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『ヒール21』

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『ヒール21』


 サリオスに誘われるままにギルドにいき、テーブルについた。
 周りの客はまだ森の王だとは知らないようだ。
 知ったらこんなに落ち着いた雰囲気だはないもんな。

「トレイルの言う通り、嫌な奴らだ」
「聞こえるから」
「聞こえてもいい」

 パピアナはあえて聞こえる声で悪口を。
 またジェンティルとやり合いそうな予感。

「俺は今は竜の守りというパーティーを結成した。冒険者としてやり直すつもりだ。この子たちはローズ、パピアナだ。俺の大事な仲間。サリオスが気にしている件だけど、俺はギルドには話していない。この町は初めて来たから、ギルドも俺が森の王にいたのも、死んだのも知らない」
「そうか。それならいい。たまたまこの町によった時に、冒険者からトレイルと言う冒険者が活躍していると聞いた。別人だろうと思ったが、念のため確認しに行ったら、別人じゃなかったてわけだ。お前がそのまま話していないなら問題ない。そのまま黙っていろ。話すならこの場で殺す」

 サリオスの目は嘘を言ってる目ではなかった。
 本気の目。
 あの時と同じ目。
 ダンジョン最下層でみせた目。
 俺を追放し、殺そうとした。

「わかった。言わない」
「それが正解だトレイル。最弱のヒール使いが冒険者パーティーか」
「それは昔の話だ。今は俺も冒険者だ。邪魔はしないで欲しい」

 関わらないなら俺もあえてギルドに言う必要ないからな。
 サリオスは本当に殺しそうだし。
 この男なら本当にやるかもな。
 
「竜の守り。どこが竜なのお前の?」
「黙れデブ」

 パピアナがデブと呼んだのはムジカ。
 まあ体格はいいがデブは言い過ぎだと思ったら。

「おい、エルフ。ぶった切ってやろうか……」

 やばいムジカの手が震えている。
 やはりムジカの触れてはいけない地雷を踏んだな。

「あら、もしかして気にしてたのなら、ごめんなさいね!」

 その言い方は火に油を注ぐだろう。

「…………お前なぁ……」
「エルフ族に猫人族。最弱回復術士にはお似合いか。それよりもトレイル達はウチに合流しない?」

 大魔道士ジェンティルは一人だけ女だ。
 女だけど危ないのもこの女なんだよな。
 そしてなにを言ってくるかと思いきや、合流とは?

「合流とは……。無理でしょう」
「トレイルはウチの雑用係として最高だったの。よく働くし、何でもやるし、注文通りしてくれるし、召使い扱いできるからさ。だから、もう一度合流して、また召使いの雑用係をしてもらいたいの。なぜかと言うと新しい雑用係が使えなくて追放。また雇ったらそいつも使えなくて追放。トレイルならいつでも雇うってこと、どう?」

 この女は本気で言ってるのか。
 だとしたら狂ってるだろう。
 俺を邪魔だから殺そうとしておいて、もう一度雑用係で採用するとか。
 意味が理解できない。

「あはははは、ジェンティル、その言い方は厳しいな」

 サリオスがまたも笑う。
 俺は屈辱的な言葉を連発されて、黙るしかない。
 こんな屈辱的な言葉攻めされるとは、最悪である。

「ちょっとあなた、謝りなトレイルに!」

 ローズが怒りだした。
 俺の事を侮辱したのがローズの中で爆発したのか。
 ここがギルドだってことを忘れている。

「猫人、私が誰だか知ってて言ってるのかな、大魔道士ジェンティルと知ってて?」

 ヤバイ、ジェンティルがキレかかっている。
 この女がキレたら冒険者ギルドごと破壊する。
 そして誰も抑えきれないと思う。

「ジェンティルがどうかしたの。私は猫人族のローズよ!」
「面白い猫。可愛がってやるわね」
「止めてくれジェンティル。ここはギルドだろ。暴れたらジェンティルだって困るはず……」
「トレイル、こんなダメ猫は早くパーティーを追放した方がいいわよ。パーティーがダメになるから、あはははは」
「ダメ猫!!」
「おい、ちょっと待てジェンティル。俺をバカにするのは構わないが、ローズをバカにするのは止めろ」

 ジェンティルに言っている俺は大丈夫か。
 自分でも不安になるも、我慢ができなくて、つい言ってしまう。

「止めろ……トレイルまで口のききかたを忘れた?」
「忘れてない。許さないって言ったんだよ。ローズとパピアナは仲間だ。俺の大事な仲間。それをバカにしたら俺は戦うと言っている」

 言ってて自分でも何を言っているのかわからない。
 ジェンティルに向かって言ったらとうなるか。
 それでも俺は口から言葉が止まらないようだ。
 それだけでなくテーブルまで叩いて言ってしまう。
 
「トレイル、面白い。私と戦うならやろう。魔法で私に勝てると……」

 ジェンティルも戦闘モードに入った。
 完全に入ってる。
 テーブルから立ち上がり俺とジェンティルは向かい合う。
 剣を取る。
 もう後には引けない。

「トレイル、私はサリオスとやる」
「ローズ……」
「なんだ、猫人が俺の相手か」

 ローズまで立ち上がり爪を構えると、サリオスとにらみ合いに。

「それじゃ、私の相手はデブってことか。よろしくなデブ!」
「ふふふ、エルフをこの手で殺せる。楽しいな……」

 ムジカの怒りだした声はパピアナに送られる。
 
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