上 下
121 / 232

『ヒール109』

しおりを挟む
『ヒール109』




「そろそろご飯にしようよ。私はお腹空いた」
「食べたいぴょん」
「行くなら肉かな」
「俺も食べたくなった。みんな出かける準備して」
「もう準備してます」

 その日はみんなで外食をしに行った。
 いつも行く肉料理店へ直行。

「う~ん、肉の匂いに誘われてしまう」
「美味いぴょん」
「シシリエンヌったら、手が早いこと」
「早く食べないと無くなるぴょん」
「大丈夫だよ。注文するから無くなりはしないさ」
「そう言ってるトレイルのが取られたわよ」
「ええっ!」

 肉料理はお皿に出されると直ぐ消えて行ってしまうので、奪い合いとなった。
 俺の皿のが無くなった。
 食事が楽しく進んでいた。
 ギルドからは信頼度も増したのもあって、みんな気分が良いようだ。
 俺も食事が美味く感じる。
 俺達が着席しているテーブル以外にもお客はいた。

「いつも混んでいるわねこの店は」
「うん、美味しいから繁盛しているのだろうな」
「あ~~ら、パピアナ。そこに居るのはパピアナさんじゃなくて」

 急にパピアナに話しかけた声を聞いた。
 誰かな?
 パピアナの知り合いかな。

「パピアナ、知ってる人なの?」
「誰?」

 パピアナもまだわからないらしい、その人物は近くのテーブルに着席していた。
 複数の人が座っていることが、俺のテーブルからもわかる。
 この段階ではパピアナも知らない。

「やだな、忘れたのかよ俺たちを。少し会わないだけで」
「こっちは忘れてませんからね」
「もしや、もしやお前らか!」

 声と顔がわかり、思い出したように言ったことから、やはり顔見知りらしい。
 相手は3人いた。

「あ~~ら、やっと思い出したわね私のことを」
「知らん」
「ええっ!!!」
「おいおい、知らんはない!」

 知らんとパピアナに返されて慌てる。
 この感じだと向こうの3人はパピアナを知っている風だが。

「どっちなの知ってるの、知らないの?」
「良く知ってる奴らだ。全員ともエルフ族であり、故郷が同じ奴ら。特に真ん中の女はソロフレーズと言って、最も私とケンカした仲だ。今は3人でパーティーを組んでいるみたいだが」
「あ~~ら、私は覚えてくれていて、嬉しい」
「俺とアンダーロットを忘れられては困るぞ」
「この男はアモーレグーン。やたらと熱い男だ。そのせいか火魔法を使う。隣の女はアンダーロット」
「ふふふ、覚えてくれていてありがとう」
「こっちは会いたくない、バカっ」

 知り合いなのか、仲が悪いのかわからない会話だな。
 3人ともエルフ族であり、故郷が同じらしい。

「本当だ。パピアナと同じで耳が長いぴょん」

 確かにパピアナと同じ耳長である。
 細長い耳はエルフの特徴そのもの。

「あ~~ら、兎人に言われたくはない。エルフ族は長耳族と呼ばれており、それを誇りに思っていますから。兎と猫とは違います」
「なんだか猫人をバカにされた気分!」
「バカにされたぴょん!」
「あ~~らバカと聞こえたかしら。言ったつもり無いけど」
「その言い方がバカにしてます!」

 ローズはソロフレーズに猫人だか、下に見られたと思ったよう。
 俺はそんな偏見はないが、見る人によっては猫人と兎人は獣人なので下に見る傾向もあると聞く。
 それで怒ったみたい。

「とにかく、パピアナになんの用なの。食べてる最中なの。邪魔なんだな」
「ほお、あなたはドワーフのミヤマだな」
「なぜ名前を?」
「あ~~ら知ってます。竜の守りについては全部調べさせてもらったもの。リーダーはトレイル。他にパピアナ。猫人ローズ、ドワーフ族ミヤマ、兎人シシリエンヌ」

 なんと竜の守りメンバーを調べていたのは確かだった。
 
「調べてどうする?」
「竜の守りパーティーが最近になって名をあげているのは私の耳に入った。ギルドでも評判のパーティーと。領主の件や、さらに殺し屋シャークウォーニンをも倒したのは驚いた。他にもあり、何よりも驚いたのは信じられない短期間でランクをCにした点だ。あり得ない早さです」
「実力だよ。このハンマーで叩きまくったからな」
「ハンマーは降ろして!」
「ローズ、この女は一度叩かないとダメだろう」
「ここは料理店ですので」

 ミヤマがハンマーを担いだから慌てるローズ。

「要するにだ、そこに居るエルフに話があるわけだ。パピアナとは昔から良く戦ったものだった。勝負は100勝100敗のほぼ互角。しかし俺らは成長した。パーティーを結成した。名前は魔法の子猫だ。どうだ聞いたことあるだろう」
「おおっ魔法の子猫か!」
「やはり有名だったか」
「知らん」
「知らんのか!!!」

