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合流
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「……ん?」
翌日。
アルベールと一緒に、朝食を取っていたところ。
「どうかしたの?」
急に、アルベールが、席を立った。
「客人だ……。三人。二人は護衛だろう。一人は……」
そう呟きながら、アルベールがドアに向かった。
私はその後ろを付いて行った。
「何用だい?」
「私は、リマニエールの騎士団長、シライエンでございます」
「シライエン……?」
アルベールの代わりに、私が答えた。
「……そこにおられますか。聖女様」
アルベールが、ドアを開いた。
「あぁ……。よくぞご無事で」
「どうしてここが?」
「教会で、聖女様が普段、祈りのときに身に着けていたネックレス……。これの匂いを、犬に嗅がせたのです」
「匂いを辿ったのですか?」
「はい。よく頑張ってくれました」
シライエンが、犬を撫でると、犬は嬉しそうに、バウバウと吠えた。
「ここまで随分時間がかかっただろう? そこの二人も含めて、相当体が汚れている」
「それでも昨日の夕方に国を出て、今ちょうど着きましたから、早い方です」
「そんな……。休まずに、ここまで?」
「そうでもしないといけない理由が、あるのです」
シライエンの目は、悲しみに満ちている。
「……もしかして、国が?」
「はい。大変なことになってしまいました。聖女様の祈りが途絶えたことで、民が一斉に苦しみはじめ、田畑は全て荒れ果てました」
まさか……。
たった一日で、そこまで?
私は一日中、過剰であると言えるほどに、働いていた。
必要な分を大きく越えて、祈りを捧げていたのだ。
……そのせいで、私が消えた途端、一気にマイナスの現象が起きてしまった。
こうなることはわかっていたけど、まさかこんなスピードで、状況が変わってしまうなんて。
「ちょうどよかったよ。リンダは、国に戻りたがっていたんだ」
「本当ですか?」
「あぁ。僕の魔法を使えば、一瞬で国まで戻れる」
「それはありがたい……」
シライエンが、アルベールの手を握った。
「……シライエン。だっけ。君、僕が怖くないのかい?」
「え?」
今のアルベールは、突然の来客だったので、フードを被っていない。
第三の目が、丸見えになっている。
「怖い? ですか? すいません、普通の好青年に見えますが……」
「……なんてこった。これが見えないの?」
「あぁ……。なるほど。切迫しておりましたので、なかなか細かい状況に気が付けず、申し訳ありませんでした」
シライエンが、頭を下げた。
「細かい状況、か……」
アルベールが、嬉しそうに微笑んだ。
「じゃあ、国も大変だし、すぐに行こう。……リンダ。心の準備はできてるね?」
「……うん」
これから、国に戻って、まずは祈りを捧げる。
それで……。王宮に行って、ソリッド様の気持ちを確かめる。
もし、彼の気持ちが、全く私に対して、残っていないのだとしたら……。
……考えたくないけど。
翌日。
アルベールと一緒に、朝食を取っていたところ。
「どうかしたの?」
急に、アルベールが、席を立った。
「客人だ……。三人。二人は護衛だろう。一人は……」
そう呟きながら、アルベールがドアに向かった。
私はその後ろを付いて行った。
「何用だい?」
「私は、リマニエールの騎士団長、シライエンでございます」
「シライエン……?」
アルベールの代わりに、私が答えた。
「……そこにおられますか。聖女様」
アルベールが、ドアを開いた。
「あぁ……。よくぞご無事で」
「どうしてここが?」
「教会で、聖女様が普段、祈りのときに身に着けていたネックレス……。これの匂いを、犬に嗅がせたのです」
「匂いを辿ったのですか?」
「はい。よく頑張ってくれました」
シライエンが、犬を撫でると、犬は嬉しそうに、バウバウと吠えた。
「ここまで随分時間がかかっただろう? そこの二人も含めて、相当体が汚れている」
「それでも昨日の夕方に国を出て、今ちょうど着きましたから、早い方です」
「そんな……。休まずに、ここまで?」
「そうでもしないといけない理由が、あるのです」
シライエンの目は、悲しみに満ちている。
「……もしかして、国が?」
「はい。大変なことになってしまいました。聖女様の祈りが途絶えたことで、民が一斉に苦しみはじめ、田畑は全て荒れ果てました」
まさか……。
たった一日で、そこまで?
私は一日中、過剰であると言えるほどに、働いていた。
必要な分を大きく越えて、祈りを捧げていたのだ。
……そのせいで、私が消えた途端、一気にマイナスの現象が起きてしまった。
こうなることはわかっていたけど、まさかこんなスピードで、状況が変わってしまうなんて。
「ちょうどよかったよ。リンダは、国に戻りたがっていたんだ」
「本当ですか?」
「あぁ。僕の魔法を使えば、一瞬で国まで戻れる」
「それはありがたい……」
シライエンが、アルベールの手を握った。
「……シライエン。だっけ。君、僕が怖くないのかい?」
「え?」
今のアルベールは、突然の来客だったので、フードを被っていない。
第三の目が、丸見えになっている。
「怖い? ですか? すいません、普通の好青年に見えますが……」
「……なんてこった。これが見えないの?」
「あぁ……。なるほど。切迫しておりましたので、なかなか細かい状況に気が付けず、申し訳ありませんでした」
シライエンが、頭を下げた。
「細かい状況、か……」
アルベールが、嬉しそうに微笑んだ。
「じゃあ、国も大変だし、すぐに行こう。……リンダ。心の準備はできてるね?」
「……うん」
これから、国に戻って、まずは祈りを捧げる。
それで……。王宮に行って、ソリッド様の気持ちを確かめる。
もし、彼の気持ちが、全く私に対して、残っていないのだとしたら……。
……考えたくないけど。
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