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戦いが終わったら……。

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「そうですか……。そんな酷いことが」

クレスに事情を話したら、泣きそうな表情になってしまった。

「僕も……。彼らには、酷いことをされました。殴る、蹴るならまだ良かったのですが……。角を引き抜こうと、何度も試されて、痛みで眠ることもできなかったんです」
「かわいそうに……」
「でも、今は聖女様のおかげで、全く痛みを感じません。ありがとうございます」
「クレス……」

思わずクレスを抱きしめてしまった。ちょっとしてから、抱きしめ返してくれて、心が温かくなる。

「……一緒に、奴らを国から追い出そう。クレスと一緒で、あの国の民は、兵士や王族に酷い目に遭わされてるの」
「そうなんですか……。それは許せません」
「あなたにかかっていた呪いは解いたから、思う存分暴れまわることができるわ。……楽しみね?」
「……はい」

クレスの綺麗な瞳に、憎悪が宿った。

彼は氷の魔法を使うことができる。それもかなり強力だ。呪いにさえかかっていなかったら、あんな連中、一瞬で凍らせることもできただろう。

「行きましょう。一人でも多くの民を、救うために」

力強く頷いたクレスとともに、訓練所を後にした。



我が国、ヒルエスタは、かなりの領土を誇っていることで有名だが……。その半分は、奴隷の違法労働の場になっている。

他所の国から、身寄りのない子供たちや、抵抗力の無い老人、女性を捕まえ、働かせる。非道だが、その実態は隠されており、明るみに出ることは無い。

本来それを追求するはずの議会も、王族と仲の良い貴族だけで構成されているので、ほとんどあってないようなものだ。

「まずは、この地区の奴隷を解放しようと思うの」

兵士の武器を作っている工場。ここをストップさせれば、奴らは籠城もできなくなる。容易に戦意を削げるはずだ。

「そうですね。ですが……。僕の予想だと、奴らは奴隷を人質にして、こちらが動けないようにする作戦を取る気がします……」
「なるほど……。どうすればいいかな」

私はまだ、力を制御しきれていない。兵士もろとも人質をフッ飛ばしてしまったら、本末転倒だ。

「僕の魔法なら、抵抗する前に兵士を凍らせることができます。ただ、これには距離が必用なんです。相手と近づきすぎていると、空気が乱れて、氷をうまく作れない」
「……じゃあ、私たち、ってベストコンビじゃない?」

遠くの敵は、クレスが倒し、近寄って来たら私が吹きとばす……。

「そうですね」

クレスがにっこりと笑ってくれた。

また私は、胸の高鳴りを感じてしまう。

「あの……」
「どうしました?」
「邪魔者を全て追い出した後には……。私と、この国で暮らさない?」
「……え?」
「あ、ご、ごめんなさい。私ったらなにを」

聖女は処女であるべきだ。そんな決めつけをされて、これまでろくな恋愛をしてこなかった。そうでなくても、この国に魅力的な男性など、一人もいなかったが。

落ち着きなさいローナ。相手は子供……。何を真面目に口説いているの?

「はい。僕でよかったら、聖女様にお供しますよ」
「……本当?」
「もちろんです。聖女様は、命の恩人ですから」
「クレス……」

またクレスに抱き着いてしまった……。ダメな大人だ。私は。こんな小さな温もりに、心を完全に奪われて……。

「ですから、一緒に頑張りましょう。――奴らを、追い出すんです!」
「そうね!」

私たちは、武器工場に向かった。
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