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『ヒール145』

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『ヒール145』



「猫人の方の言うとおりです。竜神様が戦えばいいとなりましょう。しかしそうもいかないのです。竜神様はとてもお強いのですが、気分屋のです。誰かに命令されるのが一番嫌いな性格をしておりまして、自分がやりたいようにやるという考え方。それで人族達は考えて我々竜人族と話し合った。竜神様を100年に一度でいいから力を貸してと。我々がその話を竜神様にしましたところ、わかったと納得してくれました」

「力を貸すのはいいけど、残りの99年は何をしてますの?」

 ローズがさらに踏み込んだ意見をして、俺の予想ではたぶん竜神様は力を蓄えているのではないかな。

 魔王クラスと戦うのであるから、パワーを貯めていると考えていい。

「猫人よ、あなたはどう思うかな」

「そうですね、魔王と戦えば、必ず酷い傷を負うはずです。その傷を癒やすための休息をしていると思います」

「それならいいが、実際は違う。竜神様は99年間は寝ておられる」

「寝てるの!」

「寝てるとは!」

「寝てるだと。そんな暇があったら戦えよ!」

「エルフさん、落ち着いてください。これは竜神様の性格なので、我々にもどうすることもできないのですよ」

 パピアナがあまりの事実に長老に言った。

 誰でもそう思うよな。

 いくら何でも寝てるはない。

「その間に魔王が暴れたらどうするの」

「寝てる」

「嘘でしょ」

「本当だ。竜神様は寝るのが特にお好きなのだ。寝ていて不満はないそうだ」

「なんとも気楽な神様だぴょん」

「これでも我々の偉大な神様なので、誰も不満はありません。むしろ尊敬されています」

 まぁ神様だから尊敬されるのはあるだろうが、いい加減な気もするな。

「寝てるなら起こせばいい。私がハンマーで神殿を叩き壊す。そうしたら起きるだろう」

「それはダメです。ドワーフさん、それはおやめになって」

 急に長老は慌てるようにミヤマに言った。

 まるで禁止されているかのような感じ。

 確か神殿を壊すと神殿は崩れてしまい剣は取れなくなるとか聞いたな。

 神様が居るなら関係ないような。

 俺が聞いてみよう。

「なぜダメなのかな。俺が聞いたのは神殿を無理矢理壊そうとすると剣が取れなくなると聞いた。話が矛盾しているかな」

「うん、半分正解で半分間違いと言える。剣が取れなくなるのでなく、竜神様が起きてしまい、結果的に剣が取れなくなるという話だ。だから護衛が神殿を守っていたのは竜人の剣を守っていたのとあるが、竜神様を起こさないようにするとも言えたのだ。護衛が神殿を守ることで、99年間は安らかに寝ていられるだろう」

「起こして問題はあるの。また寝たらいい」

「ダメダメダメダメ。エルフさん、絶対にダメ」

 今度はもっと強く否定してきた。

 言われたパピアナの方が驚いている。

 よほど問題があるとみえるな。

「起こしたら?」

「竜神様の機嫌が最悪なことになる。無理矢理に寝ていたのを起こされると何をするかわからないくらいに暴れたりします。絶対に起こしたりしませんようお願いします。もし起こしたら」

「起こしたら?」

「責任取れません。世界の国に迷惑をかけたも責任取れませんので、その点はよく考えておいて」

 長老は注意する風に言った。

 自分達で責任を取れということらしい。

 長老だけに嘘は言わないだろうから、ここは信頼して起こさないのがいいかな。

「迷惑な神様。神様ならもっと人々の役に立てっての」

「パピアナが神様になるより増しよ」

「ドワーフに言われたくない」

「ドワーフは良く働く種族だ。自慢だが、一番働き者なのさ」

「神様も寝るぴょん」

「俺は起こしたりしない。今の話で何も心配要らない」

「神様がいるのはわかりました。そうなると今は寝ている時なのですよね。竜人の剣は誰も手に出来ないわけで、盗賊は無駄なことをしているわけだ。何も知らずに。その辺を知らせてやったらどうかな」

「神殿の護衛は騎士団がしています。竜人の新しい護衛を準備していると聞きました。依頼は竜人の回復と怪我をさせた原因の究明でした。魔族や魔物だったなら困るものの、盗賊は対応します。雷鳴は引き続き手伝いお願いね」

「まぁ仕方ないか。原因はわからないからな。雷鳴としても協力はする」

「ありがとう。雷鳴さん。力を貸してください。カザルスを倒したのが何者かを追求して」

 長老はクールキャットに頭を下げる。
 長老の家を出るとした。
 竜神様については、知らないことばかりでいい勉強になったかな。

 世界にはまだまだ知らないことがあると。

 要は神殿で今はすやすやと寝ている竜神様を起こさないのを注意していたらいいわけだ。

 困った神様だが、竜人族には大切な神様らしい。





 町の中を歩いていると雷鳴のクールキャットは今の話について語ってくる。

「竜人の剣が今は剣ではないてなるな。まぁ、どちらにしろうちのパーティーの剣士はタップアウトだが、竜人の剣は使いこなせないだろう。困るのは勇者認定された者だな」

「おい、俺にも竜人の剣は持てる資格くらいあるだろう。パーティーを代表する剣士なんだぜ」

「資格はないな。タップアウトは無理無理」

「エルフは魔法しか使えねえくせに」

「魔法くらいだと、雷鳴の魔法よりは上ですし、あなたの剣なんて怖くもない」
 
「なんだとっ、いつか勝負してやろう」

「ふん、いつでもいいわよ」

 タップアウトとパピアナで剣士と魔法の言い争いになったのは俺は無視している。

 今は神殿に来たのが何者なのかを知りたいし、考えていたから。

 町の騒ぎはおさまっていた。

 来たときには、みんな悲壮感があった。

 回復ヒールした後ということもあり、落ち着きを取り戻した風に思えて良かったな。

 平和だった竜人の町を戻せて少しだけ俺はホッとした。

 その時だった。

 タップアウトとパピアナとで口ケンカしているときに、俺の前に現れた竜人の少女だった。

「俺に何かあるのかな?」

「トレイルですか?」

「そうですけど」

 少女は俺に何かあるらしく待っていたらしいが、話は聞かないとわからないな。

「私は見たの」

「見た? 何を見たのかな?」

 ちょっと震えているのがわかる。

 話しながらも周りを気にしているみたいだ。

「カザルスが戦うのを見たの、人族だった」

「ええっ、本当かい。もう少し詳しく話してくれるかい」

 少女は俺に誰も見ていないと思われたカザルスの戦いを見ていたらしい。
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