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『ヒール152』

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『ヒール152』



 勇者パーティー編


 サリオスはトレイル達と別れた後に、神殿の近くに来ていた。

 トレイルに雑用係を殺すところを見られたのは予定外だった。

「トレイルに見られたな」

「雑用係が逃げ出すのはわかってはいた。なにせカザルスや護衛を目の前で殺したのを見たら、嫌になるでしょうね。まさか勇者のサリオスが卑劣なまねをするとは思いもしなかった。雑用係も逃げるに決まっている。時間の問題だなて」

「ジェンティルと同じだ。雑用係は怯えていたよ。逃げるのは予想出来たし、それを後ろから殺すて最悪だろ。増してトレイルや竜人の人が見ていたのだぞ。必ずや騎士団やギルドに知られる」

「そうよ、そうよ、理由なしに仲間殺しは絶対に追求はれるわね」

 ジェンティルととムジカはサリオスの取った行動を強く避難した。

 逃げ出す雑用係の2人を魔法で殺したのだから、批判されて当然だった。

 人通りの多い場所で、目撃者は何人もいて、竜人にも多数目撃されていた。

 いくら勇者と言っても、人殺しは不味いし、増して同じパーティー仲間でもある。

 過去に雑用係を追放、酷い時は殺してもいたが。

「心配するな。雑用係がカザルスを殺したと言えば問題はない。騎士団だろうがギルドだろうが、納得するさ。なにせ俺は勇者なんだよ、トレイルや通行人が言うよりも勇者の方を信じる」

「出た、いつもの自信過剰」

「それでトレイルも追求したんだろ」

「殺した雑用係の2人は使えねえだろ。じゃあ始末していいじゃんか。文句ないだろ。それよりさ竜人の剣だよ」

 雑用係を追放して始末したのは大した問題じゃないサリオスは剣のことで頭がいっぱい。

「それで神殿にまた来たの。扉が開かないのでしょ、無理じゃない?」

「扉が開かないなら、力ずくで破壊してやればいい。俺たち3人の力を合わせたなら壊せるだろう、協力してよな」

「自分でやれっての。なぜ突き合わせるんだよ。俺はやるわけねえっての。そもそも神殿は神聖なものだ。破壊なんて反対だよ」

 ムジカはきっぱりとお断りする。

「あはは、そう言うと思った。どうせ協力しないだろうとな。いいよ、俺一人で壊すからさ」

「でもよ、気になったのはトレイルの言っていたことだ。神様が神殿には居ると言った」

「竜神様ね」

「扉を破壊して入っても、現在は神様なんだろ。100年に一度だけ剣に変わると言った。それだとしたら無駄な作業になるぜ」

「トレイルは嘘を言ったと思う。俺に竜人の剣を取らせないためさ。簡単な理由だよ。トレイルの言うことを信じる必要はないし、開けてみたらわかるさ」

「神様を恐れないのかよ」

「恐れないね俺は!」

 サリオスはジェンティルとムジカが反対なのは予想していて、結局は自分一人でやると決めた。

 神様を信じていないし、怖くもないサリオスからしたら、開けてみたい気持ちが上回る。

 神殿の付近には誰も居ないのを確認した。

 破壊するのを誰かに目撃されるのは面倒だからで、その目撃者を消さなくてはならないからだ。

 カザルスが言うには簡単には開かないと言ったのを思い出す。

 剣ではなか魔法で壊すのを選択する。

 かなり堅固な金属製の扉と思われるからで、魔法の方が有効と判断。

「邪魔な扉だ。俺の為に壊れろ扉よ、メテオストーン」

 メテオストーンは石を作り出し相手に絶大なダメージを与えられらる土属性魔法。

 魔力量の豊富なサリオスクラスでないと実現不可能な上級魔法だった。

 扉の前で石を作り出すと扉に向けた。


 ドーーーーン!

 石と扉が激突した音。

 爆発音に近い音だった。

 周囲に響き渡る大きな音で、神殿から町にも響いた。

「開かないか」

 肝心の扉は開いていなかった。

 通常の城に作られた扉でさえ一撃で破壊する魔法にも関わらず、扉は耐えていた。

 再び土魔法を唱えると、扉に当ててみたところ、凄まじい音が起きる。

 メテオストーンに壊せないものは無かったので、サリオスは連発した。

 町には大爆音が何回も鳴った。

 あまりの大きさに耳を抑える人がそこら中に現れるほどに大きかった。

 その頃町にいたトレイルにも聞こえた。

 耳のいい猫人のローズと兎人のシシリエンヌは耳を抑えた。

 聴覚が人よりも良いだけに、耳が壊れそうになった為だ。

 耳を抑えて苦しそうにしたので、トレイルやパピアナは何が起きたのかわからなかった。

 この音がサリオスの悪行とは思いもしなかった。
 メテオストーンを続けていくと、次第に扉は変形したのかわかった。

「やっと壊れてきたな。思ったよりは硬い扉だったが、俺の魔法が上だったらしいな。メテオストーン」

 絶対に諦めないサリオスはメテオストーンを打った。

 扉は遂に耐えきれなくなり、歪んでしまった。

 ここまで耐えたのを褒めるべきか、サリオスの魔法にも耐えられるよう、特性の金属で作られていた。

 扉は歪んだままサリオスに手で開けられてしまう。

 この状態の扉を開けるのは簡単だった。

「やったぞ、扉か開いた」

 扉を開けて喜びの声が漏れてしまうあたりは、さすがの勇者も普通の人だった。

「開けたか」

「知らないわよ、私は。見てただけだからね」

 ムジカとジェンティルは、開いた扉に溜息をついて言った。

 サリオスは扉を開けると神殿内部に入っていく。

 怖さよりも好奇心が上だったから。

 神殿内部は暗かった。

 明かりはない。

 完全に日光は遮られていたからで、サリオスはダンジョンでよく使用するダンジョン内部を照らす魔法を使った。

 明るくなったところで、内部の通路を進んでいく。

 壁は石で作られていた。

 迷路な作りではなく単純な通路に感じられ、そのまま歩いていくと祭壇があった。

「あれはあの箱の中に竜人の剣がありそうだな」

 サリオスは箱があるのを発見すると近づいて、中に剣があると確信する。

 箱の大きさはサリオスが入れるくらの大きさはあった。

 周囲はなぜか食べ物の食い散らかしたあとがあり、不思議に思った。

「……」

 一瞬だか変に思ったもののサリオスを止めるものではなかった。

 もうサリオスを止める者はいなくて、箱のフタを開けようとして手を置いた。

 箱は木製だった。

 伝説の剣が格納されているにふさわしい美しい装飾に感動した。

 勇者と国から認められても全ての魔王を討伐するのは極めて困難だったから、伝説の剣を手にしたかったし、夢だった。

 何ども試練を耐えてきたサリオスでさえも、手が震えている。

 箱のフタを開けた。
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