酷いことをするの。」
「わたしはあなたにふたつの名前があるように見えます。それは悪魔のいる証です。」
「確かに私は2つの名前があるけれどそれがそんなにいけないの?少し人と違うと言うだけであなたは私を虐げるの?」
なにかがおかしい、そう感じた神官たちは彼女についてもっと調べることにした。そして、彼女が両親にかつて放置されていたことを突き止める。
特に、彼女の名付け親が不明なことは重大な問題で、名付け親が居ないと悪魔に狙われやすくなる。また、彼女が名前について両親と揉めたことがあるという証言もあった。彼女の両親は神殿騎士に拘束され、妹は孤児院で保護されることになった。
しばらくして意を決した彼女は神官に自分の名前について全てを打ち明ける。ただ、前世については誤魔化して、2つ目の名前を埋めておけば悪魔につかれずに済むと考えたと話す。神官はまだ秘密があると感じたがそれ以上追求しなかった。
このことがきっかけで事態は180°変わる
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サリアは名付けの問題を解決するため出家し名前を捨てることになった。どちらの名前も深く彼女に結びついているからだ。
出家し、シスター・マリアとなったサリア、あるいはウルスラであった主人公は神の恩寵のもと幸せに暮らしましたとさ。
あっ、これ多分印象操作。外面の良い両親に虐げられた娘の話を流すことで私への印象を変えるのが狙い。
すっと隣を見るの意味ありげにニコリと笑うレオ。これはわざと。獲物を取ってきてしっぽを振る犬の幻影が見える。
自分に忠実なら犬も悪くないなぁ。
ルカは順調に成長していた。
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