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『ヒール150』

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『ヒール150』



「トレイルに謝れっバカ」

「エルフも、相変わらずたてついて来るな。そういうことなんで元雑用係の2人は俺が始末した。カザルスを殺した犯人としてギルドや騎士団に報告していい」

「そう上手く行くかよ。彼らはサリオスが殺したと言っていた。慌てて逃げてきたと証言した。お前が犯人だよ」

「あはははは、俺がやった証拠はないだろ。それじゃ誰も信じないよトレイル。ギルドと騎士団は俺とトレイルをどちらを信じるかな~。当然だよね、俺を信じるでしょ。なんてったって、勇者なんだしさ。それに森の王はSランクパーティーよ。あれれれっ、トレイルの竜の守りはランク何だっけ?」

 わざとらしく聞いてきやがる。
 勇者のくせに人を敬う気持ちなど持たない性格には、へきえきするな。

「Cランクだよ。悪かったなSじやなくて」

「あはははは、トレイル凄いじゃん。あの初級の回復術士が短期間でCランクになったのがらさ。私は嬉しいよ~~~」

 ジェンティルが高笑いしながら言った。

 ジェンティルから見たら俺はCランクなのだろう。

 しかしCランクはあくまでパーティーランクであって、俺個人のランクは遥かに高いのは知らないと思う。

 まぁムジカだけは戦ったから知っているはずだけど。

「魔道士は黙ってろよ。うるさいからさ」

「うるさいのはエルフもね~~」

 パピアナとジェンティルとがにらみ合うと、周囲に殺気が漂う。

 女と女がにらみ合うと怖い。

「SランクとCランクのどちらを世界は信用するかな。簡単な話だよトレイルくん。だからさ、俺は安全なわけよ~。むしろ信用落とすのはトレイルの方だよ。勇者の俺に有りもしない嘘をでっち上げて犯人にさせようとしたとなる。そしたらどうなるかな、トレイルは、勇者をおとしめようとした極悪人てなるよね。わかるかい?」

 サリオスは笑いをこらえつつ言った。

 いかにも上流の人間が下流の人間を見る言い方だった。

 それに耐えるのも終わりにしたい。

 いつかはサリオスに追いつき、追い越してやろうと考えている。

 必ず逆転してやる。

 立場を逆転させて俺がサリオスを笑ってやるんだ。

 追放された時とから俺が変わったんだ。

 サリオスを追い越すなんて発想はなかった、最初は。

 あるはずなかった。

 でも今は違くて、ローズ、パピアナ、ミヤマ、シシリエンヌに出会った。

 俺は変わった。

 サリオスに追い越せる日が来ると思えるように変わった。

「果たしてどうかな。サリオスの思っている通りに世界は動くかな。俺は今日までにギルドや騎士団とも交流をしてきた。クエストをこなしていく中で信頼も得てきたのはサリオスはわかっていない。思っている以上に俺は信頼されたきているんだ。そして良い仲間にも出会った。いつか逆転してやるよ。森の王の上に竜の守りがマウントしてやるよ」

「あははははははは、最高、最高、最高、笑えるよ~~~。森の王に竜の守りがマウントだってよ~~~」

「面白すぎるぞトレイル!」

 ムジカも腹を抱えて笑う。

「トレイル負けるな、応援してるわ」

「そうだよ、森の王を超えるまで一緒に頑張ろ~」

「頑張るぴょん」

「ありがとうみんな」

「トレイルはCランクにおさまる人じゃない。サリオスよりも上に行けます」

 温かい声で俺を励ましてくれ、嬉しかった。

「ところで、トレイル~、早く森の王に戻ってこいよ~、雑用係は2人採用したのに、死んだら雑用係居ないもん。だから森の王で採用してやるよ」

「誰が採用されるかよ。ごめんだよ。森の王に戻ることは二度とないって」

「せっかく採用してやるて言ってあげてるの。ありがたく受けなさいよね」

「受けない」

 きっぱりと断る。

「雑用係がいないと困るんだよな。また新しく探すの無理だし、トレイルが一番良く働いてくれたんだよ」

「俺を安給料で労働させて、酷い職場だったよ。採用受けない代わりに、良いことを教えてやる。神殿にある竜人の剣が欲しいのだろう。あれはサリオスは手にできないよ」

 それまでニコニコしていたサリオスの顔に変化。

 竜人の剣という言葉に反応して、真剣な顔に変わる。

 サリオスが竜人の剣が欲しいてのは、今の反応で確信したかな。

 どうしても欲しいのだろうと。

「待て、どうしてトレイルが竜人の剣について知っている」

「情報を得たからだよ。神殿には入れないみたいだな。扉は開かないのは鍵とかじゃない。護衛や竜人の限られた人にだけ知っている魔法でしか開かない。そして中に入っても剣はない」

「嘘だね。竜人の剣はある。必ずある。今まで冒険してきて、文献やら歴史書を探し出して調べたからな。この町の神殿に行き着いた」

「残念だな。竜人の剣について何もわかっちゃいない。竜人の剣は剣じゃない。竜神様という神様なんだ。神様が100年に一度だけ力を貸してくれ剣になるのさ。その時にだけ扉は開く。今はその時じゃないんだ。サリオスは手にできない」

 俺は誰から聞いたかは言わずに、竜人の剣について話した。

 話すとサリオスの顔色は変化した。

 色々と調べてここにたどり着いたのに手にできないショックははかりしれない。

 サリオスには受け入れられない現実だろうな。

 必ず手にしてきた男からしたら、諦めるのは最悪な手。

「なんだと竜神様だと」

「サリオス、調査済みでしょ竜神様とか?」

「歴史書にはあったな。竜人族に伝わる神様がいると。竜人の間では神様がいて、とても尊敬されていると書かれているのもあったかな。しかし神様なんてそれ程重要視していなかった。神殿に入ればいいと考えた」

「トレイルが言ったのが本当なら、剣がないなら来た意味ないじゃん」

「そうだよ、サリオスが来たがるから来た。わざわざ来た。それが無駄足だったなら時間を無駄にしたとなるぞ」

 ジェンティルに続いてムジカまで悪口を言い出した。

 これは珍しいなと思わないのは、何度も俺はこんなケンカ風景を見てきたから。

 雑用係時代の嫌な思い出だが、一度ケンカになると大変。

「そう言うなよ、俺だって知らない情報もあったんだ。ただトレイルが嘘を言っていることもあり得るな」

「トレイルは嘘を言ってない。少しはトレイルを信じる気持ちはないのかしら?」

「ドワーフの女に言われても逆に疑うよトレイルを。そうだな、もし本当にトレイルが言っているのが真実なら神殿に神様がいるのだろ。勇者の俺には剣を持つ権利があるから剣になれと言ってやろう。どう、俺の考え。天才でしょ?」

 サリオスらしい自分中心の考えを言いふらした。

 まだ言ってなかったが神様は途中で起こされると暴れたりするらしいから、どうなるのかな。

 まさか本気で神殿の中に無理矢理に入る気か?

 いくら何でもそこまでしないとは思うが。

 しかしそこはサリオスだ、自分を押し通して神殿に入ることもないわけじゃないかな。

「勝手にしな。私はやらないから」

「神様に逆らうのは良くないぜサリオス。オレも見学とする」

「ふん付き合い悪いなジェンティル、ムジカ。仲間だろ。仲間なら手伝うのが普通だろう」

 仲の悪いところを思い切りみせた森の王。

 雷鳴も森の王の現実を見て、俺の言った意味が少しはわかってくれたと思う。
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