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『ヒール79』

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『ヒール79』



 パピアナが掲示板から取ってきた。
 良いクエストを見つけた感じもあるが、拝見しないとわからないな。

「トレイル、見てよこのクエスト」
「良いのあったのかい?」
「ローズと相談したらさ、有名料理店での清掃。清掃後は肉をサービスするとある。いいでしょ!」
「いいわけない」
「私も気に入ったんだけどな。良い肉食べられるなら多少キツイ清掃でも頑張る」
「ローズもいい加減にしなさい」

 ローズとパピアナの頭を軽く叩いた。
 なんて理由で選んだのか。

「すみませんトレイル」
「ローズとパピアナには任せられないな」
「だめか、良いと思ったのに」

 パピアナは全く反省していないみたいなので、俺もあきれた。

「トレイル、最初からパピアナに選ばせたのが失敗だ。今日のところはギルドから撤退しよう」
「私のせいか!」
「お待ちください」

 ミヤマが撤退を口にしたら俺、シシリエンヌも納得して頷くと、声をかけてきた女性。

「なんですかぴょん?」
「もしかしたらあなたはトレイルですか。会話の内容から聞こえたものでして」
「トレイルは俺ですけど」

 俺の名前を口にしたので少し警戒してしまう俺。
 女性はかなりの美人な人。

「やっぱりトレイルでしたか。私はブーケドールと言いまして、冒険者をしています。あなたの竜の守りパーティーの評判を聞いていて、ギルドでも注目株です」
「ありがとう」

 竜の守りまで知っているとは、名前は売れているのは本当だな。

「それでトレイルに何か?」
「はい、話はクエストなの。きっとあなたも掲示板に居たのだしクエストを探していたから、いいクエストを紹介します」
「良いクエスト? どんなだい聞いてやろう。クエストを探しているのは本当だから。しかしクエストも選ぶわよ、我々はCランクに昇格した」

 ミヤマがブーケドールと名のった女性に言った。
 クエストを昇格するらしい。
 まあ聞くだけならいいか。

「最近になって近くの森で野草狩りが流行っているのは聞いてますか?」
「野草り。知らないな。トレイルは?」
「知らないな」

 ミヤマが俺に振り向いて言ったが、知らない話だった。
 俺以外にもローズ、パピアナ、シシリエンヌも同じ反応だったから、誰も知らないとなった。

「知らないようなので野草からお話します。野草はカワセミの実と呼ばれる野草。とても貴重な野草でして近くの山で取れますが、その野草であるカワセミの実はお金になるので、盗みに来る者が多くいまして、困っているの。私はその野草を守るのを主にしている冒険者なの。ギルドからも報酬を得てます」
「ブーケドールは野草を守る仕事しているのか。色々と仕事があるみたいね。でもなぜ私達に相談したのかしら」
「私だけでは手に追えないからです。盗難する者が多すぎて困ったの」

 金になるなら魔物と戦うよりも危険は少ない野草を盗みたいと思う者がいても不思議はないか。

「そんなに金になるのかい」
「なりますね。その為、野草が茂る地域は特別に立ち入り禁止区域とされてます。乱獲しないように管理しているの」
「パピアナ、金になるからって俺達も盗むのはダメだぞ。取り締まるのが目的だからな」
「わかっているわよ、バカっ」
「パピアナは本当にわかっていますかね」
「どうするのトレイル?」
「どうせ、私達はクエストを探していたのだし、ちょうどいいわよ」
「私は金じゃないわよ!」
「やりたいぴょん」

 シシリエンヌにパピアナミヤマ、ローズも賛成する考えのようだ。
 俺は反対する考えはなくて、むしろ貴重な野草を守れるなら、やりがいがあるクエストだなと思う。

「俺もやりたいな。貴重な野草を守るクエストを。面白いかもな」
「ありがとうトレイル!」

 ブーケドールは俺の答えに喜んで笑顔となった。
 野草には色々とあるのは知識としてある。
 毒を治癒する野草もあったり、胃腸の調子を整える効果のもある。
 それと俺にも関係しているが回復効果のある野草もある。
 野草は世界中にあり、野草を取るのが仕事の冒険者もいるのは知っていた。
 熱湯から抽出してお茶にすると好まれる野草もあり、これは種類も豊富だ。
 食材に使う香辛料になる野草は料理店から頼まれるそうだ。
 肉に使うことが多いらしい。
 ミヤマは野草ではなく鉱石を取るのが仕事だった。
 世界には魔物を倒すだけでない、他の仕事をあり、ブーケドールは野草を守りたいのだろう。
 ブーケドールに少しでも協力できるなら俺は協力したいと思った。
 みんなもやる気だしている風だ。
 
「クエストなので受付嬢に申し入れるのよね。受付嬢のところに行って相談しましょう」

 クエストは基本はギルドを必ず通すのが鉄則だ。
 報酬は支払われないとなると大損だから。
 ローズの方から受付嬢に話を通してくれると、

「竜の守りがしたいと申し込みされるならギルドは大歓迎よ。この野草は守って欲しい野草。Dランク相当の報酬ですが、とてもやりがいのあるクエストだと思いますよ」
「お願いします」

 受付けを済ませてクエストを申し込みした。
 報酬は低めなのだそうだが、ギルドから押しもあった。
 人気のあるクエストはおおよそランクの高い魔物を倒すクエストと相場は決まっている。
 Bランク、Aランク級の魔物となると破格の報酬になるから、冒険者にとっては夢になる。
 殆どの人は夢で終わるのだが。
 ダンジョンなどの難易度が上がるにつれて報酬も高めとなるから、このクエストはやや低めに設定されていた。

「そうと決まったのはいいけど、出発日はいつにするトレイル?」
「俺はいつでもいいけど、山に行くからには準備もいるかな」
「出発する日は明日にしましょう。私も出発予定なので」
「明日なら問題ないです」
「ここ、ギルドで待ち合わせとします」

 ギルドが待ち合わせ場所と決まり、俺達は宿屋に帰った。
 
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