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『ヒール136』

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『ヒール136』



勇者パーティー編


「もう許さないサリオス!」
「我らの護衛長カザルスにしたことを百倍にして返す!」

 護衛はサリオスに切りかかった。
 護衛もまた魔法剣を使う。
 勇者相手に使うとは夢にも思わなかったが、今はそんな余裕はないし、守りたい剣がある。
 カザルスが体を張ってまで守った剣がある。

「4人で俺を止められるかな。無理でしょ」

 4人の魔法剣を前にしてサリオスはひるむことはなかった。
 逆に向かって行った。
 カザルス程の魔法剣ではないと判断したから。
 並の冒険者ならひとたまりもない攻撃もサリオスには効かなかった。 
 全ての魔法剣を封じられる。
 4本の魔法剣と勇者の剣。
 ブレードソードが4本の魔法剣を弾いた。
 弾いた時には護衛は切られていた。
 切られてる瞬間が見えなかった。

「これが勇者の剣なのか、見えない」
「俺に剣で勝てると思ったの? 早く神殿に入れてくれたら死なずに済んだものを、バカな竜人だな」

 サリオスは4本の護衛が死んだのを確認し神殿に進んだ。
 剣をおさめる。
 神殿の前に来た。
 入り口はあったが、大きな扉がサリオスを阻んでいる。
 開けようにも開かなかった。

「その扉は開かない。我ら竜人族しか開けられないのだ。バカめ」

 開けようとしても開かないで苛つくサリオスに言ったのはカザルスだった。
 まだ生きていた。
 そしてサリオスに忠告した。
 開けることは出来ないと。
 忠告されたサリオスは、鍵があるのかなと思う。

「鍵があるな。早く出せ。出せば回復薬を飲ませてやる」
「死んでも開けさせないサリオスにはな。残念ながら鍵ではない、魔法だがな。特殊な魔法を教えられている。護衛しか開けられない魔法をな。それに神殿を破壊すると神殿内部が封印されてしまう。一度封印された内部は1000年立たないと消えない。それは世界にとって不幸であろう。だから神殿を破壊されないように守っているのだ。ざまあみろ勇者サリオスは一生竜人の剣は手にしないのさ」
「開けろっ!!!!」

 サリオスはカザルスを引っ張ると叫んだ。
 倒せば鍵で入れると思っていたから、そこは甘かった。
 護衛はカザルスしかいない。
 残りの4人は死んでいた。
 こうなるとカザルスに無理にでも開けさせるしか方法がない。
 絶対に欲しいのに、あと少しで手に入るのに、手が届かないのは嫌だ。
 必ず手にしたい気持ちがサリオスを突き動かした。
 カザルスを無理矢理にでも扉を開ける魔法を言わせる。

「サリオスお前は勇者の資格はない。去れ」
「開けろっ!!!!」
「絶対に開けない」

 それでも開けないカザルスについに怒りが爆発。
 カザルスを叩きつけると、あまりやりたくはないが、別の方法を考えつく。
 勇者としてはやりたくない行為でらあった。
 しかしもう時間はない。
 カザルスはもう直ぐに死ぬ運命。
 生きてる残り時間はわずかだろうと思った。
 時間がないサリオスは最後の手段に出る。
 勇者の顔から苦笑いが。

「カザルスよ、開けないなら俺も考えがある」
「何をする気だ」
「竜人の町を天秤にかける」
「何を言っているのか意味がわからない」

 カザルスは魔法を使い扉を開ける気はないが、サリオスの言った意味に混乱した。
 天秤とは何か?
 竜人の人たちを天秤にかけるとは何かを。
 背筋が凍る感覚があった。

「竜人族を壊滅させる。竜人に大量の犠牲者になってもらう。開ければやらないけどね」
「正気か! 勇者に認定された者のすることか! やめろ、絶対にやめろ」
「開けない気だな。じゃあやるよ。俺は本気だからね。聖剣の光」

 カザルスはサリオスの正気をなくした考えに慌てるものの、サリオスは本気だった。
 神殿から見える町に向かい聖剣の光を使う。
 聖剣の光で剣を振った。
 剣からまばゆい光が放たれる。
 町の中にいる竜人に。
 何も知らない竜人。
 いつものように平和に暮らしていた竜人に光が注がれた。
 光を受けた竜人は苦しみながら倒れていった。
 いったい何が起きたのかわからないまま、苦しむ。
 受けた竜人は冒険者もいれば、母親も、子供もいるし、老人もいた。
 相手を選ばずに死なない程度に犠牲者にした。
 あまりの酷い人間にカザルスは許せなかった。

「自分がしたことがどう言うことかわかってやったのかい?」
「ああ、わかっているよ。だから言っただろ、天秤にかけると。早く開けたら町の竜人は犠牲者にならずに済んだんだよ。カザルスがこうしたも同然だよ」
「どこまで汚いんだ、人間じゃない、魔族だ!」
「おいおい、俺を魔族呼ばわりしないでよ。これでも魔王を倒す気はあるんだからさ。世界を平和にしたいんだよ」
「平和になるか。サリオスが生きている限り、世界は平和にならない。もしろ最悪な時代になる。歴史的な不幸な時代になる」
「さぁ、開けろよ、もう一回やっちゃうよ」
「開けられない」

 たとえ犠牲者が出るとしても、神殿には入れさせられない。
 サリオスだけは絶対に入れてはいけないと決意した。
 今の行為を見たら魔族に思えた。
 魔族に剣を渡すなんて出来ない。
 我慢して我慢して開けなかった。

「あら、開けないの。じゃあもう一回、聖剣の光」

 再び聖剣の光を使った。
 町中に光が伝わった。
 建物は何もない。
 しかし竜人は苦しんでいた。

「あああああああ、なんてことをする。魔王の方が増しだ、やめろ」
「だから早く開けろよ。そしたら終わりにするんだからさ」
「開けないさ」

 カザルスは最後まで開けない選択をした。
 そして死んだのだったが、サリオスは納得しなかった。
 竜人の人を犠牲にしたら、カザルスは開けてくれると思ったから。
 さすがに同じ竜人の人が犠牲になるのを黙って見ているとは考えなかった。
 開けずに死んでしまったのは誤算と言えた。
 護衛は全員死んでしまった。
 サリオスは竜人の人を大量に犠牲にしてしまい、結局は神殿には入れなかった。

「まいったな、竜人を大量犠牲にしたのに、入れないなんて」
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