 どうやらソロフレーズらのパーティー名は魔法の子猫らしい。

「ミヤマ知ってる?」
「知るわけないだろう」
「やっぱりな」
「シシリエンヌは?」
「知らんぴょん」
「トレイルは?」
「俺も知らない。あまり他所のパーティーとか詳しくないしな」
「そうだろうと思った」
「じゃあ聞くなっ」
「ローズは?」
「名前は知ってました。魔法の子猫というの名前は。エルフ族だけで結成されていて、確かCランクだったような」
「あ~~ら、よくぞ知っていたな猫人。褒めてやろう。我がパーティーは言うとおりCランクだ。それも限りなくBランクに近いCだ」
「でもCなんだろ」
「うるさい。直ぐにBになる予定だ。とにかくパピアナには勝負してもらうぞ。竜の守りパーティー全員とだ」

 ゾロフレーズが急に戦いの宣言を申し込んで来た。
 なぜ、戦うの?
 いきなり自己紹介してから、戦うとかあり?
 申し込まれたパピアナは苦い顔を作る。

「ゾロフレーズよ、まだ私に戦いを申し込んでくるとは面白い、受けてやろう」
「ええっ、ちょっと勝手に決めていいの!」
「そうだよ、受ける必要ないぴょん!」
「俺もそう思うが」

 相手のゾロフレーズの挑発に乗ったパピアナに、みんなは止めに入るし、俺も同じ意見。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜

あーもんど
恋愛
『私は恋に生きるから、探さないでそっとしておいてほしい』 という置き手紙を残して、駆け落ちした姉のクラリス。 それにより、主人公のレイチェルは姉の婚約者────“悪辣公爵”と呼ばれるヘレスと結婚することに。 そうして、始まった新婚生活はやはり前途多難で……。 まず、夫が会いに来ない。 次に、使用人が仕事をしてくれない。 なので、レイチェル自ら家事などをしないといけず……とても大変。 でも────自由気ままに一人で過ごせる生活は、案外悪くなく……? そんな時、夫が現れて使用人達の職務放棄を知る。 すると、まさかの大激怒!? あっという間に使用人達を懲らしめ、それからはレイチェルとの時間も持つように。 ────もっと残忍で冷酷な方かと思ったけど、結構優しいわね。 と夫を見直すようになった頃、姉が帰ってきて……? 善意の押し付けとでも言うべきか、「あんな男とは、離婚しなさい!」と迫ってきた。 ────いやいや!こっちは幸せに暮らしているので、放っておいてください! ◆本編完結◆ ◆小説家になろう様でも、公開中◆

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。

みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ! そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。 「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」 そう言って俺は彼女達と別れた。 しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。

『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio
ファンタジー
 特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。  神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。 そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。 日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。    神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?  他サイトでも投稿しております。

このステータスプレート壊れてないですか?~壊れ数値の万能スキルで自由気ままな異世界生活~

夢幻の翼
ファンタジー
 典型的な社畜・ブラックバイトに翻弄される人生を送っていたラノベ好きの男が銀行強盗から女性行員を庇って撃たれた。  男は夢にまで見た異世界転生を果たしたが、ラノベのテンプレである神様からのお告げも貰えない状態に戸惑う。  それでも気を取り直して強く生きようと決めた矢先の事、国の方針により『ステータスプレート』を作成した際に数値異常となり改ざん容疑で捕縛され奴隷へ落とされる事になる。運の悪い男だったがチート能力により移送中に脱走し隣国へと逃れた。  一時は途方にくれた少年だったが神父に言われた『冒険者はステータスに関係なく出来る唯一の職業である』を胸に冒険者を目指す事にした。  持ち前の運の悪さもチート能力で回避し、自分の思う生き方を実現させる社畜転生者と自らも助けられ、少年に思いを寄せる美少女との恋愛、襲い来る盗賊の殲滅、新たな商売の開拓と現実では出来なかった夢を異世界で実現させる自由気ままな異世界生活が始まります。

なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?

名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」 「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」 「それは貴様が無能だからだ!」 「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」 「黙れ、とっととここから消えるがいい!」  それは突然の出来事だった。  SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。  そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。 「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」 「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」 「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」  ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。  その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。 「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」

続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん
ファンタジー
⭐︎書籍化決定⭐︎  『拾ってたものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜』  第2巻:2024年5月20日(月)に各書店に発送されます。  書籍化される[106話]まで引き下げレンタル版と差し替えさせて頂きます。  第1巻:2023年12月〜    改稿を入れて読みやすくなっております。  是非♪ ================== 1人ぼっちだった相沢庵は小さな子狼に気に入られ、共に異世界に送られた。 絶対神リュオンが求めたのは2人で自由に生きる事。 前作でダークエルフの脅威に触れた世界は各地で起こっている不可解な事に憂慮し始めた。 そんな中、異世界にて様々な出会いをし家族を得たイオリはリュオンの願い通り自由に生きていく。 まだ、読んでらっしゃらない方は先に『拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜』をご覧下さい。 前作に続き、のんびりと投稿してまいります。 気長なお付き合いを願います。 よろしくお願いします。 ※念の為R15にしています。 ※誤字脱字が存在する可能性か高いです。  苦笑いで許して下さい。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

処理中です...