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王宮へ――

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「ありがとうございます……。なんとお礼を言っていいか……」
「そんな……」

祈りを捧げ終わり、ようやく街の混乱も落ち着いた。
シライエンが、泣きながらお礼を言ってくれているけど……。

「私にも、落ち度はあります。本来この国は平和ですから、あんなに過剰に祈りを捧げる必要もなかったんです。そのせいで、反動が来てしまって、こんな事態を招いたのですから……」
「そんなことはありません。ただ今、民を救ってくださった。その事実だけで、十分であります」

……人知れず祈りを捧げていた時は、誰かに感謝されることなんて、一度もなかった。

ちゃんと、わかってくれている人は、いたんだ……。

「あとは私にお任せください。聖女様は――。ソリッド様に、会いに行かれるのですよね?」
「はい……」
「見張りの兵には、もう連絡してあります。誰もあなたを、国外追放された人間としては扱いません……」

シライエンが、拳を握りしめ、私を見つめながら言った。

「――あの馬鹿者に、ガツンと言ってやってください。もはや、王太子でもなんでもありませんよ」
「……わかった」

シライエンに手を振って、私はアルベールと一緒に、王宮へ向かった。

その道中。

「リンダ。もしソリッドが……。君に好意が無いと言ったら、どうするつもりなんだい?」
「……考えてないや」
「それじゃあダメだと思うよ。もはやソリッドは、騎士団長にすら王太子と認められていない。国王は衰弱して、発言力もないんだろう? まして、国を守り続けていた聖女様を追放した王族に、民の批判が集まるのは、確実だと思う」

アルベールの言う通りだ。

ソリッド様が改心してくれれば、私との婚約こそ破棄されてはいるが、もう一度、民の信頼を取り戻すために、尽力することはできるかもしれない。

けど、全く私に好意が残っておらず……。リーファンと共に、日々を過ごしたいなどと言うのなら。

……国外追放も、視野にいれなければ。

「だけど、それは私の決めることじゃないからね……」
「いいや。シライエンの顔を見ただろう? きっと今、ソリッドを国外追放することなったら……。主導者は、彼ではなく、君だよ」
「それはちょっと、荷が重いというか」
「だったら、彼の気持ちを聞かずに、どこか国の隅っこにでも住んで、祈りを捧げる日々を過ごすかい? きっと彼だって、何も言ってこないさ。ただリーファンと、イチャイチャしたいだけなのだから」

それはダメだ。
私は絶対に、ソリッド様の気持ちを知りたい。

「……覚悟はできているかい?」
「……」

私が言い淀んでいると――。
アルベールが、優しく手を握ってくれた。

「僕は何があっても、君を守る。前みたいに、祈りで消耗させることだってしないさ。僕が隣で支えて、美しいままの聖女でいさせてあげる」
「アルベール……」
「だから……。勇気を出そう。僕は……。君と一緒に、綺麗な国で過ごしたい」
「……うん」

私が頷くと、アルベールが微笑んでくれた。

……行こう。
ソリッド様。どうか――。まともな思考を、取り戻してください。
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