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『ヒール135』

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『ヒール135』


 勇者パーティー編


 護衛カザルスはサリオスの戦闘の意思を知った時に仲間の護衛にも伝える。

「サリオスは今後敵と見なします。戦いの準備を!」
「カザルスさん、いくら勇者でも僕たち5人を相手には勝ち目はありません」
「そうです。サリオスにわからせてやります」
「面白い。勇者の戦い方を教えてやろう」

 カザルスと護衛4人はサリオスと対面した。
 神殿の入り口は戦いの場となりつつあったのを遠目からジェンティルは見ていた。
 ジェンティルはサリオスに任せたから交渉には行かなかったものの、交渉が上手くいくとは思っておらず、帰ってくると思っていた。

「サリオスは交渉成功したらそれはそれでいいとして、剣が手に入るのだし。けども交渉が失敗したら帰ってくるわね。私はサリオスが失敗し帰って来ると思う」
「そうかな。サリオスが大人しく引き下がるかな。交渉を絶対に引かない性格だろ。だから、グチグチ言って中に入れてもらうんじゃねえか」

 ムジカは逆に交渉を成功すると言った。
 サリオスの引かない性格を知っていたから。
 負けず嫌いなサリオスの性格を。

「それ、あるかも。サリオスは面倒くさい。負けず嫌いだから」
「それ、お前が言うか。お前こそ面倒くさい性格してるよ」

「ムジカもね」
「それよりサリオスの様子がおかしくないか。護衛達と会話していたが戦い始めたぜ!」

 ジェンティルと会話していた時にサリオスと護衛カザルスが戦いに突入したのを見た。
 戦いに参加するには距離がある。
 参戦するなら距離を縮める。

「あいつなぜ交渉しに行って戦い始めるんだ。バカか。私は行かないよ。サリオスが悪いんだから、サリオスに全てやらせる」

 サリオスの全責任としてジェンティルは知らんぷりした。

「護衛と戦って大丈夫なのか。もし護衛に何かあったなら、騎士団や国王も敵にまわすぜ」

 ムジカが心配した時にはサリオスは護衛カザルスと剣がぶつかり合っていた。

「勇者の剣をどうぞ竜人族さん、ブレードソード」
「来るがいい、偽物勇者!」

 カザルスは竜人族の住む町の中でも最強の剣士と呼ばれる。
 世界には、人族、猫人族、エルフ族、ドワーフ族、兎人族など多くの人種は存在しており、特徴的な性質を持つ。
 猫人のローズは爪が特に強く、爪での攻撃が可能であり、猫らしく素早さもある。
 エルフ族はパピアナと同じで魔法適正が高く、魔力も豊富な面があるし、攻撃魔法にも防御魔法も使える。
 ドワーフ族はミヤマがダンジョンに居たように、ダンジョンで採掘をして素材を集める者が多い。
 さらに素材から錬金術で武器防具やアイテムまでも造れる技術を持つ。
 兎人族はシシリエンヌの特徴である跳躍力。
 人族の跳躍力と比べたら数倍にもなり、大きな谷も超えられる程。
 人族は武器での戦闘と魔法による戦闘もこなせる器用さがあり、バランスが取れていると言える。
 竜人族は人族と比べ腕力が高い傾向を持つ。
 さらに剣と魔法を合わせた攻撃も可能な特徴がある。
 カザルスも魔法剣を使える。
 サリオスのブレードソードを瞬時に防御した。
 防御したもののあまりの強さに後方に吹き飛ぶ。
 神殿の柱に激突。
 サリオスが有利になった。

「カザルス!」
「立てる。まだ戦える」

 カザルスは柱に激突して仲間に心配されるも、直ぐに立ち上がり余裕をみせる。
 カザルスにとって勇者と戦うのは初めてだった。
 勇者なら本来は神殿に案内するはずが残念ながらサリオスと戦うことになった。
 勇者認定されるくらいなので強いのは当然。
 剣の強さは感じたことのない強さ。
 それに剣の速さも並のレベルではなかった。
 勇者と戦うには自分の持つ全てを出し切るしかないなと今の一撃でわかってしまった。
 簡単には勝てそうにないと判断しカザルスも攻撃に移る。

「勇者と言うのは本当のようだな。今の剣は強かった」
「当たり前だろ、俺は勇者なんだ。最初から言ってるだろう。早く中に入れろよ」
「入れるわけには行きません。竜人族の剣を受けなさい。偽勇者さん、ファイアソード」

 カザルスの剣は銀色の鉄だったが、魔法剣のファイアソードを使うと、剣は赤みを帯びていく。
 真っ赤な炎が剣を包み込んだ。

「魔法剣か。来るなら来なよ!」

 ファイアソードがサリオスに向かう。
 炎で包まれた剣を剣で受ける。
 サリオスは魔法剣を経験済みだった。
 通常の剣との戦いよりも難しいのはわかっていたが、十分に防げる範囲にあると判断した。
 それに魔王クラスの魔物とも戦ってきたサリオスからは竜人族だろうが、怖くはなかった。
 剣で防御した。
 
「くっ!」

 サリオスは防御したにも関わらず、剣が弾かれる。
 傷を負った。
 ドラゴンや魔王級の相手なら傷は当たり前だが、人に傷つけられるのは久しぶりだった。
 苦い顔をしたら、カザルスは攻撃を続ける。
 チャンスと見たからで、勇者を倒せると思った。

「今だっ、竜人族を甘くみるなっ!」

 ファイアソードがサリオスに降りかかる。
 猛烈な連打にサリオスは防戦となる。
 勇者をここまで攻勢をかけられる者は多くない。
 カザルスは竜人族でも指折りの剣使いだった。
 神殿を守る役割を得たのは、カザルスには光栄な仕事となり、誇りを持っている。
 絶対にサリオスには渡さないと決める。
 自分の命にかけて守り抜く闘志が剣に伝わった。
 それをサリオスは感じ取る。
 竜人族の剣士かここまでして守りたい剣。
 どうしても欲しい。
 どうしても欲しくてたまらなくなる。
 欲しくなったら手に入れるのがサリオスで、

「竜人の剣、ますます欲しくなったぞ!」
「絶対に渡さない!」
「悪いなカザルス、俺の欲求本能がお前を上回った」

 ここまで攻勢に来ていたファイアソードを受け止めて、ブレードソードが押し返した。
 サリオスの欲しい欲求が爆発した形となる。
 カザルスは吹き飛んだ。
 
「ああああ!」
「カザルス!」

 同じ竜人族の護衛が吹き飛んだカザルスを助けに行った。
 体は傷だらけであり、大量の血を流す姿に、ショックを隠しきれない。
 もう戦える状態ではなかったのは明らかだった。
 護衛達は怒りが湧き上がる。
 自分たちの護衛長であるカザルスを瀕死にさせた勇者に対して。
 4人の護衛が剣を構えた。
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